ミレニアル世代とのコミュニケーションは「共感」がキー
ミレニアル世代は、インターネット上で様々な情報交換を当たり前のように行っており、多くの人々と情様々なシェアし、時に行動をともにする。そのため、ビジネスにおいても「共感」されることの大切さが日に日に高まっている。
人々の「共感」を見事にビジネスに生かした業界破壊企業としてThinx(シンクス)をあげておきたい。ナプキン不要の生理用ショーツを開発、販売し、センセーショナルな広告戦略でも話題になったスタートアップである。
女性の生理用品は過去80年、その形をほぼ変えておらず、最もイノベーションが遅れている分野のひとつと言われている。その背景には、生理についてオープンに語ることが避けられている現実があり、先進的なイメージのある米国でもその状況は変わらない。
Thinxのユニークさは、そのようなタブーに大胆に挑戦していく広報戦略をとったところにある。新しい感覚や価値観を隠すことなく発信していくことで「ミレニアル世代」を中心に熱い支持を受けているのだ。
同社の広告でもっともセンセーショナルだったのは、2015年にニューヨークの地下鉄で公開された最もーである。ピンクのグレープフルーツの断面を女性器に見立てたようなポスターで駅を占拠し、物議を醸したのだ。一時はニューヨーク交通局が「不適切である」として掲載を拒否したほどである。
しかし、Thinxはひるまなかった。ひるむどころか逆手にとって「その判断こそ問題だ」「女性の生理を隠すことは差別である」といった主旨のメッセージを広告やSNSを通じて積極的に発信し続けた。この活動が多くの人の目に止まり、SNSを中心に支持者が広がっていったのだ。

またThinxは、単に話題作りをしているだけの会社ではない。インドやアフリカを含む多くの発展途上地域で、女性の生理用品が不足している現実に大きな問題意識を持っており、再生利用可能な生理用ナプキンを製造、販売しているアフリカ団体とパートナー契約を結ぶなど、社会貢献に向けた活動も積極的に行っている
このような社会的メッセージと商品のクオリティ、さらにはセンセーショナルな広告戦略やSNSでのファン獲得など、様々な要素のかけ算によって、Thinxはミレニアル女性の心をつかみ、業界でも際立ったブランドイメージで、新しい存在感を示しているのだ。
「時間」を大切にする、ミレニアル世代のライフスタイル
ミレニアルのライフスタイルの変化も、ビジネスに大きな影響を与えている。たとえば「自炊をしなくなり、オンラインで注文する」という傾向が強くなっていること。
米国オンライン宅配市場規模は既に一兆円に迫っており、たとえば大手のDoorDash、UberEats、Postmates、Lyft、Instacartは、いずれも企業価値が1,000億ドルを超えるユニコーンとなっている。
2018年にUBSグループが実施した調査によると、ミレニアル世代はその親たちに比べ、3倍もオンライン注文をしているという結果が出ている。その背景には、ミレニアル世代の持つ「自分たちの趣味や興味に時間を費やしたい」というインサイトがあり、結果的に「自分で料理する」という習慣は少なくなるだろうとしている。
同レポートでは、2030年にはオンライン宅配市場は現在(2018年当時)の10倍に膨れあがるとするなど、極めて巨大なマーケットが生まれることを予測しているが、その後のコロナ・ショックにより、この潮流はさらに加速するだろう。「コンビニ」が自宅との距離を最大の武器として業界を破壊したように、この「ワンマイル・デリバリー」は小売業界に大きなショックを与えるカギになりそうだ。