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必要なのは「世界初」という認知 「popIn Aladdin」ローンチ時のTwitter活用に迫る

 プロジェクター、スピーカー、シーリングライトが一体となったプロジェクター付きシーリングライト「popIn Aladdin(ポップイン・アラジン)」。クラウドファンディングで多くの支持者から熱狂的な支持を集め、開発に着手してから半年あまり。2018年11月1日に一般販売を開始した同商品は、発売時にその魅力と価値を効果的に伝える方法の一つとしてTwitterを選んだ。本記事ではその理由、そして実際に行った施策と得られた成果についてpopIn イノベーション事業本部 マーケティング部 シニアマネージャー 岡本岳洋さんに聞いた。

親子のコミュニケーション機会増加のために開発

MZ:まず、簡単に現在の担当業務についてご紹介いただけますか。

岡本:「popIn Aladdin」のマーケティング全般を担当しています。今でこそ少し人数が増えましたが、発売当初は7人程度の組織で、製品開発を直接担当した社長を筆頭に、広報、営業、マーケティング、カスタマーサポートなどの役割を皆でサポートし合っていました。

popIn株式会社 イノベーション事業本部 マーケティング部 シニアマネージャー 岡本岳洋氏
popIn株式会社 イノベーション事業本部 マーケティング部 シニアマネージャー 岡本岳洋氏(写真提供:popIn株式会社)

MZ:「popIn Aladdin」がどういったものか、簡単に教えてください。

岡本:「popIn Aladdin」はプロジェクター、スピーカー、シーリングライトが一体化している家電製品で、私たちはこれを3in1スマートライトと呼んでいます。ハードウェアの観点で見ると3in1であることが特徴ですが、ソフトウェアの観点でもAndroid OSを搭載したことにより、多彩なアプリを利用できるという強みをもっています。

 具体的には、Netflix、Amazonプライム・ビデオ、YouTube、Spotifyなどの「エンターテインメント系アプリ」、当社が独自に開発した「子ども向け/親向けの教育アプリ」、時計や家族の写真を投影してお部屋の雰囲気作りができる「インテリア系アプリ」です。

MZ:なぜこのような商品を開発したのでしょうか。

岡本:社長が元々「親子のコミュニケーション機会の減少」に問題意識を持っていたのが開発のきっかけです。スマートフォンやタブレットが普及し様々なことが便利になり効率化された一方で、親子が同じ空間にいても会話をせず、それぞれがその「小さな画面」に集中してしまい家族の時間が断絶しているという現代特有のシーンに、強い課題意識を持つようになりました。

 それは決して理想的な家族の時間の過ごし方ではないと思った社長は、親子が一緒に会話をしながら楽しめる空間について考え始めました。その中で、寝るためだけに使われることが多い「寝室」に着目し、更にその壁を活かすアイデアとして「popIn Aladdin」を思い付きました。先ほど紹介したアプリの中に、教育系のアプリがあるのもそのためです。

欲しいのは「世界初」という認知

MZ:「popIn Aladdin」自体は非常に画期的で話題も作りやすそうなプロダクトですね。今回Twitterを活用するに至った背景を教えてください。

岡本:一般販売を開始するにあたり、打ち出すメッセージを「世界初の3in1スマートライト」と決めていました。そして、今まで世の中になかった製品の存在を知ってもらうには多くの方の話題にしてもらう必要がありました。

「popIn Aladdin」
「popIn Aladdin」

 その目的を果たす上でTwitterは即時性が高く、今話題になっていることがわかる場所なので、単なる認知獲得にとどまらずに「何が世界初か」を切り口に会話が生まれ、話題化できるメディアだと考え、活用することを決めました。

 本来我々が伝えたい「popIn Aladdin」の本質的な価値は、製品の利用を通じて「今までに体験したことのない感覚を自分の大切な人と一緒に味わう」という“感動体験”なのですが、発売当初は敢えてハードウェアの特徴である「世界初」というキャッチーな要素でコミュニケーションを図ろうと戦略的に考えました。

