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みんなの悩み「ネタ切れ問題」を解消!ファンマーケティング視点で考える「持続可能なコンテンツ制作」とは

 CRMは企業のマーケティング手法として浸透しているが、これを単なる「ツール」として捉えていると、顧客との深い信頼関係を構築しづらい側面がある。シナジーマーケティング株式会社は、CRMを起点としたファンマーケティングを支援する中で、顧客と企業との関係性のあり方とその築き方について知見を深めている。本記事では、同社マーケティングプロデューサー 多々良史弥氏に、ファンマーケティングの具体的な実践方法を解説してもらった。

ファンマーケティングにおける「良いコンテンツ」とは?

 前回の記事では、“ファン”の捉え方や対等な関係作りに向けたCRM戦略の重要なポイント、また戦略立案時に有用なシナジーマーケティングの「ワークショップ型戦略策定プログラム」について企業事例とともに解説していただきました。

 一般的に「ファン」と言うと、エンターテインメント領域のように熱狂的なニュアンスを持つ「ファン」がイメージされやすいですが、「比較もせず何となくいつも買う商品」など、生活に根付いているという意味で「ファン」と呼べるものもあるのではないでしょうか? また、価格やスペック以外のものさしで選ばれる商品・サービスも「ファン」という関係性に近いでしょう。

 本記事のテーマは、ファンマーケティング。ファンを作り、エンゲージメントを高める上で重要な「コンテンツ」について、重要なポイントを紹介します。

MarkeZine編集部(以下、MZ):ファンマーケティングで欠かせないのが、「ファン化を促す熱量の高いコンテンツ」です。ただコンテンツに想いを込めればいいというわけでもなさそうですが、ファンマーケティングにおける「良いコンテンツ」とは、どういったものでしょうか?

シナジーマーケティング株式会社 マーケティングプロデューサー 多々良 史弥氏
シナジーマーケティング株式会社 マーケティングプロデューサー 多々良史弥氏

多々良:施策の目的に応じてそのコンテンツの役割や位置づけはそれぞれ異なりますが、特にファンマーケティングという視点に立った時に重要なのは「企業の人格が見えるコンテンツ」であるということです。

 「人格が見える」というのは、たとえば新製品のリリースを案内するコンテンツでは、製品の機能だけでなく、背景までちゃんと見えてくるかどうか。「なぜこの企業がこんな製品を?」と一瞬意外に思われるようなものでも、その背景や文脈がわかるとより腑に落ちて、魅力的に見えることがあります。そういったストーリーや文脈を活用できていない企業は多いので、意識的に見せていくと良いと思います。

MZ:「こんなところに興味はないだろう」と思って、発信していない企業も多そうです。

多々良:そうですね。ですが、ファンマーケティングにおけるコンテンツ作りでまず重要なポイントは、「コンテンツの良し悪しを最初から自分たちで判断しない」ことだと考えています。理由は単純で、何がお客様にウケるかはわからないからです。とてもニッチな情報に興味を持ってもらえるケースもあれば、逆に「これはいい!」と思ったコンテンツがそんなにはねなかった……というケースも度々目にします。

 いつの時代も口コミの情報信頼度が高いことからも言えるように、ユーザーはブランドが発信する“作られた”コンテンツよりも、ありのままのリアルさに共感します。その共感という顧客体験こそがファン化においては重要なステップになります。

持続可能なコンテンツ制作のポイント

MZ:熱量の高いコンテンツを作り続けるのは、とても大変だと思いますが、持続可能なコンテンツ制作のコツなどあるのでしょうか?

