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国内デジタルマーケティングのトレンドは「潜在層育成型」へ 効果測定の最新手法を大公開

2017/04/17 14:00

 テクノロジーが進化し、社会のあり方も大きく揺らぐなかで、デジタルマーケティングのトレンドはどこへ向かっているのだろうか。今すぐ着手すべき取り組みはいったいどのようなものなのだろうか。ロックオンの足立愛樹氏が、3月3日に開催されたMarkeZine Day 2017 Springの壇上において「急速なマーケット変化の中で “今”実践すべきテクノロジーを用いたデジタルマーケティングとは?」というテーマのもとに講演した。

最も選ばれている計測ツール屋だからこそわかる最新のマーケティング課題とは

 「今、実践すべきデジタルマーケティングとは何か?」と問われたときにすぐに答えられる人が、どれだけいるだろうか。ユーザーの変化、テクノロジーの進化が目覚ましい昨今、「実践すべきことはたくさんあるが何をすればいいかわからない」という声を聞く。

株式会社ロックオン マーケティングプラットフォーム戦略企画課長 足立愛樹氏
株式会社ロックオン マーケティングプラットフォーム戦略企画課長 足立愛樹氏

 広告計測ツール「アドエビス」を販売するロックオンの足立氏は「日々、国内のマーケッターと仕事をしながら、一緒に答えを模索し続けているので、このテーマについては自信を持ってお話しできます」と語り、講演を開始した。

 「アドエビス」は2004年にリリースして以来導入実績が8,000件を超えており、顧客との長期的な関係を重視しながら次々にバージョンアップを行ってきている。どんなニーズがあるのかクライアントの声に耳を傾けながら機能を増やしてきているので、国内においてどのようなマーケティング課題があるのかを客観的に理解できる立ち位置にあるという。

講演資料より抜粋(以下、同)
講演資料より抜粋(以下、同)

「未知の競合」はテクノロジーを携えてやってくる

「テクノロジーを駆使してディスラプションを起こす企業が、この数年でたくさん生まれてきています」(足立氏)

 「ディスラプション」とはあまり聞きなれない言葉だが、英和辞書によれば「混乱させる、分裂させる」とある。テクノロジーを使って、既存の産業よりも生産性の高いビジネスモデルを構築すること――その産業自体を再開発するのがディスラプションだ。

 ディスラプションの代表はUberやAirbnbだ。いずれもテクノロジーを使うことで未知のユーザー体験を生み出し、タクシーやホテルといった従来型の産業を圧倒しつつある。ディスラプションを起こしていわゆるユニコーン企業になるベンチャーは2014年から急激に増えている。自社とはまったく関係がないと思っていたテクノロジーベンダーが競合として現れるということが、この数年の間に世界中で起きているのだ。

 足立氏は、既存の産業を変革する技術として注目している分野を4つ、例としてあげた。自動運転、amazon echoのような音声検索、VOD、そして5Gだ。

 まず、自動運転の場合、テクノロジーによって安全が保たれ、運転のための時間を他の目的のために有効に使うことができる。そのため、自動運転が普及すると社会全体の生産性が上がる。次に、音声検索も見逃せない。たとえばamazon echoはタッチパネルではなく音声によるアシストシステムだ。声だけで物を買ったり、タクシーを呼んだりすることができる。タッチパネルに代わるユーザーインターフェースとなる。

 VODの例としては世界最大級の動画配信サービスであるネットフリックスがある。PCでもスマートフォンでも、もちろんテレビでもたくさんの動画を楽しめるようになった。5Gは現行の4Gに代わる規格だ。画像や情報をものすごい速さで取り込むことができるもので、IoTのための規格だと言われている。

 このように、新しいテクノロジーを組み合わせることによって、既存の産業に挑戦するプレーヤーが増えることで、今後もより良いユーザー体験が生まれていくはずだと、足立氏は続ける。グローバル、かつ広義の意味でユーザーに関わるデジタルマーケティング環境は急激に変化していると言える。

行動履歴とデモグラフィック情報をユーザー単位で紐付けて分析「オーディエンスエビス」

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人口減少社会ではLTV(顧客生涯価値)の向上が急務

 一方、国内のマーケットに目を移すと、日本が抱える大きな課題ははっきりしている。人口減少と少子高齢化だ。

 2005年に1億2,700万人あった日本の人口は、2050年に9,500万人まで減るという予測がある。とりわけ若年層は1759万人から821万人にまで減少する見込みだ。多くの企業にとって市場規模が小さくなることは間違いない。

 ここで、とある企業において2005年の一人当たりの生涯価値、LTVが100万円だったと仮定する。2050年に人口が9,500万人にまで減ることで顧客も同様に減少し、この減少分を補うために一人当たりのLTVを上げるとする。

 この場合、LTVを134万円にまで向上させないと業績を維持できない計算になる。これほどまでに顧客単位で「LTVをいかに高めるか」という課題は深刻なものなのだ。

 もう一つの大きな課題は、日本人の働き方や生活の楽しみ方が変化しており、結果としてニーズが多様化していることだ。

 さらにもう一つ目立つのが、メディアの多様化だ。ひと昔まえまでは、みんなが同じテレビを見ていた。そのため、テレビを使って広告を打てば多くの人に届いた。しかし今は広告だけでなく、ソーシャルメディアや自社サイトを使って、潜在層に向けてアプローチして、消費者を育てなければならない。