MZ:では、Twitter上で行った話題作りの施策は具体的にどのようなものでしたか。

岡本:Twitter活用の目的は話題作りで、施策は「プロモトレンド」への出稿と「#Twitterトレンド大賞 2018」への協賛です。プロモトレンドへの出稿は一般販売開始時の11月1日と、クリスマスキャンペーンの11月28日の2回に分けて実施しました。

MZ:なぜプロモトレンドは2度出稿したのでしょうか。

岡本:1回目は発売日当日、様々な手法でローンチの告知を行いましたが、、他に何かプロモーションはできないかと考えながらチームメンバーでTwitterを見ていたところ、プロモトレンドの枠が空いていることに気づき、急きょ出稿を決めました。限られた時間の中、Twitter Japanと広告代理店の方にスピーディーに対応していただけたので、出稿を実現することができました。

 2回目はさらなる話題作りと、売り上げにつながるかどうかの検証のために出稿しました。売り上げに寄与させるために、ECサイトからの購入で「15%のポイントアップ」という特典も提供しました。

Twitter活用に必要な2つのこと

MZ:プロモトレンドを展開する際、どのような点が重要だと思いますか。

岡本:気を付けたこととやってみて学んだことがそれぞれあり、プロモトレンドはもちろん、Twitter活用において重要だと考えている点があります。それは「雰囲気への配慮」と「利用者に合わせすぎないこと」です。

 1回目のプロモトレンドでは、時間がない中でも効果を最大化するためハッシュタグを2つ用意しました。1つは世界初を打ち出した「#世界初の未来家電」、もう1つはTwitter利用者の雰囲気と会話の文脈に合わせた「#全部の自宅のライトをこれにしたい」です。

 ブランドのペルソナにもよると思いますが、企業のTwitter公式アカウントにはカジュアルな投稿をするアカウントと比較的真面目な文体で投稿するアカウントがある中で、私たちは「世界初の家電製品」という洗練されたイメージを打ち出すため、前者の方向性で丁寧に情報発信していこうと決めていました。

 ただそうは言っても、初回ということもあり、Twitter利用者が好みそうな目線にあわせたハッシュタグもあって良いのではと思い2つ目の「#全部の自宅のライトをこれにしたい」を準備して実施しましたが、この2つ目のハッシュタグを投稿したところ、少しだけネガティブな反応が出てしまいました。

 これを見て後者は早々に取り下げ、途中からは1つ目の「世界初」にフォーカスを当てたハッシュタグに戻しました。2つ目はTwitterの雰囲気に合わせたものの、利用者のコンテクストに合わせすぎた、と反省しました。

MZ:2回目はどのようなハッシュタグを設定したのですか。

岡本:2回目は初回と比べて時間的に余裕があったので、私たちが「popIn Aladdin」で提供したい価値について議論し「#寝室シアター」というタグにしました。これは先ほどの反省が活かせたハッシュタグになりました。

話題性の高い商品×トレンド大賞で相乗効果

MZ:続いて、もう1つの施策である#Twitterトレンド大賞 2018への協賛について、実施背景から教えてください。

岡本:#Twitterトレンド大賞 は、1年間のツイートデータを分析し、その年に話題になったツイートやキーワードをアワード形式で表彰するものです。「popIn Aladdin」は、クラウドファンディングサービス「Makuake」で90日間に7,000万円超の支援金をいただき、2018年の上期で最もご支援額が集まった大きなプロジェクトとなりました。

 さらに、同サービスが行っている「Makuake Award 2018」でも最高賞の「Makuake GOLD賞」を受賞しました。この意味で、我々の商品自体もトレンドを作れていたので、協賛すれば相乗効果が得られるのではないかと考えました。

