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【海外】アメリカ大統領選 オバマの黒人差別とヒラリーの女性差別、勝ち抜く「差別」はどっち?

性差別と人種差別、勝ち抜くのは?

 今回の民主党候補争いは、黒人男性と白人女性の間で争われている事から大統領候補者は最終的に白人女性か黒人男性かという点が注目を浴び、性差と人種差についての記事が目立った。セクシズム(性差別)とレーシズム(人種差別)と大統領選の関わりがアメリカ中の熱い話題になっていたのだが、日本にはそのあたりがさっぱり伝わって来ない。

 ヒラリーとオバマが表舞台で、禁じ手である人種と性差について差別的発言をする事は一切なかったが、「外野席」では色々と揶揄、ほのめかし、中傷合戦があった。たとえばビル・クリントン元大統領にして、アイオワ州での予備選前のヒラリーの応援の際に「この州でかつてジェシー・ジャクソン氏が勝利した」と発言したが、これは含みのあるほのめかしとみなされて大ブーイングだった。

 アメリカでは60年代の公民権運動で黒人差別が撤廃され、70年代のウーマンリブで女性差別が緩和されたのだが、いまだに2つの差別は色濃く残っており、黒人も女性も「セカンドクラス・シチズン(二流の市民)」としての扱いを受けていると言われているが、CNNでは両者の差別に関して、アメリカ人の間ではどちらがより茶化しやすく、どちらの差別がより世間に受け入れられているのかという思いきった記事を報じていた。

セクハラよりも、人種差別はNG?

 取材者はオハイオ州コロンバスの女子青年連盟に、あからさまな性差別と人種差別ではどちらがより受け入れやすいかという質問をしている。その結果はヒラリーが受けているような性差別はジョークのようなものでずっと行なわれていて、まだ受け入れられやすいが、人種差別はNGであるという。確かに、この2つの差別に対する、アメリカ人の温度差を見ると確実に人種差別の方が熱い。セクハラに対しても非常に神経質ではあるが、人種差別の比ではないと筆者は感じる。

 ヒラリーは集会で「シャツにアイロンをかけてくれとやじられたり、口の悪いラジオ司会者のラッシュ・リンボーに「国民は女性が日々年を取って行くのを見たいのかね」と揶揄されたり、髪型、足首、胸元まですべてが議論の的になるという。60歳のヒラリーへの中傷は「年齢」と「女性」という点に「容貌」が加わる。彼女の大学時代のルックスについて「醜い」とまで中傷した議員がいて物議をかもしたこともある。

強者はたたく、弱者はたたかない文化

 また、アメリカでは茶化しにも暗黙の了解があって、強者を叩くのはOKで、弱者を叩くのはNGのようだ。例えば英語のアクセントをからかうのでも、白人であり、カリフォルニア州知事として、映画俳優として成功者であるアーノルド・シュワルツェネッガーの「カリフォルニア」の発音が悪いとか、ブッシュ大統領が「ニュークリア」と発音できないなどと茶化してもいいが、中国人留学生やアニメに出てくるインド人のアクセントを茶化すのはNGなのだ(両方とも実際、昨年問題となった)。だから白人であり、かつてのファーストレディだったヒラリーも強者と看做され、「女性」という点を茶化しても大きな問題にはならないという事なのではないだろうか。

 茶化しとまでは行かなくても、TV各局のニュースキャスターやトークショーホストは特にオバマに関してはウィットを効かせようと躍起になっていて、「ホワイトメン・キャント・ジャンプ」とか、「ウェイティング・トゥ・エクスへイル(ため息つかせて)」【注1】と、黒人がらみのもじりや語呂合わせが飛び交っていた。

 選挙戦で顕著になった白人男性のヒラリー嫌い、もちろんイラク戦争に賛成したという点や貧困層に税金を使われたくないなど、多種多様な理由もあろうが、白人男性は同じ白人同士というファクターよりも人種は異なるが男性同士というファクターに賭けたような気もしないではない。いずれにしても大接戦と予想されている「ミニ・チューズデイ」。最後に笑うのは白人女性?それとも黒人男性?

【注1】どちらも黒人が関係する映画。なお「ホワイトメン・キャント・ジャンプ」とは白人はダンクシュートができないというバスケットボール界のからかいのセリフだという。

【関連リンク】
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この記事の著者

セリー真坂(セリーマサカ)

フリーランスライター/ニューヨークウォッチャー/字幕研究家。得意分野はニューヨーク、映画、英語、食、ファッション、黒人音楽、トレンドなど。英会話本他3冊の著書あり。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2008/03/04 10:40 https://markezine.jp/article/detail/2843

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