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サブスクリプションモデル大解剖

解約率は0.5%を保持&テレビCMも大胆に展開 SmartHRはなぜ急成長できたのか


 オイシックス・ラ・大地の西井 敏恭氏が、サブスクリプションを採用する様々な企業のキーパーソンと対談する「サブスクリプションモデル大解剖」。第4回は、人事・労務の負担を軽減するクラウドサービスを提供しているSmartHR代表取締役の宮田 昇始氏を迎え、同社のサービス設計や「解約率」に関する意外な考え方、スピーディな成長を支える組織体制について語ってもらった。

急成長の要因は「対象顧客の多さ」と「市場選択」

株式会社SmartHR 代表取締役 CEO 宮田 昇始氏
株式会社SmartHR 代表取締役 CEO 宮田 昇始氏

西井:まずは、SmartHRのサービスについて教えてください。

宮田:SmartHRは、企業が従業員を雇用する際に発生する社会保険手続きや雇用契約などの労務手続きを、ペーパーレスや電子申請でシンプルにし、人事情報管理を効率化するクラウド型のソフトウェアです。2015年にリリースし、導入企業数は25,000社以上にまで増えました。

西井:まさに急成長を遂げているサービスですね。元々労務が専門ではない中、この領域をビジネスに選んだきっかけを教えてください。

宮田:私の実体験がベースになっています。一つは、妻の産休手続きがとても大変そうだったこと。本来は企業が行うべき手続きなのですが、妻が当時勤めていたのは、社長さんが現場とバックオフィスを兼任している小さな会社でした。そのため、従業員の手続きまで手が回らず、自分で産休手続きを行っていたのです。出産の直前まで大量の紙に囲まれて手続きを行っているのを見て、この領域には根深い課題がありそうだと思いました

 また、私がサラリーマン時代に病気で療養したときに、社会保険制度の一つである傷病手当金に支えられたこともありました。この制度に助けられた一方、手続きがあまりにも煩雑なため、本来受けられる行政サービスを受けられていない人もいるのではないかと感じたのです

オイシックス・ラ・大地株式会社 執行役員 CMT 兼 株式会社シンクロ 代表取締役社長 西井 敏恭氏
オイシックス・ラ・大地株式会社 執行役員 CMT 兼 株式会社シンクロ 代表取締役社長 西井 敏恭氏

西井:ユーザーとして、社会保険制度のメリットとペインの両方を体験したのですね。SmartHRの成長を支える要因は、どこにあると考えていますか。

宮田:まず、雇用があるところには必ず労務業務が発生するため、対象顧客が多いことだと思います。従業員数2名から十数万名と幅広い企業にご利用いただけるサービスで、初期は数百名規模の企業からのニーズが高かったのですが、現在は、多くのアルバイトが働く、飲食・小売りチェーンといった大企業からのご相談も増えています。

西井:すべての事業領域をカバーするBtoBのサービスというのは、珍しいですよね。

宮田:市場選択が良かったことも大きな理由です。労務に関する仕事は、SmartHRが出るまで手書きで行われていました。手書きってソリューションとしては100点中、10点くらいだと思うのですが、そこでいきなり70点くらいのクラウドのソリューションを提供したため、大きなインパクトをもたらすことができたのです。

 一方、昔から各種ソフトが存在する会計領域ですと、今から取り組んだとしても60点だったものを70点にするという変化に留まってしまい、成長させていくのは簡単ではなさそうです。

西井:なぜこれまで、労務領域では同様のサービスが登場しなかったのでしょうか。

宮田:労務に関する課題というのは、事業が軌道に乗り、初めて正社員を雇用するときに気づくものであり、注目する起業家が少なかったためではないかと思います。

 またこの領域には、専門家である社労士さんがいて、社労士さん向けのソフトウェアもあったため、いわゆるイノベーションのジレンマによって、企業の労務担当者を直接対象としたシステムを開発するという方向に進みにくかったのではないかと思います。

 対して、この領域の門外漢だった私たちは、慣習に縛られることなく、クラウドでコストパフォーマンスの良い開発ができました。

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この記事の著者

マチコマキ(マチコマキ)

広告営業&WEBディレクター出身のビジネスライター。専門は、BtoBプロダクトの導入事例や、広告、デジタルマーケティング。オウンドメディア編集長業務、コンテンツマーケティング支援やUXライティングなど、文章にまつわる仕事に幅広く関わる。ポートフォリオはこちらをご参考ください。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2019/06/24 13:46 https://markezine.jp/article/detail/31139

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