MZ:実際にトレンド大賞の協賛時にはどういったことを行ったのでしょうか。

岡本:Twitter上のライブ配信でトレンド大賞を発表する中で生CMというものが流れるのですが、そこで家電芸人でおなじみの品川庄司の品川祐さんとガリットチュウの福島善成さんに「popIn Aladdin」の商品紹介をしていただきました。

プロモトレンド、#Twitterトレンド大賞 で得られたユニークな成果

MZ:では、両施策の成果についてお伺いします。プロモトレンドではどのような成果が得られましたか。

岡本:詳細な売り上げの数字は開示できないのですが、初回のプロモトレンドでリツイート数が1万を超え、各種エンゲージメント指標も2回とも業界平均の2~3倍を超える結果となり、話題を作るという目的ではワークしたと考えています。

 また、2018年12月末に第三者の調査会社に依頼して実施した定量調査では、14%の人がpopIn Aladdinの認知経路として「Twitterのトレンド欄」を選んでいました。このことからもプロモトレンドに一定の効果があったと捉えています。

MZ:#Twitterトレンド大賞 への協賛はいかがでしょうか。

岡本:実際にECサイトのレビューに#Twitterトレンド大賞 を見て存在を知り、購入に至ったというレビューもありました。また今回、よしもとクリエイティブエージェンシーに所属する芸人のお2人に「popIn Aladdin」をご紹介いただいたことで、結果論ではありますが同事務所所属の芸人の方々も多数出演されるトークバラエティ番組『アメトーーク!』内の「家電芸人」コーナーでも最新家電として取り上げられました(2019年3月21日放映)。

 プロモトレンド、トレンド大賞の協賛、ともに行った意味があったという裏付けを得られたと考えています。

興味持った層へのアプローチにも活かせる

MZ:今回の施策を通して、どのような目的でTwitterを活用するのが良いと思いましたか。

岡本:認知獲得に効果があるのはもちろん、一度興味をもってもらった人を対象にリターゲティング広告を出稿するのにも活用できると思いました。「popIn Aladdin」の定価は79,800円と、照明単独の価格としては決して安価なものではありません。購入を即決することは難しいと思いますし、今の照明を取り替えた後はどうするかも考えなくてはいけないでしょう。

 そこで行ったのが、レンタルサービスのキャンペーンです。「popIn Aladdin」を購入する際の懸念点に、自宅で映像がどう映るかがイメージしにくいというのがあったので、先着100人に「レンタルサービス」を提供するという内容の告知をTwitter広告で行いました。すると、ものの数十分で募集人数を集めることができました。

 当初は半日ぐらいかかると思っていたのですが、Twitter広告のターゲティングが高精度であることを証明する結果となりました。

購入者の声を広く届けたい

MZ:最後に今後の「popIn Aladdin」のマーケティングでやりたいことや目標などを教えてください。あわせて、Twitterをどのように活用していきたいかもお話しいただけますか。

岡本:我々はソーシャルリスニングも行っているのですが、Twitter上の反応は好意的なものばかりで、製品への満足度が高いことが伺えます。定量調査でも同じ傾向が見られ、9割の購入者が「popIn Aladdin」に満足していただいています。

 Twitterは、人が新しくて良いものを手にした時に誰かに言いたくなる気持ちを伝えやすい場だと考えています。今後は、自分たちのアカウント運営に注力するのに加え、既存利用者の皆様にご満足頂いている声を広く伝えていけるよう、Twitterを活用していきたいですね。

 懸念点である価格についても、価格以上の価値を実感してもらえるコミュニケーションをTwitter上で取り組んでいきたいと思います。

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この記事の著者

冨永 裕子(トミナガ ユウコ)

 IT調査会社(ITR、IDC Japan)で、エンタープライズIT分野におけるソフトウエアの調査プロジェクトを担当する。その傍らITコンサルタントとして、ユーザー企業を対象としたITマネジメント領域を中心としたコンサルティングプロジェクトを経験。現在はフリーランスのITアナリスト兼ITコンサルタントとして活動中。...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/09/05 15:13 https://markezine.jp/article/detail/30851