日本のコンテクストから「ポリティカル・コンシューマー」を読み解く
欧米では無視できない存在となりつつある「ポリティカル・コンシューマー」について解説する本連載。最終回となる今回は、ポリティカル・コンシューマーを日本の文脈で考察してみたい。
これまでの連載を通して、主に欧米社会に見る消費者の変化について伝えてきた。同様に日本においても消費者に大きな変化が起きているが、欧米のポリティカル・コンシューマーの特徴をそのまま日本に当てはめて議論することは難しい。なぜなら消費者を取り巻く社会状況や文化が大きく異なっているからだ。
日本の消費者の本質的な変化を見るには、表面で起こっていることではなく、水面下で起こっていることに注意を払う必要がある。イノベーター理論が示すように、イノベーターやアーリーアダプターたちの動きは目立つものではないが、大きな技術変革や社会変革につながる重要な示唆となる。
今回は「脱東京」、そして「消費者概念の再考」という2つの切り口から、今起こっている日本人の価値観変化について考えていきたい。
インターネット技術の発展が、変化を加速する
東京は世界的に見ても、ビジネス、経済、文化など様々な側面でハブとして機能する大都市だ。一般社団法人・森記念財団都市戦略研究所が発表した「世界の都市総合力ランキング2016」で、東京は1位のロンドン、2位のニューヨークに次ぐ3位だった。
東京は、ヒト、カネ、モノ、情報が集まりビジネスをする上で多くの機会をもたらしてくれる。しかし、インターネット技術の発展などにより物理的制約がなくなりつつある今、状況は大きく変わろうとしている。
たとえば、「Iターン」や「Uターン」と呼ばれる地方移住者が増えていることが挙げられる。一度は地方から出て東京で就職したものの地方に戻る人や都市部出身ながら地方企業に就職する人のことだ。
このほかに、東京を仕事の拠点としながらも長野や宮崎などに住む「デュアルライフ」や、沖縄や北海道を行き来する「多拠点ライフ」を実践する人も増えている。また、国内だけでなく海外を移住先に選ぶ人も少なくない。
毎日新聞、NHK、明治大学の共同調査では、2015年時点で地方移住者の数は過去5年で4倍になったことが明らかになっている。