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Criteoの調査で明らかになった、リターゲティング広告の正攻法

 リターゲティング広告のベンダーとして業界をリードし、現在ではフルファネルのソリューションを提供しているCriteo。同社はある背景から「リターゲティング広告は1社に絞るべきか? それとも複数社活用すべきか」という調査を実施した。今回は、ジェイセン・グレスピー氏に、調査の背景と結果、そしてマーケターがリターゲティング広告を使う際に気を付けるべきことを聞いた。

リタゲ広告は複数社で配信すべき?という疑問

MarkeZine編集部(以下、MZ):今回はロサンゼルス支社から来日された、Criteoのジェイセン・グレスピーさんに、リターゲティング広告の調査に関してうかがいます。まず、調査の背景から教えていただけますか。

Criteo VP,Analytics,Insights and Data Science ジェイセン・グレスピー氏
Criteo VP, Head of Analytics, Insights, and Data Science ジェイセン・グレスピー氏

ジェイセン:私は2012年にCriteoに入社したのですが、それ以降、リターゲティング広告を取り巻く環境は大きく変化してきました。元々は独自の広告在庫を持っているかで差別化が行われてきたのが、リアルタイム入札(RTB)の登場により、各アドネットワーク、SSPの接続が進みました。これにより、広告在庫での差別化が難しくなってきたのです。

 そうなったとき、ある疑問が生まれてきました。それは「リターゲティング広告は1社に絞るべきか、それとも複数社で配信すべきか」ということです。独自の広告在庫やユーザーにアプローチできることで差別化されていた時代であれば、複数のリターゲティング広告を活用すれば、リーチを拡大することができました。

 しかし、現在のように広告在庫やユーザーでの差別化が難しくなったとき、複数社のリターゲティング広告で配信を行うのが正解なのかどうかは定かではありませんでした。そのため、今回我々がそれを検証することにしました。

調査前に持っていた2つの仮説

MZ:ちなみに、調査を行う前はどのような仮説を持っていたのでしょうか。

ジェイセン:リターゲティング広告を1社だけ採用している場合は全配信をそこに集中できます。そのため、ターゲットや配信する広告、フリークエンシーなどが具体的になり、すべて一貫して制御、管理できるという仮説を立てました。

 一方、複数社のリターゲティング広告を採用する場合の仮説は、リーチが拡大できるのではないかということです。サイト訪問者に対して複数のリターゲティング広告で入札をかけることができるので、幅広い広告在庫をカバーできるのではないかという期待値がありました。

MZ:では、実際の調査結果について教えてください。

ジェイセン:結論から申し上げると、リターゲティング広告は1社に絞るべきだということがわかりました。

MZ:その理由はなぜでしょうか。

リターゲティング広告を1社に絞るべき2つの理由

ジェイセン:リターゲティング広告を1社に絞るべき理由は2つあって、1つ目は入札衝突という現象が起きるためです。

 ほとんどのリターゲティング広告は、RTBエクスチェンジを介してオークションによる取引が行われます。そのため、複数社のリターゲティング広告を使ってしまうと、同じ企業の広告で入札が競合してしまうのです。我々はこの状況を入札衝突と呼んでいます。

複数のリターゲティング広告(リターゲター)が競合して入札し合った結果
複数のリターゲティング広告(リターゲター)が競合して入札し合った結果、
本来であれば6ドルの支払いで済んだのが、9ドルに上がってしまう

MZ:では、複数社で配信しても、リーチは広がらない、ということでしょうか。

ジェイセン:おっしゃる通りです。そればかりか、入札が競合することで通常よりも高い広告費がかかってしまうというデメリットも抱えてしまいます。

MZ:2つ目の理由はなんでしょうか。

ジェイセン:フリークエンシーブラインドネスが発生してしまうから、というのが2つ目の理由です。広告の接触頻度を指すフリークエンシーですが、複数のリターゲティング広告を活用すると、合計で何回広告に接触したのかが正確に測れなくなってしまいます。この現象を我々はフリークエンシーブラインドネスと名付けています。

 たとえば、リターゲティング広告Aが1回目の配信をしたとしても、実はその前にリターゲティング広告Bで3回広告に接触をしていたとしたら、Aは4回目の接触になります。こういったことが重なると、ブランド体験の質を低下させてしまう恐れもあります。そのため、1社で一貫することでフリークエンシーを徹底的に管理すべきだと、我々は考えています。

複数社にすると最大30%もROIがマイナスに

MZ:では、これら2つの理由が重なると、広告効果にはどのような影響を及ぼすのでしょうか。

ジェイセン:実際の調査結果を表したのが以下のグラフです。1社から2社に増やした場合は、広告主のROIがマイナス22%、1社から3社の場合に至っては30%もマイナスになっています。

ジェイセン:これらの数字をブレイクダウンすると、1社から2社の22%のうち、8pptsは入札衝突、14 pptsはフリークエンシーブラインドネスによるものです。1社から3社の場合は、12 pptsは入札衝突、18 pptsはフリークエンシーブラインドネスとなっています。

 リターゲティング広告の市場は日々変化していますが、マーケターの皆さんには複数社を使ったリターゲティング広告がこれだけROIを悪化させていることを理解した上で活用をしてほしいですね。

リターゲティング広告を正しく選ぶ方法とは?

MZ:では、どのようにしてマーケターはリターゲティング広告を1社に絞れば良いのでしょうか。

ジェイセン:複数のリターゲティング広告から最適なものを選びたい場合には、Cookieを重複のない状態でいくつかのグループに分け、各リターゲティング広告でA/Bテストを行っていくのが良いかと思われます。支出額も同じ額にしておけば、成果も比較できるので最適なものが選べると思います。

MZ:ちなみに、独自の広告在庫を持っているリターゲティング広告のベンダーが少ないという話がありましたが、各リターゲティング広告ベンダーが独自のインベントリを持つ動きは進まないのでしょうか。

ジェイセン:RTBエクスチェンジの枠組みの外で独自の広告在庫や取引を可能にする仕組み作りに動いている企業はあると思います。我々も「Criteo Direct Bidder」というテクノロジーを提供し、ヘッダー入札(SSPなどを介さず直接広告在庫の買い付けをする)という形で独自の広告在庫を生み出しています。

今後はIDベースの配信を実現

MZ:では、最後に今後の展望をお話しください。

ジェイセン:今後のリターゲティング広告においてキーワードとなるのはIDです。これまでリターゲティングの仕組みを支えてきたCookieですが、デバイスもスマートフォンやデスクトップPC、タブレットなど様々なものを使っているので、Cookieで紐付けるのは難しくなっています。そのため、IDで統一して広告を配信できるか否かが、リターゲティング広告の今後につながると思います。

 我々もCriteoショッパーグラフという世界中のオンライン買い物客の75%をカバーするデータを保有しております。そこにはおよそ20億のCriteo ID、8,000億ドル以上のEコマース売上高など、様々なデータが含まれているので、そういったデータをもとにより効果の発揮できるリターゲティング広告を実現したいです。

今回の調査結果をまとめた資料を配布中!

 今回の記事では、リターゲティング広告を1社に絞るのが良いことが調査で明らかになりました。その調査結果をまとめたホワイトペーパーを、現在配布しています。

 記事で書かれている内容を振り返るのにうってつけの内容となっております。ぜひご覧ください!

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この記事の著者

MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2020/01/14 10:00 https://markezine.jp/article/detail/32362