「営業から感謝される経験」がマーケの意識を変えた
祖谷:ステップ2でマーケ全員の意識を変えるにあたり、気を付けていたことはありますか?
泉:マーケに「営業から感謝される経験」を創出することです。たとえば「Adobe Marketo Engage」を使ったオンライン名刺交換システムの独自開発。これは、営業に見込みのお客様とのオンライン面談でコンタクト情報を入力してもらう仕組みです。Adobe Marketo EngageはCRMと連携しているので、入力内容はCRMにも自動的に反映されます。

泉:営業がCRMに入力する負担を減らせますし、マーケのメンバーは営業から感謝されたことが新鮮だったようです。そういう喜びがマーケ全員の意識を変えるきっかけになったと思います。
祖谷:「やらないと困るよ」と脅すのではなく、ポジティブな働きかけで組織を動かすことができたのは素晴らしいですね。
泉:困っている営業が一定数いたことは、幸運だったのかもしれません。前職を振り返ると、営業がマーケに相談に来る場面なんてほとんどありませんでしたから。勉強会では意識的に「デジマはこんなことに役立つよ」と訴えていたので「ならば相談してみようか」と思ってもらえたのだと思います。
時には喧喧諤々の議論になることもありますが、多くの営業とポジティブな未来を共有できたことは成功要因だったと考えています。またMAが単なるメール配信ツールではなく、手間を減らすツールとして営業担当者に認識してもらえたことも大きかったですね。
祖谷:泉さんの言葉からは「伝えたい気持ちの強さ」を感じます。その姿勢が営業に伝わったのかもしれませんね。
ホワイトペーパーでデジマの“顧客醸成力”を立証
祖谷:ステップ3の「営業のやりたいことを最短で叶える」では、具体的にどんな取り組みを行ったのでしょうか。
泉:まずは営業へのアンケートで「今、売るのに最も困っている商材」を尋ねました。その結果と過去の売上・利益の分析結果を合わせ、営業がアプローチしたいお客様領域と収益性が高い領域が重なる商材に焦点を当てたのです。
焦点を当てた結果、収益性が高い領域は競合他社の営業が強いため、経験の少ない自社の若手が苦戦しているのだとわかりました。そこでホワイトペーパーを制作し、営業資料兼若手の勉強材料として活用したところ、商談のリードタイムを半分まで短縮することに成功。リードからの受注率が48%に達した時は「デジタルマーケティングの“顧客醸成力”が社内で立証された」と感じましたね。
祖谷:今お聞きした取り組みが、ステップ4の「営業が欲しいリードに合わせたコンテンツを用意する」につながるわけですね。
泉:今まではコンテンツがない分、お客様のナーチャリングが十分にできていない状態でした。コンテンツがあれば、お客様が問い合わせをしてくる時点で「既に温まっている状態」と言えます。
結果が出れば、経営層も楽しくなります。マーケへの投資を引き出すには、経営層の理解を得ることが重要です。私は入社1年目でデジタル経由の受注額を158%伸ばしました。おかげで経営層とは良い関係を築くことができ、増員にも協力的に応じてもらっています。社長からは「全員が考える組織に変わった」という言葉をもらいました。