多々良:意外と重要なのは、「熱量の高いコンテンツ、良いコンテンツを作らなければ」と思わないことです。先述したように、コンテンツは出してみないと良し悪しがわかりません。コンテンツを出す手前で止まってしまっては、意味がないですよね。この前提を踏まえて、いくつかポイントをご紹介したいと思います。

持続可能なコンテンツ制作のコツ

1.ファンと同じように商品・サービスに触れる:自ら積極的に商品・サービスを利用することで、触れた瞬間、使用中、使用後とターゲットの感情がどのように動くかの解像度が上がる。また、社内外の関係者とも共通の体験を持つことが重要。

2.ペルソナを作成する:ペルソナを作成することで、コンテンツの企画意図を説明したり、チームメンバーの意見を聞いたりする時に、メンバー間の目線合わせがスムーズになる。また、意図をすり合わせることで、よりコンテンツの目的がはっきりと位置付けられる。

3.社内の最適な人員を探す:商品やサービス、ブランドへ愛を持っている社員の熱量をそのままコンテンツにのせる。

4.ファンにヒアリングする:ファンへのインタビューやファンミーティングを通してファンの声に傾聴する機会を設けることで、自社の人格を客観的に見ることができる。

「ネタ切れ」解消には「コンテンツの年間プラン」が有用

MZ:特に「ネタ切れ」は多くのマーケターにとって死活問題なのではないかと思います。

多々良:そうですね。ネタ切れに関して、まず行っていただきたい対策は、年間プランを立てることです。具体的なコンテンツの中身までプランを立てる必要はなく、「この時期にこういうメッセージを発信しよう」くらいにざっくり決めておくのです。

 こうして、年間を通してのバランスを俯瞰的に見て、イメージを持っておく。すると、具体的なネタはまだ思いついていなくても、日々の生活の中で触れた様々な情報が集約され、関連性のあるネタとしてつながっていくことが往々にしてあります。今すぐネタを発想するのは難しいので、早い段階で頭の中をスタンバイ状態にしておくイメージです。また、この年間プランを立てる時にもペルソナは有効です。「この月はAのペルソナに向けてコンテンツを作ろう」「次の月はBのペルソナ向けのコンテンツにしよう」といった具合ですね。

 そして、年間プランを立てる時に覚えておいてほしいのは、1年間すべてのコンテンツが新しいものでなくてもいいということです。要は、1月に使ったネタの切り口を少し変えて10月に使ってもいい。極端な話、常に新しいものを生み出す必要はなく、使い回すことを前提にプランを立てたほうがうまく回るでしょう。

即実践できる!新たな企画を創発していくテクニックも

MZ:現状としては「今月はどんなコンテンツを出そう」と悩んでいる方が多いように思います。だからこそ年間プランを立てることが大切なのですね。

多々良:そうですね。また、コンテンツのネタに困っているとはいえ、担当者の方はみなさんメモのような形でネタをストックしていると思います。そのネタのストックを自分だけのもので終わらせずにチーム内にシェアするというのも、新しいコンテンツを生み出すための1つのコツです。弊社でも、ネタのストックは社内のチャットで常時シェアしていますし、コンテンツ会議など定期的にシェアできる場も設けています。ちょっとしたことですが、こうしてシェアしておくと、1つの発想から連鎖的にどんどんネタが生まれるのです。

MZ:なるほど。それはすぐに実践できそうです。

多々良:その他にも、コンテンツそのものを工夫することで、新たな企画につながることがあります。コンテンツにファンを巻き込むというのは、鉄板の方法ですよ。たとえば、あるスポーツチームは、試合の前日に送るリマインドメールに選手への応援メッセージを受け付けるフォームを設置しています。こうしてメッセージの送り先があるだけで「自分の気持ちを選手に届けられた」という嬉しさがあり、顧客体験そのものの満足度向上にもつながります。スポーツチームのように熱狂的なファンがいる場合は特に、ファンの想いを受け取ることができる場所を用意しておくことが大切です。

コンテンツの「ネタ切れ」を解消するテクニックまとめ

1.コンテンツ作成・配信の年間プランを立てる

2.ペルソナ分類に応じてコンテンツを企画する

3.1つのコンテンツを一度きりでなく複数のタイミングで使用する

4.ネタのストックをチーム内で共有する

5.コンテンツにファンが参加できる余白を設ける

置き場所が間違っていることも。コンテンツの届け方にも意識を

MZ:作成したコンテンツを届けるときのポイントについても教えてください。「せっかく良いコンテンツがあるのに、届け方がもったいない」といったケースもありそうです。

多々良:コンテンツの置き場所を間違えてしまっているケースはよくあります。同じコンテンツでも置き場所によって印象はガラッと変わるので、チャネルの特性を理解して置き場所を決めることが大切です。たとえば「社長からのメッセージ」をコーポレートサイトに置くのと、noteやブログに置くのとでは、読者が感じる距離感がぜんぜん違いますよね。施策の目的やそのコンテンツで届けたいメッセージに応じて、コンテンツの置き場所は選んだほうが良いでしょう。

MZ:たとえば、メールとLINEだと、それぞれどのような違いがありますか?

