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MarkeZine Day 2021 Spring(AD)

B2Bマーケティングの成果を最大化する「ABMのベストプラクティス」を大公開

マーケティングや営業の効率を大きく改善できるというABM。大手企業からスタートアップまで多くのABM導入を支援した株式会社ユーザベース FORCAS事業 執行役員 CEOの田口槙吾氏が、2021年3月2日に開催されたMarkeZine Day 2021 Springに登壇。データとテクノロジーを活用して理想の顧客を再定義し、マーケ部門とセールス部門が連携しながらアクションするABMの手法を惜しげもなく語った。

2,000人以上のマーケターと共創するABMプラットフォーム

 「未来のマーケティングを共創する」というビジョンのもと、2017年にユーザベースの新規事業として登場したBtoBマーケティングプラットフォーム「FORCAS」。最先端のBtoBマーケティングメソッド「ABM(アカウントベースドマーケティング)」を素早く簡単に実行することができる、ABMに最適化されたプラットフォームであり、すでに多くの企業に導入されている。

FORCASのコンセプトイメージ(クリックして拡大)
FORCASのコンセプトイメージ(クリックして拡大)

 機能を提供するだけでなく、2,000人以上のマーケターコミュニティで行われるマーケティング事例の共有や、ユーザー企業から寄せられた声をもとに、ABMを成功させるための仕組みを開発している点もFORCASの特徴だ。これまでに150以上の機能が、ユーザー企業の声をもとに実装されたという。

 2021年3月に開催された「MarkeZine Day Spring 2021」に登壇した株式会社ユーザベース FORCAS事業の執行役員 CEO 田口槙吾氏は、これまでの実績と蓄積されたノウハウをもとに、ABMの基本理念から成功の秘訣、最新版のベストプラクティスまでを公開した。

株式会社FORCAS 執行役員 COO 田口槙吾氏

株式会社ユーザベース FORCAS事業 執行役員 CEO 田口槙吾氏(※登壇時は株式会社FORCAS 執行役員 CCO)

なぜ注目されているのか。ABMの定義を再確認

 2016年頃からアメリカを中心に関心が高まってきたというABM。2019年時点では、すでに94%のマーケターがABMに取り組んでいると回答したとの調査結果(5 Key ABM Trends for B2B Marketers to Track Heading into 2020)があるほど、アメリカでは浸透しているBtoBマーケティングの手法だ。

 田口氏は「徐々に日本でもABMの熱が高まり、高い効果が出ているユーザーも多くなってきたと感じている」と話し、以下をFORCASの考えるABMの定義として提示した。

 この定義から起こりがちな誤解として、「ABMってアウトバウンド施策のことでしょとか、超大手企業だけを対象にするんでしょ、などとよく言われます。それらもABMのひとつの施策ではあるものの、全てがそうではありません。中小・中堅企業を含めて多くの顧客企業をターゲットとする場合にも効果的な手法です」と田口氏。

 従来より一般的であるリードベースドマーケティングと比較して、その有効性を解説した。

 リードベースドマーケティングでは、ファネルと呼ばれる逆三角形の図が使われる。上部の「認知獲得」が多ければ、そのうちの一定数がリードになり、商談につながり、受注に至るという考え方だ。よって、認知やリードの獲得数を増やせば増やすほど受注につながるとされる。

 これを実行するメリットもあるが、デメリットもある。たとえば、認知獲得やリードの量の最大化に走ると、すべてのリードの質が同じわけではないため質が不安定になってしまい、無駄が多く発生する生産性が上がらない部署間の連携が悪くなる、などの課題が出てくる。

 これに対し、ABMはターゲティングを認知獲得よりもファネルの上にもってくる考え方である。

 まず、マーケティング部門、営業部門、戦略部門で狙うターゲットについて合意する。そのターゲットに最適化された施策を全部署の共通認識のもとで実施するため、部署間の連携もスムーズになり、量と質の最大化を実現できるというものだ。

 「ABMを実行すると、ターゲット企業(ターゲットセグメント)を共通言語にして各チームが動き始めるので、チーム間の連携が以前と比べて圧倒的にうまくいくようになる。これがABMにおけるひとつの特徴です」(田口氏)

