これからは「1impの価値向上」が重要
MarkeZine編集部(以下、MZ):まず自己紹介とともに、SUBARUがマーケティングにおいて大切にしているお考え、理念をお聞かせください。
上田:SUBARUの国内営業本部 マーケティング推進部 宣伝課の上田です。私はデジタル広告を担当しており、車種ごとの広告運用などを、博報堂さん・読売広告社さんと行っています。
SUBARUは経営理念として「お客様第一」を掲げていますが、デジタルマーケティングの観点でもこの考えは変わらず、お客様一人一人に即した情報発信が重要と考えています。その中でOne to Oneマーケティングを実践してきましたが、やはり課題はクッキーレス化で今までのやり方が通用しなくなっていることでした。
MZ:そういったSUBARUの課題に対して、読売広告社ではどのようなことを提案されてきたのでしょうか? また解決策のひとつとして、Teadsを提案された理由についてお聞かせください。
佐藤:デジタルマーケティングは移り変わりが速いため、予算の1割くらいは新しいメディアにトライしていきましょうと推奨してきました。その中でもクッキーレスは必ず来る課題なので、ここ1~2年は様々なトライをしており、Teadsもその中の一つです。
またクッキーレスの問題をさし置いても、デジタル広告の市場が激化している昨今、1コンバージョンをとるための価格はつり上がっています。ユーザーにとっては情報が処理しきれない量になっている中で、“広告に接触した時点で興味関心をいかに惹きつけるか”が需要な要素であると考えています。
我々はそれを「1impの価値」と呼んでいますが、1impの価値を高めていくにあたり、Teadsは適したメニューの1つだと判断しました。クリエイティブ開発力や、メディア選定でもきちんとブランドセーフが図られており、それに加えてTeadsがグローバル調査で「ユーザーアテンション」の考え方を紹介していて、「1impの価値」と意識していることが同じだと認識したのも大きいです。
また、先に取り上げたクッキーレスの課題に対しても適応したコンテキストターゲティングの導入も実施していて、ポジティブな評価をしています。
ユーザーアテンションを高める4つのドライバー
MZ:Teadsが注目する「ユーザーアテンション」の考え方と、SUBARUの考える「1impの価値向上」が近いというお話がありました。改めて、デジタル広告においてユーザーアテンションはどう重要なのでしょうか。
世安:ユーザーアテンションは近年グローバルで注目を集めており、消費者の注目・関心を惹きつけること、またこれを意識した配信スキームこそが重要という考え方です。
2020年に行われたユーザーアテンションに関するグローバル調査では、「ユーザーアテンションを高める4つのドライバーが存在する」と発表されています。
ユーザーアテンションを高める4つのドライバー
(1)in View Time
広告が表示されている時間。これを無理なく強制的ではない形で、長くすることが望ましい。
(2)User Choice:能動的な広告体験を促す面
広告をあくまで自主的に見てもらうための出し方が重要。記事内に表示し、スキッパブルであることなどがポイント。
(3)Creative:リッチでインタラクティブなクリエイティブフォーマット
スマホで記事を読む際のスクロールを念頭に、見せ方を工夫しインタラクティブ性を持たせる。
(4)Relevance:面と広告の関連性を高めるコンテキストターゲティング(クッキーレス)
記事の内容と広告のマッチを意識する。
4つのドライバーを網羅した、SUBARUの事例
世安:SUBARU様とのお取り組みは、この4つのドライバーをすべてカバーしたものとなります。Teadsでは、リッチクリエイティブの制作サポート「Teads Studio」を無償提供しております。これはKPIの最大化を目的としたものなのですが、広告に当たったユーザーに楽しんでいただける体験型のインタラクティブ要素も取り入れております。これは「お客様第一」とするSUBARU様のデジタルマーケティングおよび経営理念に非常に適したサービスだと理解しております。
また、ブランド毀損にならない配信面の選定も意識し、ネガティブキーワードターゲティングを用いて、交通事故や飲酒運転といったワードを含む記事には広告を当てないようにしています。
そしてターゲティングですが、2020年度までは興味関心など、やはりクッキーベースのターゲティングを取り入れておりましたが、2021年度に入ってからは、目下注目を集めるクッキーレス時代を意識・シフトしていくことを計画し、主にコンテキストターゲティングを主軸としたクッキーレス化にも取り組みました。
Teadsは記事中広告のinReadを提供しており、スキッパブルでユーザーフレンドリーな配信でありますが、リッチクリエイティブ、コンテキストターゲティングと相まって、高い視聴完了率を生み出しております。
こうしたソリューションの組み合わせによって、1impの価値の向上を目指していきました。
MZ:では実際に、Teadsのソリューションを活用しどのようなプロモーションを実施されたのでしょうか。