多々良:メールは比較的クローズドな雰囲気を出しやすいため、親密感のあるコンテンツで表現することが可能です。逆にLINEは親密感はやや出しにくいのですが、即効性があります。ですので、担当者の想いを伝えるようなコンテンツはメールに、商品・サービスのキャンペーンなどいち早く知ってもらいたい情報はLINEにといった使い分けが考えられます。また、チャネル特性の理解だけではなく、成功の再現性がある施策を知っておくことも重要です。たとえば、弊社ではメールマーケティングにおけるノウハウを公開していますので、こちらも参考にしていただければと思います。

 また、媒体ごとの特徴を使い分けるだけでなく、コンテンツをマルチチャネルで展開するメリットも活かすと良いです。たとえば、「冊子にはこんなに素晴らしいコンテンツが掲載されているのに、なぜウェブに載せていないんだろう?」ともったいなく思うことが多々あります。

MZ:なるほど。ただ、こういったコンテンツの制作・配信は、多くの場合1~2人で役割を兼務しながら行われていると思います。そうなると、コンテンツ配信の管理は非常に大変そうです。

多々良:はい。人員が潤沢とは言えない中でファンマーケティングに取り組まれている企業が現状多く、コミュニケーションで必要なタッチポイントをすべて設計・管理するのは、なかなかに大変だと思います。そういった時に、弊社のCRMプラットフォーム「Synergy!」は有効です。「Synergy!」は、お客様の行動を自動で検知し、コンテンツ配信のタイミングとチャネルを自動で最適化することができます。たとえば、メールをお送りしても反応がないお客様に対しては、次はLINEをお送りするなど、チャネルをまたいだ最適化が可能です。

ファンマーケティング成功の最後の鍵は「強い組織」

MZ:ファンマーケティングの直接的な売り上げへの貢献を計測するのは難しく、いずれの企業でも長期的な施策になるので、経営層や社内の理解を得るのもまた難しいイメージがあります。ファンマーケティングの効果測定で、何か良い方法はありますか?

多々良:最も取り入れやすいのはNPS(ネットプロモータースコア)でしょう。ただ、NPS単体では要因まで追えません。そのため、我々は接触チャネルなどの行動軸や顧客の価値観軸、売上軸などをNPSと掛け合わせて相関関係を分析しています。すると、効果の高い施策やチャネルがわかってきますし、さらにペルソナごとに分析をすると、より施策の効果は見えやすくなってきます。

 そして、いずれにしても、トップや組織全体の理解がファンマーケティングにおいては非常に重要です。弊社が行っている「ワークショップ型戦略策定プログラム」もその一つですが、社内の各ステークホルダーと目的や取り組みの意義を共有するための活動は欠かせません。社内のいろいろな部署の方から理解を得ることで、社内でのファンマーケティングに対する意識が高まります。結果、忍耐強くファンに向き合う体制が整っていくと思います。

9月に開催されるMarkeZineのイベントでは、我々シナジーマーケティング自身がどのようにファンコミュニティを築いてきたか、取り組みの内容を赤裸々に紹介します。ぜひ、こちらの講演『CRMのプロが実践。自社の取り組みで見えたファンコミュニティの本当の価値とは?』も参考にしてください。

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この記事の著者

落合 真彩(オチアイ マアヤ)

教育系企業を経て、2016年よりフリーランスのライターに。Webメディアから紙書籍まで媒体問わず、マーケティング、広報、テクノロジー、経営者インタビューなど、ビジネス領域を中心に幅広く執筆。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2022/08/22 11:00 https://markezine.jp/article/detail/39332