AppsFlyer Japanは、2020年のモバイルアプリ市場を総括するレポート「State of Japan 2020(ステイトオブジャパン2020)」を発表した。
同レポートでは、世界シェア72%を誇るAppsFlyerが保有する、2020年1月〜9月における約8,500万件のアプリインストール、月間インストール数が1,000回以上の2,000のアプリデータを基に、日本国内のモバイルアプリ市場動向をまとめている。
非オーガニックインストール数は都心を中心に多い傾向
非オーガニックインストールにおける都道府県別(上位10位)のシェアを見ると、日本では都心を中心にインストール数が多いことがわかる。東京(13.51%)、大阪(8.41%)、神奈川(7.71%)、愛知(6.81%)、埼玉(5.81%)が上位5位を占めている。これらの都府県は、人口が多いことに加えて、ビジネス街や繁華街が多いことが特徴的。また、埼玉、千葉、神奈川は東京、兵庫は大阪、そして静岡は愛知、それぞれがベッドタウンとしても機能しており、都心部まで電車で30分から1時間程度で通勤できる場所に位置している。
東京とその隣接地域(神奈川・埼玉・千葉)のシェアの合計は約30%、大阪とその隣接地域(兵庫)のシェアは約13%、愛知とその隣接地域(静岡)のシェアは約9%と、これら3エリアだけで47ある都道府県全体の半分以上(52%)となり、主要な経済地域が占める割合が非常に高いことがわかる。
インストール数が伸びた教育・エンターテインメント・メディアコンテンツ
国内モバイルアプリについて、2020年1月〜8月のアプリインストール数全体の推移を見ると、新型コロナウイルス感染拡大が本格化した2月から5月にかけてアプリインストールが緩やかに上昇しており、第一波の感染状況が少し落ち着きを見せて緊急事態宣言が解除された5月から6月にかけて減少。そして、6月から8月にかけて再び徐々に伸びを見せている。
カテゴリ別で特に顕著な動きが見られたのは、教育や、エンターテインメント、メディアコンテンツといったカテゴリ。教育では、新型コロナウイルス感染拡大当初より小学校から大学まで幅広い世代で休校が進み、オーガニック・非オーガニックともにインストールが急激に伸びている。また、学校が再開し始めた6月以降は、非オーガニックインストールは明らかに減少が見られたものの、オーガニックインストールが相対的に伸び続けており、教育業界全体がモバイルアプリの利用を定常化する動きが進んでいることがわかる。
多くのカテゴリでアプリ起動数のピークは5月
国内モバイルアプリについて、インストールされたアプリが実際にユーザーにどのくらい利用されているのか、カテゴリ別にアプリ起動数の推移を見ると、コロナ禍が常態化に向かい始めた2月頃から多くのカテゴリで変動が見られている。
教育アプリでは、緊急事態宣言により学校が休校(3月上旬)した時期からアプリの起動数が急激に増加し、緊急事態宣言が続いた5月をピークに、学校が再開した時期(6月)から対面の機会も増えたことも影響したのか徐々に減少。ゲームアプリのアプリ起動数推移においても、同様に在宅時間が増え始めた2月から増加し、5月にピークを迎えている。
エンターテインメントアプリは、緊急事態宣言を受けた外出自粛の影響が顕著に表れており、2月から急上昇している。家にいる時間が長くなったことで、ユーザーが動画配信サービスを中心にエンターテインメントアプリをより利用するようになったことが数字に表れている。またレポートでは、6月にプロスポーツリーグの再開がアナウンスされたことも、同じ時期からの再度の利用上昇に場合によって貢献していると考えられるとも述べている。
新しい生活様式に合ったアプリサービスが鍵に
アプリ内における課金とアプリ内広告からの収益を合わせた「アプリ内収益」においても、収益の動きがコロナ禍のトレンドに大きく連動していることがわかる。
教育アプリは、3月から5月に向けて一気に収益が増加した一方、5月から徐々に落ち着きを見せている。それに対しビジネスアプリは正反対の動きを示しており、在宅勤務が開始した3月から4月にかけて収益が急降下したものの、在宅勤務が長引き始めた4月以降利用率が高くなり、収益が伸び続けている。また、ファイナンスアプリの収益は全体的に緩やかに右肩上がりに伸びており、コロナ禍による決済のオンライン化の後押しが一因として考えられる。
エンターテインメントやユーティリティ、ソーシャルアプリも、全体的に収益が向上しているが、特にこの3つのカテゴリで顕著なのは、6月から8月にかけてアプリ内収益が急激に上昇しているという点。
レポートでは、特にソーシャルが伸びた背景の一つとして、デーティングアプリのようなジャンルにおいてオンラインデートといった新たなサービス提供が見られるようになったことが考えられると主張し、市場の変化に適応し新しい生活様式に合ったアプリのサービスを提供できるかによって、ユーザーに提供できる質の差、つまりは購入意欲の差につながっていくと述べている。
モバイル不正広告率が高かったカテゴリはソーシャルと教育
2020年の1月から8月にかけて、日本における全体の広告費の約12%もの金額が不正広告に搾取されており、その被害総額は8月時点で推定281億3,500万円となっている。また、OS別で見ると、7月と8月を除いて、 iOSデバイスの方が全般的に不正率が低く、Androidデバイスの方がより不正広告に狙われていることがわかる。
また、特にモバイル不正広告率が高かったカテゴリは、ソーシャル(平均39%)と教育(平均25%)。2月から5月にかけて多くのカテゴリで一時的なモバイル不正広告率の上昇が見られている。レポートではその要因として、コロナ禍により自宅でスマートフォンを使用する時間が増えた結果、不正業者の攻撃が一時的に活動が伸びると思われるジャンル(教育、ソーシャル、ビジネス、エンターテインメント、ユーティリティとったカテゴリ)に集中していたことが考えられると伝えている。
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