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戦略的に味方を集め、営業を高度化 USEN ICT Solutionsが稼ぐBtoB組織を作れた理由


 日本のBtoBマーケティングカルチャーは海外に比べると歴史が浅く、経験豊富なリーダーであっても組織運営に苦心することは少なくありません。特にチームの立ち上げ初期は、経営層からの支持獲得や、社内で発言力の大きい営業との連携が課題となります。USEN ICT Solutions(UIS)の泉善博氏は、2年前から全社横断の「営業高度化プロジェクト」を推進する人物。様々なアイデアで組織の壁を解消し、入社1年目にしてデジタル経由の受注額を158%伸長させたといいます。本記事ではアドビの祖谷考克氏が聞き手に回り、UISの取り組みや組織論を紐解きます。

営業との連携を強化し「俺の客」問題の解消へ

祖谷:まずはUSEN ICT Solutions(以下、UIS)の事業概要と、泉さんのお仕事内容から聞かせてください。

泉:「USEN」と聞くと音楽の会社を連想すると思いますが、UISはUSEN-NEXT HOLDINGS傘下の事業会社の1つで、法人向けにICT商材の販売と提供を行っています。私は2020年5月にUISへ入社しました。現在はデジタルマーケティング推進室長としての役割に加え、全社横断の「営業高度化プロジェクト」においてリーダーを務めています。

USEN ICT Solutions(USEN-NEXT GROUP) デジタルマーケティング推進室 室長 泉善博氏
USEN ICT Solutions(USEN-NEXT GROUP) デジタルマーケティング推進室 室長 泉善博氏

祖谷:営業高度化プロジェクトとは、具体的にどのような取り組みなのでしょうか。

泉:デジタルマーケティングツールを活用し、営業が今までアプローチできていなかった顧客との接点構築や、デジタル上での顧客醸成を目指すプロジェクトです。具体的にはWeb、メール、デジタル広告、ホワイトペーパーなどを使って顧客接点を増やすのですが、シナリオやコンテンツの作成にはマーケティング部だけでなく営業部も積極的に関わっています。

 プロジェクトのKPIは営業利益。投資のROIを厳密に見るので厳しい目標を背負っていると言えますが、2年度目にあたる今年度も達成できそうです。

祖谷:チームでのマーケティング実践とは別に、営業高度化プロジェクトを立ち上げた背景にはどんな問題意識があったのですか。

泉:前職の経験から「マーケ単独で営業の高度化を進めると、社内で孤立するリスクがある」とわかっていたからです。特に営業との連携がないと「なんでマーケが勝手にメールを送るんだ?」と、いわゆる「俺の客」問題にぶつかります。

 そこで社長に直談判をして、営業やインサイドセールスを含む各部署からエース級の人材を集め、30名程度のプロジェクト体制を組んだのです。現在は複数のワーキンググループに分かれて様々な取り組みを進めています。

祖谷:具体的にどのようなアプローチで営業の高度化に取り組んできたのでしょうか。

泉:次の4ステップに沿って進めていました。

ステップ1:理解者を作る

ステップ2:マーケ組織の意識を変える

ステップ3:営業のやりたいことを最短で叶える

ステップ4:営業が欲しいリードに合わせたコンテンツを用意する

営業のペインポイントを捉えた勉強会で社内理解を醸成

泉:ステップ1で力を入れたのが社内勉強会です。私が入社する以前、UISにプロモーションの部署はあったものの、マーケティング専門組織はありませんでした。その状況でデジタルマーケティング推進室という部署が突然できても、何をやろうとしている部署なのかが社内に伝わりません。そこで「デジタルマーケティングをやると何がどう変わるのか」「営業にどんなメリットがあるか」を理解してもらう活動に半年間注力したわけです。

 社内勉強会は全部で7回やりましたが、初回の参加者は10名程度でした。回数を重ねるごとに参加者が増え、最終的には100名を超えるまでに拡大。勉強会のおかげで、経営層にマーケへの投資を促す際「営業がやりたいと言っているのに、なぜやらないんですか?」と言える空気が醸成できたと思います。

祖谷:7回の勉強会について詳しく聞きたいです。参加者が10名から100名を超えるに至った要因はどこにあると思われますか。

泉:恐らく、テレアポ依存の営業スタイルに多くの担当者が疲れていたのだと思います。「デジタルを駆使して営業を高度化すれば働き方が楽になる」という社内理解が、参加者増につながったのではないでしょうか。

 たとえばホワイトペーパーをダウンロードする際に、お客様はコンタクト情報を入力してくれますよね。その情報を基にインサイドセールスがお客様の温度感を確かめ、営業担当者に共有。営業担当者がお客様を深く理解できていれば、営業トークの内容も変わるはずです。前職の経験から「何を訴えれば営業の気持ちが動くか」がわかっていたので、戦略的に動きました。

祖谷:営業のペインポイントと興味を理解した上で、賛同者を増やしていったわけですね。勉強会のテーマはどう決めていたのですか。

泉:勉強会が終わるごとに、アンケートを実施しました。良かったこと、イマイチだったこと、次に知りたいことなどを聞いたんです。アンケート結果から次のテーマが見えてくるので、次回のスケジュールを3週間後に設定する──このプロセスを繰り返しました。

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この記事の著者

祖谷 考克(ソタニ タカヨシ)

アドビ株式会社 DXインターナショナルマーケティング本部 執行役員 本部長広告会社にてマーケティング領域全般のプロデュース業務に約15年従事。ブランドマーケティングだけでなく、デジタルコミュニケーション戦略立案、施策最適化など、デジタル領域でのプラニング/プロデュース業務も担う。2013年よりアドビ...

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/06/10 10:45 https://markezine.jp/article/detail/39080

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