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広告運用の情報サイト「Unyoo.jp」出張所

ポストGDPRの広告運用とは?プログラマティック広告への影響と課題

パーソナライズドからコンテクスチュアルへの揺り戻し

 先に説明した通り、個人データの定義がIPアドレスやCookie IDにまで拡大し、かつ個人データ利用のための合意形成のハードルが高くなるため、企業が広告配信に活用できる個人データは減少することが考えられます。そしてこれに関連して、「コンテクスチュアル」という単語が複数のセッションで頻繁に登場しました。

写真一番左がRichard Sharp氏

 GrapeshotでEMEA部門の部長を務めるRichard Sharp氏(以下、Richard氏/写真一番左)は「How to leverage data, innovation and technology to make your creative campaigns even more meaningful and relevant to your customers」と題されたパネルディスカッションの中で、「ポストGDPRはコンテキストとメッセージが重要」ということを強調していました。

 もちろんGrapeshotがコンテクスチュアルターゲティング(Webサイトなどのコンテンツを読み取り、その内容に関連する広告やメッセージを表示する)を専門領域としている側面はあるかと思いますが、個人データ取得のハードルが高くなるポストGDPRにおいて、リターゲティングキャンペーンやユーザーのページ閲覧履歴に基づくダイナミック広告への依存は一定のリスクを伴うことが考えられるため、Richard氏の発言は非常に的を得ていると感じました。

 Microsoft UKでCMOを務めるScott Allen氏(以下、Scott氏)によるキーノート「The CMO Perspective: What is the future of digital media advertising and what role does programmatic have to play in driving it?」においてもパーソナライズドからコンテクスチュアルへの揺り戻しに関する内容が触れられていました。

講演中のScott氏

 AIの活用によって、適切なデータセットがあればより高度なパーソナライゼーションを実現することが可能である一方、過度なパーソナライゼーションはユーザー体験を損ねる可能性もあり、マーケターは「線引き」をする必要があるといいます。

 Scott氏は、GDPRはこの「線引き」を考え直す素晴らしい機会だと捉えており、ある意味コンテクスチュアルターゲティングが程よいパーソナライゼーションになり得ると考えているとのことです。「Personalisation doesn’t have to feel excessively personal - It can be contextual(パーソナライゼーションは過度に個人に立ち入る必要はなく、コンテクスチュアルもパーソナライゼーションになり得る)」というメッセージが印象的でした。 

3rd Partyデータから2nd・1st Partyデータへ

 広告主(1st Party)やパブリッシャー(2nd Party)はユーザーと直接関係を持つため、自社ユーザーのデータを保有することが可能です。一方で、提携先のWebサイト等を通してデータを取得しているパブリックDMP(3rd Party)などは、該当のWebサイト上でユーザーが個人データの提供を拒否した場合、ある意味そこでユーザーとの関係性は断たれます。

 このため、GDPRの施行により3rd Partyが保有するデータは減少することが見込まれ、それは同時に広告主が広告配信に利用できる3rd Partyデータが減少することを意味します。こういった議論がされるなか、1st Partyデータの重要性が高まるのはもちろん、2nd Partyデータを持つパブリッシャーにも注目が集まっていました

写真右から2番目がBenoit氏

 「Breaking the duopoly of Google and Facebook: How can industry find new partners to avoid 100% reliance on them?」と題されたパネルディスカッションのなかで、GoogleとFacebook以外の選択肢はあるのかという質問がモデレーターからあり、Zenithでデジタル・イノベーション部門のグローバル責任者を務めるBenoit Cacheux氏(以下、Benoit氏/写真右から2番目)は、2nd Partyデータを持つパブリッシャーが選択肢となり得ると答えていました。

 Benoit氏は、GDPRはデータセットについて考え直す良い機会と捉えており、活用できるデータセットが変化していくなかで新たな勝ちパターンを見つけていく必要があるといいます。2nd Partyデータを持つパブリッシャーにBenoit氏が着目するのも頷けるかと思います。

 その他、GoogleとFacebook以外の選択肢としてAmazonやブランデッドコンテンツが例として上げられていましたが、良質なデータセットを保有するプラットフォームとコンテクスト重視の施策というところがポストGDPRの世界を端的に表していると感じました。

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この記事の著者

高瀬 優(タカセ ユウ)

アタラ合同会社 コンサルタント。国際基督教大学(ICU)を卒業後、総合電機メーカーで自社製品の法人営業ならびに販売推進業務に従事。その後、自身がリーダーおよびマネジメントを務める音楽バンド活動に専念し、CDの全国流通や全国ツアー等積極的に活動を行う。2016年よりアタラに参画し、国内はもちろん、グローバルに事業を展...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2018/07/06 09:00 https://markezine.jp/article/detail/28740

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