 「企業と消費者をつなぐ道路みたいなものがメディアだとすると、今は道路が何本も何本もある状態。マスメディアという高速道路だけでなく、企業が作ったオウンドメディアや消費者が作るSNSのような小さな道がたくさんあり、何かを届けようとしても昔のやり方は通用しません。そんな状況を踏まえて、デジタルマーケティングをより戦略的に行う必要があります」(足立氏)

デジタルマーケティングの主戦場は顕在層から潜在層にシフト

 テクノロジーの変化、市場の縮小とメディアの多様化という背景を押さえたうえで、日本のデジタルマーケティングに起きている変化を見ていく。

 SEMやリターゲティングを実施して、既に商品に関心がある顕在層の顧客を刈り取る施策は近年非常に発展してきた。だがこの顕在層向け施策には多くのクライアントが殺到していて、レッドオーシャンとなりつつある。

 こうした顕在層向けの広告はすべてCPCが高騰してきている。また、そもそも顕在層は企業が必要とするよりも絶対数が少ないこともはっきりしてきている。単価が上がり、しかも十分な数のリーチも得られないために、同じ予算で同じ売上を上げることが極めて難しくなってきているのだ。

 そのため、顕在層ではなく潜在層にアプローチしなくてはならない流れが起きている。動画広告やコンテンツマーケティングを通じて、潜在層の課題を一つずつ解決してブランドの認知を獲得し段々に顕在層になってもらう、潜在層育成型マーケティングがトレンドになりつつある。

 ただ、これらの課題に対し、3つの問題をお客様から相談されることが多いと足立氏は続けた。

 第一は、潜在層向けの施策を比較し効果を測定するための指標がわからないことだ。顕在層向けであればCPAのようなわかりやすい指標があるが、潜在層向けにはそのような指標があまり知られていない。

 第二は、カスタマージャーニーマップを作って実行しても、どのジャーニーがよかったのかが結局わからないことだ。

 第三は、想定しているよりも少し広い層にアプローチする場合にヒントが少ないこと。A・B・CのメディアのCVRを調べて最もスコアがよいものを選ぶのは簡単だが、広い層にアプローチするには「この辺りに顧客がいるのではないか」や、「顧客はこういうインサイトがあるのではないか」と想像して施策を打つ必要があり、CVRとは別のヒントが必要になる。

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顕在層向け施策を改善する最新3手法

 足立氏は、これらを解消するためにアドエビスがどのように取り組んできたか、三つの事例を挙げて説明したいと語った。第一は、デジタル上でのターゲットリーチにおいて新指標を用いてPDCAを回せている事例について。第二は、カスタマージャーニーにCVRの概念を持ち込むことで大きく売上を向上させた事例。第三は、外部メディアデータを自社データとシンクさせることで、新たな顧客インサイトを発見した事例を紹介していく。

新規率・アクション喚起率・ターゲット含有率の把握でメディアを評価

 アドエビスはTONEモバイルとの取り組みの中で、ターゲットにリーチできている媒体の可視化とアクション喚起できている媒体の可視化を行うために、属性データを紐付けた媒体ごとのターゲットリーチ率や、媒体ごとの新規率、アクション喚起率を分析した。

 結果として、新規のユーザーにリーチすることができ、アクション喚起もできていて、外部のプレミアム属性データによってターゲット含有率が高いと判断ができる三拍子そろった媒体を選ぶことができた。

カスタマージャーニーにCVRによる評価を導入

 次は、アドエビスがGDO(ゴルフ・ダイジェスト・オンライン)とCVするカスタマージャーニーを知るために、どのカスタマージャーニー経路のCVRが高いかを算出した事例についてだ。この分析によって、CV数は多いがCVRが低い経路や、CV数は少ないがCVRが高い経路が見つかった。CVRが高い経路を太らせることで、施策全体の効率性を高めることができた。

顧客発見のための外部メディアデータ連係

 最後に、実験中の取り組みを紹介する。アドエビスは外部メディアデータとユーザー単位でシンクできる仕組みを開発している。アドエビスに入っているクライアントが保有するユーザーのデータを、外部メディアやリサーチパネルデータとつなぎこむことで、ユーザーのプロファイルがより詳細に理解できるというものだ。

デジタルで出会えたユーザーを「資産」として活用するために

 ここまで一歩進んだ事例を紹介してきたが、マーケットの変化に適応するためにすべての企業がまず着手すべきことは、できるところからでいいのでオーディエンスデータを蓄積することだと、足立氏は語る。

 「簡易登録や購入完了をしており、CRMの対象となる顧客データは宝の山です。どんな人が購入してくれたのか、どんな人が長期にわたって利用しているのか、どんな人がどれだけ購入してくれているかがわかる唯一のデータと言えるでしょう」(足立氏)

 しかし、それだけではデータとして足りない。簡易登録や購入よりも手前の領域からユーザーのリストを生成し、機械学習などによって分析し何らかの「答え」を導き出す必要がある。

 「デジタル空間で多くの人と出会い、そのインサイトや人となりがわかれば、それは絶対に武器になります。デジタル空間で出会えたユーザーは資産だと考えるべきだと思います。情報が乏しいユーザーに対してデータを紐づけユーザープロファイルを作ることができれば、テクノロジーのさらなる進化にも対応できるでしょう」(足立氏)

 2、3年後にはAIの精度が上がり、価格が下がって使いやすくなるのではないか、と足立氏は予測する。そのときが、蓄積したデータを爆発させるチャンスとなるはずなので、それまでにユーザープロファイリングデータを貯めてもらいたいという。

 ユーザープロファイリングデータこそがユーザーインサイトとエクスペリエンスを探り当て、デジタルディスラプションを起こすための導火線なのだ、と足立氏は指摘し講演を締めくくった。

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