 では、ABMにトライすると簡単に成果が出るのか? というと、そんなことはない。「中長期的に取り組めば大きな改善を見込めるのがABM」として、田口氏はABMで成果を上げるために重要な要素を2つ挙げた。

ABMの成功に不可欠な2つのポイント

 「ずばり、ABMで成果を上げるための要素は2つ、“ターゲティング”と“アライメント”です。この2つを愚直にやることが、ABMで成果を上げるために重要です。また、短期的でなく中長期的に取り組むことで成果が出てくる。これは当社が多くの企業のABM導入を支援した実績から言える結論です」(田口氏)

 では、なぜターゲティングとアライメントが重要で、それぞれどんなポイントがあるのか。この疑問についても、詳細に説明された。

1.ターゲティングが重要な理由

 そもそも、ターゲティングとセグメンテーションは似て非なるものであり、混同してはならない。一般的には、業界・企業規模・地域をもとにターゲット顧客企業が「セグメンテーション」されている。しかし、これだけでは企業の課題やニーズが特定できず、「ターゲティング」しているとは言えない。

 たとえば、下図のA社とB社。業界・規模・地域を見ると同じセグメントであるが、実際はまったく異なる属性であり、この2社が同じ課題やニーズをもっているとは考えられない。課題やニーズが共通する企業群を定義してこそ、意味のあるターゲティングだと言える。

 ABMはターゲット企業を定義するところから始まる。顧客企業がどのような状況にあり、何を求めているのか。ユーザーニーズを捉えたターゲティングをすることが、ABM成功の1つ目のカギである。

2.アライメントが重要な理由

 ターゲットリストという共通言語を見ながら、部署間で連携して動いていくというABMの手法では、それを推進する体制が非常に重要になってくる。冒頭にも出てきたアメリカのレポート(5 Key ABM Trends for B2B Marketers to Track Heading into 2020)には、「46%の回答者がセールスとマーケティングの連携がABMの最大の課題」とあり、「80%の回答者がターゲットリストの特定はセールスが主導している」とある。

 また、ABMの成功を測定する指標については、「新規アカウントの獲得数(60%)」「クオリファイされたアカウント数(52%)」「収益への貢献度(50%)」「受注率(50%)」「パイプライン・ベロシティ(46%)」「アカウントエンゲージメントスコア(41%)」が挙げられており、マーケティング部署だけで完結するものではないことがわかる。戦略部門、マーケティング部門、営業部門が連携しなければ、ABMは効果測定すらできなくなるということなのだ。

 なお、各チームでコミュニケーション量を増やし上手く連携していくために、田口氏は次の4つをクライアントに提案しているそうだ。

  1. ターゲットリストはマーケティング部門だけで作成するのではなく、戦略部門や営業部門と合意する
  2. チームをまたいだ定例会議をセットする
  3. 進捗確認・報告では、新規獲得できたリード/商談につながったリード/受注した案件のうちターゲットにしている企業が何%だったのかを入れる
  4. 四半期に一度ターゲットリストが正しいかを見直し、ターゲット企業を最適化させる

これがABMのベストプラクティスだ!

 続いてセッションは「ABMを成功させるターゲティングの実践事例」の解説に入った。FORCAS社が多くの企業にインタビューをし、ABMの導入に成功している企業に共通している特徴を抽象化したものが下図のABMサークルだ。

 「約2年前にこの仮説を立ててから、この通りにCS(カスタマーサクセス)が支援するようになり、すごく上手くいっています。今現在これがABMのベストプラクティスであると自信を持ってお伝えできます」(田口氏)

 ABMサークルには、ターゲットを可視化するプロセスと施策実行&効果測定するプロセスの2つのサークル、それを実践する6つのステップがある。2つのサークルをどちらも回していくことが肝だ。

 「この通りに実行するのは簡単ではありませんが、この通りに実行している企業が高い成果を出しているのは間違いない事実です」(田口氏)

具体的なTipsでターゲット可視化を実践!

