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MarkeZine Day 2020 Autumn(PR)

環境変化に動じない 高速PDCAを回すダイキン工業と日産自動車に聞く「Datorama」活用術

 住まいや健康への関心の高まり、経済的な不安、ニューノーマル(新しい生活様式)への移行など、消費者の意識が急速に変化している。また、情報との接触チャネルの増加は、思考や行動の複雑化をもたらしている。このような変化をとらえながら、マーケティング施策のPDCAを高速で回し続けるダイキン工業の片山義丈氏と日産自動車の堤雅夫氏が「MarkeZine Day 2020 Autumn」に登壇。データを活用した施策の評価と改善について、セールスフォース・ドットコムの津野田潤氏が話を聞いた。

耐久消費財の買い替えを後押ししたパンデミック

 セッションの冒頭では、ダイキン工業と日産自動車のコロナ禍の状況が紹介された。

 近年、猛暑が続く日本の夏。エアコンはもはや生活必需品となった。ダイキン工業の片山義丈氏によると、エアコンは現在使っているものが壊れたら買い替えようというニーズが高い商品で、買い替えまでのスパンが約13年と長い。だがパンデミックによって人々が自宅で過ごす時間が長くなり、家の中の環境への関心が高まった。特別定額給付金の支給も購買意欲を後押しし、今までよりも良いエアコンを買いたいという要望が増えているという。

 特に高まったのが換気への関心だ。そこでダイキン工業は、価格や湿度コントロールの性能といったスペックを押し出すのではなく、「空気で答えを出す会社」というブランドパーパスに基づいたコミュニケーション活動へと軸足を移した。「換気という社会課題に答えを出すべきだと考え、換気に特化したサイトを10日ほどで作りました」と片山氏。サイトへの反応は良く、SNSでも広く拡散され、テレビや新聞などのメディアでも多く取り上げられた。価値を打ち出したコミュニケーション施策が強く求められていると実感したという。

ダイキン工業Webサイト「上手な換気の方法」https://www.daikin.co.jp/air/life/ventilation/
ダイキン工業Webサイト「上手な換気の方法

 一方、日産自動車の堤雅夫氏は「近年は若者を中心に『クルマ離れ』が進んでいたが、パンデミックは自動車に対する消費者の価値観を大きく変えた」と語る。

 まず、人との接触を避けながらプライベートな空間で移動できる点が見直され、自動車の購入に積極的でなかった層も前向きに検討するようになった。きれいな空気への関心も高まっており、ウイルス除去成分の発生装置のWebサイトを、5月の大型連休中に急遽制作したという。

 また、パンデミックで在宅勤務が急速に普及したものの、家の中で静かに仕事ができないという悩みを抱える人は多い。そこで、自動車を一つの部屋ととらえるサイト「#OneMoreRoom」を立ち上げ、ダンボールをデスクに変える方法など、快適に仕事ができる環境づくりのヒントをまとめた。

日産自動車Webサイト「#OneMoreRoom」https://www2.nissan.co.jp/SOCIAL/CAMP/ONEMOREROOM/
日産自動車Webサイト「#OneMoreRoom

 自動車メーカーにとって追い風が吹いているようだが、経済的な不安の高まりは大きな障壁だ。日産自動車では、消費者をサポートできることはないかと考え、支払い開始時期の先延ばしや、来年春までの金利負担額のキャッシュバックなどのキャンペーンも展開している。

(左から)ダイキン工業株式会社 総務部 広告宣伝グループ長 部長 片山義丈氏<br>日産自動車株式会社 日本マーケティング本部 ブランドメディア戦略部 部長 堤雅夫氏<br>セールスフォース・ドットコム 常務執行役員マーケティングクラウド営業本部長 津野田潤氏
(左から)ダイキン工業株式会社 総務部 広告宣伝グループ長 部長 片山義丈氏
日産自動車株式会社 日本マーケティング本部 ブランドメディア戦略部 部長 堤雅夫氏
セールスフォース・ドットコム 常務執行役員 マーケティングクラウド営業本部長 津野田潤氏

数年後に起こると予測していた変化が前倒しで到来

 カスタマージャーニーも大きく変化したと、両氏は口をそろえる。エアコンのような高額商品も、最近はECサイトでの購入が増えた。しかし「ニューノーマルだから変わったのだと、何でも安直に結びつけるのはあまり好きではない」と片山氏は言う。

 「思いもよらなかった変化が、コロナによって引き起こされたのだとは思いません。情報をデジタルで得る人は、コロナ前にも増えていたので、いずれこうなることは予測していました」(片山氏)

 誰もがいずれは実現すると予測していた変化が、前倒しで到来しただけだという。

 堤氏も「ディーラーでご説明させていただく自動車選びや特徴の紹介、支払いに関する情報を、前もってオンラインで収集しておきたいというニーズは以前からありました」と賛同。日産自動車では、ディーラーを訪問する前にこれらの内容を相談できるオンラインチャットを、この6月より本格導入している。

過去のデータから全体を俯瞰する/ダイキン工業

 予想していた未来とはいえ、それが急に訪れたことで「部内はバタバタしていている」と片山氏は打ち明ける。だが、以前からマーケティング分析を支援するセールスフォース・ドットコムの「Salesforce Datoramaデートラマ(以下、Datorama)」を導入しており、データ化が進んでいた部分は、変化に迅速に対応できているそうだ。

