意識ベースと行動ベース、それぞれのデータの特性
MZ:今回のデータを社内の方がご覧になった際の反応はいかがでしたか?
小島:アンケート調査のデータと行動データにはそれぞれ特性があると、社内で再認識できました。例えば、自動車と持ち家の購入意向について行動ログと意識ベースのデータを見比べてみます(下図)。

左側の行動ログを見ると、どのチャンネルのユーザーが自動車販売や住宅展示場へ足を運ぶ傾向が強いかがわかります。一方で、行動に至った目的や動機、潜在的なニーズまでは掴みにくいです。
対して右側の意識ベースの場合は、様々な尺度で質問を投げかけることで、潜在的なニーズや顧客心理を図ることができます。自動車であれば保有状況や購入意向、また何を重視するかという志向性や何が好きかという嗜好性、あるいはライフステージの違いまでを掴むことができます。しかし一方で、頻度やモチベーションの強さまでは把握しにくいところがあります。
ここから見ても、明らかに顕在化しているユーザーを可視化したいなら行動データ、ターゲットと考えられる人も含めて幅広く可視化してリーチしたいならアンケート調査、といった形で目的によって使い分けることの有用性は高いです。また、その2つを組み合わせることで、顧客心理と行動との相関性を含めて、奥行きある情報を可視化することも有意義だと感じます。
「どんな人が、どこで、どのように視聴しているか」把握する意味
MZ:小島さんは、視聴データと行動データを掛け合わせることで視聴者の解像度を高め、結果的に広告主や代理店に対してABEMAの媒体価値を伝えたいとお考えとのことでした。データを見て、この点はいかがですか?
小島:今回の視聴者特性のように、各コンテンツにどのような人がいるか、どんな見られ方をしているかの可視化はABEMAに限らず、メディア業界全体で必要だと考えています。
その理由は2つあって、1つ目にインターネット上でのプライバシー環境の変化があげられます。Cookieの利用制限やiOSのトラッキング制限により個人データの規制が強化される中で、「個人」を追い回すターゲティングは受け入れられづらくなってきました。今後は「コンテンツ」単位で、ターゲットに近しい人たちにリーチできる有効性をしっかり証明して、伝えていくことに価値があると思います。
もう1つが、コネクテッドテレビに代表されるように、メディアの数もデバイスの数も増えていて、ユーザーのコンテンツ消費のあり方が急激に変化している点です。先程も触れた通り、マーケターの方々は長年の経験から、このジャンルのコンテンツにはこの業種の広告が最適であるといったイメージを持つことも多かったかと思います。しかし、メディアやデバイスの多様化によりユーザーのコンテンツ消費のあり方が日々変化している今、「ターゲットがどこにいるのか」がわかりにくくなっていると感じます。複雑化する視聴者像をより高解像度で伝えることは、以前に増して重要になってきていると思います。
このような変化に対応する手段の1つとして、今回の視聴データと行動データを掛け合わせて、追求して深掘る価値は大きいと感じています。