 最後にこの日のセッションでは、2つのサークルのうち「ターゲットを可視化する」部分について解説。サークル内の4つのステップをどう進めていくか、具体的なtipsが説明された。

1.既存顧客のデータを取り込む

 はじめに、名刺管理システム、営業管理システム、マーケティング管理システム、請求管理システムなどいろいろなところに散らばっているデータを集約し、整備するところからスタートする。

 ここで重要なのは、顧客データの表記ゆれをなくすこと。たとえば、企業リストには「株式会社ユーザベース」、名刺管理システムには「Uzabase」、請求管理システムでは「(株)ユーザベース」などと登録されていることがある。表記ゆれにより複数の取り引きや接点があるように見えてしまうため、同一企業に名寄せをすることが大事である。

 顧客データを集約したら、内部データ、外部データの順に統合していく。

 内部データは、「株式会社ユーザベースに1,500のリードがある」「過去に20の商談があった」「そのうち受注額は4,100万円だった」など。外部データは、企業の属性、規模、社員数、業界、特徴、BtoB事業なのかBtoC事業なのか、広告投資の度合い、COVID-19の影響を受けているか否かなど。顧客分析に必要な外部データを統合して、リッチな顧客データを整備する。

2.既存顧客の傾向把握

 次に、既存顧客のデータをもとに傾向を把握する。ここでは、セグメントを切り口にしてデータを見るとよい。

 たとえば、下図のように「特徴」というセグメントで見ると、海外進出している企業、DXを推進している企業の受注率が高いことがわかる。

 最近では、どのようなITツールを使っているのかもわかりやすい切り口になる。ヒートマップツールやウェブ接客ツールを使っている顧客からの受注率が高い、などと糸口が見えることもある。

 あらゆる情報でセグメントを切って顧客を分析し、どこが受注率が高いかのかを見極めていく

3.潜在顧客の特定

 次は、既存顧客の傾向から理想の顧客の条件とストーリーを具体的に特定する作業だ。

 まず、Tier1(優先度1のセグメント)は「新規事業立ち上げでTHE MODEL体制(※)に移行したい大手企業」というようにキャッチーな言葉で企業を表す。その後、「この企業にはどういうキラートークや勝ち筋がハマるか」「理想の既存顧客」「具体的にどういう特徴のある企業が当てはまるかの抽出条件」をセグメントシートに書き込んでいく。

 セグメントシートができたら、受注率やリード保有率、商談実績などの社内のSFAなどに保有している内部データを統合する。

 これによって、Tier1(優先度1のセグメント)には368社を設定したが、内部データを見るとすでにそのうちの345社のリードが獲得できており、このセグメントは新規リード獲得がミッションのマーケティングとしては伸びしろがない、などと考えることができるようになる。

 最後に、営業部門と一緒にセグメントシートと各セグメントに該当する具体的な企業名のリストを見て、営業部門が良しとしない企業があれば外す、というステップを経て、最終的なターゲットリストとして合意する。

(※)THE MODEL:福田康隆氏による書籍『THE MODEL(MarkeZine BOOKS)マーケティング・インサイドセールス・営業・カスタマーサクセスの共業プロセス』で解説されている。

短期指標にとらわれず、中長期的に取り組んでほしい

 以上が、セッションで公開された「ターゲットを可視化する」という1つ目のABMサークルのステップである。営業部門、マーケティング部門、戦略部門で合意しながら作成したターゲットリストをもとに、ここからは各部門が行うべき施策を実行し、効果検証するという流れだ。

 最後に田口氏は「今日はターゲットを可視化するところまででしたが、いろいろな情報発信をしているのでぜひ見てみてください。ABMには各部署のコミュニケーションが不可欠で、短期指標にとらわれず、1~3年で腰を据えて取り組むことをおすすめしています。みなさんも今日から、成果の最大化に取り組み始めませんか?」と締めくくった。

【資料ダウンロード】
ABMの実現を強力にサポートするクラウドサービス「FORCAS」
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この記事の著者

那波 りよ(ナナミ リヨ)

フリーライター。塾講師・実務翻訳家・広告代理店勤務を経てフリーランスに。 取材・インタビュー記事を中心に関西で活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2021/04/23 11:30 https://markezine.jp/article/detail/35754