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エンゲージメント率100倍!?モンスト×D2C Rに学ぶ「TikTokで勝つ」広告クリエイティブ

 ミクシィが運営するスマホアプリ「モンスターストライク(以下、モンスト)」は、2018年末から、休眠ユーザーをメインターゲットにしたTikTok広告を開始。「ユーザーの感情を意識したクリエイティブ」で、他社広告と比較して100倍近いエンゲージメント数を叩き出した。なぜこれほどの成果を上げられたのか。ミクシィでモンストのデジタルマーケティングを担当する渡邉静氏、広告クリエイティブの提案・制作を担当したD2C Rの伊藤大悟氏、TikTokを運営するByteDanceの泉谷速人氏に話を聞いた。

「エンゲージメント率」を重要指標に設定

MarkeZine編集部(以下、MZ):今回、広告を配信するプラットフォームとしてTikTokを選んだ背景を教えてください。

渡邉:モンストのプレイ動画がTikTok上に多数アップされるなど、以前から両アプリのユーザー層は重なっていると感じていました。TikTokはDAUが急速に伸びてきており、また他プラットフォームと比較してエンゲージメント(いいね数・シェア数)が非常に高かったので、トライしてみてもいいかな、と。そう考えていたところにちょうどD2C RさんからTikTokへの出稿をご提案いただいたので、今回の実施に踏み切りました。

株式会社ミクシィ マーケティング本部 マーケティング戦略室 デジタルマーケティンググループ 企画推進チーム 渡邉静氏とオラゴン
株式会社ミクシィ マーケティング本部 マーケティング戦略室 デジタルマーケティンググループ 企画推進チーム 
渡邉静氏とオラゴン

MZ:エンゲージメントの高さに着目したということですが、メインターゲットやKPIはどのように設定しましたか?

渡邉:今回は「休眠ユーザー」をメインターゲットに設定しました。ユーザー層の親和性を鑑みて、元々モンストをプレイしていただいていた方に、TikTokを通じて再度遊んでいただけるきっかけを提供できるのではと考えたのです。

 そのため、KPIは「エンゲージメント率」も重要指標に設定しました。もちろん広告として配信する以上、CPAも追ってはいますが、TikTokで配信するのであれば、ユーザーとのコミュニケーションを重視するべきだなと。結果的に、想定以上のエンゲージメントが生まれましたね。

10倍から100倍のエンゲージメントを獲得

MZ:実際、どのくらいの数字が出たのでしょうか?

伊藤:弊社の他の案件や、TikTok内で見かける広告と比較しても、いいね数・コメント数ともに非常に多かったですね。ものによっては、10倍から100倍くらいの違いはあると思います。

株式会社D2C R メディア本部 クリエイティブデザイン部リーダー/クリエイティブプランナー 伊藤大悟氏
株式会社D2C R メディア本部 クリエイティブデザイン部リーダー/クリエイティブプランナー 伊藤大悟氏

MZ:TikTok広告の平均値と比べるとどうでしょうか?

泉谷:TikTokの広告平均値と比べても、成果としては圧倒的です。広告だとエンゲージメント数は多くないのですが、今回は1クリエイティブに対して、最大で4万以上のエンゲージメントを獲得しています。そもそもコンテンツ力があったことに加え、ユーザーの反響を見ながら広告クリエイティブをアップデートし続けたのが功を奏したのかなと思います。

ByteDance株式会社 泉谷速人氏
ByteDance株式会社 泉谷速人氏

MZ:広告クリエイティブをアップデートし続けたとは、どういうことでしょうか?

伊藤:2018年12月中旬から、週4本ペースで広告を配信しているのですが、そのうち2本を新作、もう2本をユーザーの反響を見て修正したものにしています。クリエイティブを作る際には、できるかぎりTikTokの特性を活かし、ユーザーが楽しめるものにするよう心がけました

TikTokの特性を活かした「ユーザーが楽しめる」クリエイティブ

MZ:TikTokの特性を活かした「ユーザーが楽しめるクリエイティブ」とはどのようなものなのでしょうか?

伊藤:たとえば、TikTokはタップすると動画を停止できる機能があるのですが、それを応用して「スロット形式」の広告を作りました。強敵であるヤマトタケルに対抗するパーティをスロットで決定するというものです。

「スロット形式」の広告(※タップで停止する様子を表現)

伊藤:コメント欄には完成したチームに関するものが多く挙がりました。中には、コメントを残すだけでなく、「実際にスロットで出た編成でヤマトタケルに挑んでみた」という企画を実行し、TwitterやYouTubeに投稿されている方もいました。こちらはモンストの既存ユーザーに響くクリエイティブを意識したので、狙い通りだったなと。

 また、モンストはキャラクターがフィールドの中を縦横無尽に動き回る点が特徴です。そこで、広告上でも複数のキャラクターが動き回っている状態を再現し、「すべてのキャラクターが画面内に収まったタイミングで停止させる」というルールを設定したクリエイティブも作りました。

ゲーム性を持たせた広告(※タップで停止する様子を表現)