上田:我々の商品はSUVをはじめ、ツーリングワゴンやスポーツ系の車種など様々なラインアップが存在します。Teadsさんを活用しながらそれぞれの車種に合った配信面やクリエイティブを目指してきました。
佐藤:プロモーションは、恒常的に行う施策(オールウェイズ・オン型)と、販売計画に合わせてテレビCMや動画を投下するキャンペーン型の2種に分かれます。Teadsは特にキャンペーン型のほうで活用しました。ターゲットは車種ごとに異なるので、都度Teadsさんと「この車種でこのターゲットでこのKPIだったらどういったクリエイティブ、ターゲティングがよいか」という議論をします。
デジタルマーケティングはターゲットを絞り過ぎると同じユーザーにしか当たらなくなったり、競合入札で必要以上に高くなったり、結果として効率が悪化するというジレンマが実はあります。そうならないよう、クリエイティブによる興味喚起を狙っています。
世安:2021年度は来たるクッキーレス時代に向けて、早期に実配信で着手しシフトすることを意識していました。そこでBRZのキャンペーンにて、コンテキストターゲティングを実施。これは記事内容とマッチする広告を配信するため、ユーザーのモーメントを捉えたターゲティングとなります。配信フォーマットにおいては、日本初のインタラクティブなリッチクリエイティブを制作しました。スクロール動作に連動して、広告枠から車が飛び出てくる仕掛けを施しました。
スワイプカルーセルは、ユーザーが広告画像や動画をスワイプすると、表示されるカルーセルを次々に切り替えられるインタラクティブな広告クリエイティブのこと。1つのバナーの中で、多様な情報を訴求できるので、「まだ展開中で詳しい分析はこれからですが、単純な1バナーのインプレッションより、セレナの様々な魅力を伝えられる訴求効果があると考えられます」(塚原氏)という。
ネリー:多くの企業がクッキーレスについて注目しているポイントは「クッキーを使用しなくてもこれまでと同様のパフォーマンスを出せるのか」ということだと思っています。そのため、BRZのキャンペーンでクッキーレスでベストパフォーマンスが出せるように運用しました。
KPI達成は意識しつつも、クッキーレスでもパフォーマンスを維持できるのかを検証するため、今回は見守ることも意識しました。結果、視聴完了率、数、単価といったKPIに貢献でき、来たるクッキーレス時代への大きな収穫となりました。
走る愉しさを広告でも表現。その効果は?
世安:BRZのキャンペーン以降、SUBARU様にはクッキーレスに移行いただき、クッキーベースと遜色ない高いパフォーマンスを維持できています。
Teads STUDIOでは、他にこんなクリエイティブも実施いただきました。こちらは、広告をカードのようにスワイプする仕掛けで、ユーザーが広告を楽しめるようになっています。
こちらは、動画の下部に安全面に関する訴求ポイントを常に表示し、スクロールするとキューブが回転するような仕掛けになっています。
MZ:SUBARU、読売広告社としては、今回の取り組みの成果をどう捉えていらっしゃいますか。
佐藤:視聴完了単価2円前後と、他の動画メニューと比べても遜色ないパフォーマンスを維持しています。KPIに合わせてTeadsさんが運用してくださった努力の結果だと思っていて、だからこそ継続して活用しています。サイト誘導やCV(見積もり完了)への貢献も動画としては大きい。複合的に効果を発揮しているので、これが1impの価値を高めるということなのではと評価しています。
上田:BRZのクリエイティブは私自身もわくわくしました。BRZは乗るだけで走る愉しさが感じられる「ライド・エンタテイメント」のコンセプトで作っています。それを広告においても的確に表現できたと感じています。
「お客様第一」のコミュニケーションを強化
MZ:最後に、今回のお取り組みを振り返りながら、今後の展望をお聞かせください。
佐藤:1impの価値向上とクッキーレスの対応の2軸でやってきたこの1年間ですが、Teadsさんとの相性もよく、手ごたえを感じられました。
ブランド理念として「安心と愉しさ」を謳っているSUBARUさんなので、楽しい気分のときに楽しいクリエイティブを見るほうがわくわくしますよね。だからオリンピックのときのコカ・コーラのCMのように、シーンにマッチした演出をTeadsさんと一緒に生み出していけたらと思います。
上田:課題としてOne to Oneのコミュニケーションにおいて今までの手段が使えなくなってきたことを挙げましたが、企業の社会的立場として個人情報保護に関する適切な対応をしっかりとやっていきたいと思っています。
その上で「お客様第一」のコミュニケーションも強化していきたい。そのために読売広告社さん、Teadsさんと引き続き連携していきます。
世安:移り変わりの速いデジタルマーケティングにおいて、時代の変化にしなやかに対応し、的確なソリューションを生み出していきます。そしてクライアントのKPIのみならず、その先の本質的なゴールへとリードするお手伝いをこれからも進めていきます。
ネリー:運用チームのミッションはこれからも変わらず、KPIを達成することです。クッキーレスはもちろんですが、それだけにとらわれずにベストパフォーマンスを達成するように運用し、お客様にご安心いただけるキャンペーンを目指していきます。