 エアコン商戦は夏と冬が本番で、訴求内容はそれぞれ異なる。ダイキン工業では、テレビCM、ネット広告、オウンドメディア、戦略PRなど、様々なコミュニケーション施策を展開していた。「それぞれの過去のデータを引っ張り出して、一年前のこの時期は何をしていたかなと思い出すんです」と片山氏。だが、媒体や代理店ごとにデータの形式が異なったり、参照したデータが旧バージョンのものだったりと、全体を俯瞰することが難しかった。しかし、Datoramaでデータを一元化してからは、過去の施策状況をリアルにイメージしやすくなったという。

 「どの広告への反応が良かったか、どのメディアが効果的だったのかが実施しているタイミングで日々わかるので、自分の実感と紐づけてデータを見ることができます。施策を打ちながらデータを確認し、広告を柔軟に変えていくこともできるため、キャンペーンが終わってから反省していたころと比べて、圧倒的に効率的な広告展開の実行につながる。そして一年後にこのデータを開いても、当時の状況をリアルに思い出せるのです」(片山氏)

 外部のパートナーと同じデータを共有できることも、迅速なアクションにつながる。媒体社や代理店と、同じダッシュボードを確認できるようにしておくと、どの広告のどのワードへの反応が良いのか、読者アンケートに何が書かれているのか、全員でリアルタイムに共有でき、高速でPDCAを回すことが可能になるという。

広告ごとの分断を担当者の意識レベルから改善/日産自動車

 自動車も買い替えサイクルが長い商品であり、購入を即決するものではない。そのため、日産自動車では様々なタッチポイントで接点を作るべく、多種多様な広告活動を展開しているが、各広告担当者が自身の担当領域にのみフォーカスしてしまうことが課題だった。

 テレビCM、動画広告、バナー広告などの専門チームは、それぞれのデータを使って改善活動を行う。クリエイティブ担当はより良い広告クリエイティブを作ることに、メディア担当はその広告を流すことに注力している。しかし「皆が同じ方向を見れば、お客様にメッセージをお届けする上でもっと改善できるのでは」と堤氏は考えていた。

 日産自動車もDatoramaを導入しており、「広告を見て能動的に調べて比較検討している人、さらにディーラーに足を運んだ人はどれくらいいるのか。一連の流れがダッシュボード上で見られるので、広告活動の流れを皆で共有できるようになりました」と堤氏は語る。バナー広告が効いている理由はアッパーファネルがリッチだから、という全体の中での関連性も明らかになっていった。

 次第に、広告担当者が分野の垣根を越えて施策やクリエイティブを見直し、反映させていく意識が芽生えた。代理店任せにしなくとも自分でデータを確認できるので、改善のスピードも速くなり、今までになかった改善が生まれるなど、恩恵を実感しているそうだ。

データを読み解き活かすために必要な能力とは?

 最後に話題に上がったのは、ニューノーマル時代にデータを読み解き、実行していくために必要な能力について。

 片山氏は「データの海におぼれないこと」と断言した。正しいデータも正しくないデータも簡単にとることができるようになり、データを使って仕事をしているつもりになりがちだが、大事なのは、本当に必要なデータをよく選んで、考えることだという。

 また、データを整理し、仮説を立て、実際に試してみることが肝要だとも述べた。実施した結果が、たとえ悪くても、それは良い気付きになる。良いのか悪いのかもわからないことのほうが、弊害は大きいと片山氏は語る。

 「素晴らしい戦略を最短距離で立てようというのは、無理なこと。仮説を立て、実行して検証し、また仮説を立てて検証していく。実行を続ける中で、最終的に正しい方向を見つけていかないと、今の時代のコミュニケーションは難しいでしょう」(片山氏)

データドリブンに必要なオーナーシップとリーダーシップ

 日本一のマーケティング組織を目指す堤氏が重要視しているのは、データドリブンの意識だ。その中で「欠くべからざる要素」として二点挙げる。

 一点目は、ビジネスに対するオーナーシップ(当事者意識)だ。「良い広告を作った」という点に重きを置く宣伝部もあるが、「あくまでも広告はビジネスに貢献しなくてはならない」と堤氏は考える。日産自動車では、広告がどのように貢献しているのかという一連の流れが可視化されることで、自ら仮説を立てるオーナーシップが育ってきていると語る。

 これには片山氏も「クリエイティブを追求するあまり、ビジネス貢献の視点が弱くなってしまいがちなのが、宣伝部の根本的な課題。Datoramaのようなツールによって、それが変わってくる」と賛同した。

 堤氏が挙げるもう一点の要素は、ビジネスのプロセスに対するリーダーシップだ。これは、マーケティング施策の全体を俯瞰し、データを見ながら、より良いパフォーマンスのために意見を出し合い、率先して改善していく能力のことを指す。このリーダーシップも育ってきていることを実感しているというが「もっともっと高めていきたいですね」と意気込む。

 情報のチャネルが増え、人々の行動や価値観が大きく変化している現在。マーケティング施策の精度を上げ、消費者に響くメッセージを届けるためには、全体を俯瞰できるデータと、そこから新しい価値を生み出していこうという能動的な姿勢が求められている。

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この記事の著者

田崎 亮子(タサキ リョウコ)

マーケティング&コミュニケーション領域の編集・執筆・翻訳を手掛ける。コミュニケーション領域の専門誌編集、コーポレートコミュニケーション領域の制作会社を経て、現在はフリーランス。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2020/10/23 10:00 https://markezine.jp/article/detail/34320