MZ:「タップしたら止まる」というTikTokならではの機能を活かし、広告にゲーム性を持たせたのですね

伊藤:そのとおりです。しかも、これが意外と難易度が高くて……(笑)全然成功しないんですよ。成功させるために何度も挑戦してくださったり、逆にあまりに成功しないので「画面内に一匹もキャラクターが表示されていない状態を目指す」という独自のルールを作るユーザーがいたり、想定外のアクションも起きていました。

 広告に付いたユーザーのコメントを参考に次のクリエイティブを作成していたので、あらゆる意味でインタラクティブな広告配信になっていたと思います。

TikTok広告は「いかにユーザーの感情の動きを狙えるか」が重要

MZ:高いエンゲージメント数を獲得できた一番の要因は、やはりユーザーとのコミュニケーションを重視した点にあるのでしょうか。

渡邉:そうだと思います。私達は広告出稿前に、各プラットフォームのUIやユーザー行動を分析してTikTok上での戦い方を考えました。その結果、いかにユーザーの感情の動きを意識できるか、という点を重視するべきだと判断しました。

 TikTokのようにコミュニケーションが生まれやすいプラットフォームの場合、単純に私たちが見せたい広告を出してもユーザーには響きませんし、広告色が強すぎるとヘイトが生まれてしまう可能性もあります。

MZ:ユーザーとのコミュニケーションを重視し、CPAではなくエンゲージメント数を主要KPIに設定するにあたり、社内から反対するような声は上がらなかったのでしょうか。

渡邉:特にありませんでしたね。当社は「ユーザーサプライズファースト」を理念に掲げており、ユーザーの想像や期待を超える価値を提供することを大切にしています。広告でも既視感のないユニークな施策を打って、ユーザーを驚かせようという考え方がベースにあるので、今回のTikTokのような新たな試みはむしろ歓迎されました。

 ただ、もちろんCPAもまったく追っていなかったわけではありません。今回のプロモーションでは一定のCPA以下での獲得は大前提としつつ、エンゲージメント数を最大化させる事をミッションとしています。結果、エンゲージメントのついた広告はTikTokだけでなくTwitterやYouTubeでも拡散され、多くのユーザーに接触できました。広告がユーザー同士のコミュニケーションを生み出している、という結果にとても満足しています。

「音声ありき」のクリエイティブで「驚き」を作る

MZ:エンゲージメントを追った結果、コミュニケーション量の最大化につながったのですね。

伊藤:ユーザーがどのようなときに驚きや喜びを感じ、またその感情をシェアしたくなるのかを知るため、私自身、一人のユーザーとしてTikTokをかなり利用しました。そこで得た情報を基に、「楽しい」「驚いた」「かっこいい」など「喚起したい感情」別にクリエイティブを作成しました。

 ある広告クリエイティブでは、「驚き」を重視し、まるで音が360度から聞こえてくるように感じる「立体音響」を取り入れました。その結果、「音ありで見て!」というようなコメントとともに、広告をシェアしてくださる方も多かったです。

「立体音響」を取り入れた広告(※音あり推奨)

泉谷:TikTokは多くのユーザーが音ありで利用しています。スマホ向けの広告だと音なしでも成立するよう設計するのが一般的だと思いますが、音声ありきのクリエイティブを試せるのもTikTokならではと言えるのではないでしょうか。

移り変わりが早いTikTokで勝ち続けるために

MZ:最後に、今後の展望を教えてください。

渡邉:今回の広告運用では、良い成果を出すことができました。だからといって、同じ手法をずっと繰り返すのは違うと感じています。休眠ユーザーにもう一度遊びたいと思ってもらえるにはどうすればいいのか。目標達成に向けてその時その時で最適なプラットフォームを選択し、最適な戦い方を模索し続けていきたいですね。

泉谷:TikTokは国内でまだまだ伸びしろがありますし、広告プラットフォームとして大きな可能性を秘めていると思います。大画面のインフィードに加え、インタラクティブ性・聴覚へのアプローチなど従来のプラットフォームにはない要素が多数詰まっていますからね。

 そういう意味では、今回のミクシィさんとの取り組みでTikTok広告の新たな一面を引き出していただけたと感じています。今後、独自のアプローチができるという認識をさらに広げていきたいですね。

伊藤:今回の取り組みは成功しましたが、独自のアイデアを出し続けるのは難易度が高く、課題に感じました。TikTok内でのトレンドの移り変わりが非常に早く、制作したクリエイティブのエンゲージメントも短期間でピークを迎えるので、常に新しいものを作り続ける必要があります。

 アイデア出しは属人化しがちですが、フレームワークに落として仕組み化させようと思い、既にTikTok専門部隊を立ち上げています。今後はより成果の出るクリエイティブを組織的に作っていけるよう体制を整えていきます。

 また、ほとんどの広告主様はやはりCPAを重視されるところが多いので、CPAベースでも成果を出せるようさらに分析を強化していきたいですね。

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この記事の著者

水落 絵理香(ミズオチ エリカ)

フリーライター。CMSの新規営業、マーケティング系メディアのライター・編集を経て独立。関心領域はWebマーケティング、サイバーセキュリティ、AI・VR・ARなどの最新テクノロジー。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2019/03/25 10:00 https://markezine.jp/article/detail/30513