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複雑化する視聴者像をいかに捉えるか?ABEMAとunerryが視聴データ×行動データから探る

 ABEMAの各チャンネルにいる視聴者の解像度を上げられないか? そう考えたAbemaTVの小島氏は、unerryの星氏とともに視聴者データとリアル行動データを掛け合わせる試みを実施した。データを掛け合わせて顧客理解を進める有用性を両氏に伺った。

視聴データ×行動データでユーザーの解像度を高める

MarkeZine編集部(以下、MZ):今回の取り組みは小島さんからの相談がきっかけだと聞いています。小島さんがリアル行動データの活用を考えた狙いは何でしょうか?

小島:ABEMAはアニメやスポーツ、恋愛番組など約20チャンネルが常設されているバーティカルなメディアです。そのため、各チャンネルにはどのような視聴者がいるのかをきちんと調査した上で、業界の皆さんに知っていただくことが非常に重要です。今まではアンケート調査を中心に視聴者を把握してきましたが、そこに行動データを加えることで視聴者の解像度がさらに高められるかどうか、その可能性を探りたいと考えました。

株式会社AbemaTV ビジネスディベロップメント本部 プロダクトマーケティングスペシャリスト 小島 功氏
株式会社AbemaTV ビジネスディベロップメント本部 プロダクトマーケティングスペシャリスト 小島 功氏

 私は広告によるマネタイズを担う部門に所属しているので、今回は広告主や代理店に対してチャンネルごとに存在する多様な視聴者を、具体的なイメージで伝えることをゴールにしています。ブランドにとってターゲットになり得る人々がABEMAにいることを知っていただくチャレンジの一環ですね。

MZ:unerryさんにとっては、今回の取り組みはどういった立ち位置になるのでしょう。

星:unerryはリアル行動ビッグデータのプラットフォーム「Beacon Bank」を運営しています。我々の持つデータと、他のデータを掛け合わせることで価値を高めていく意味は大きいと思っています。

MZ:今回使用したデータはどのようなものですか?

星:Beacon Bankが蓄積しているリアル行動データ、中でも「行動DNA」と呼ばれる、我々独自の指標を主に使用しました。これは、リアルな世界におけるユーザーの行動嗜好性を偏差値形式で表現するものです。例えば、スーパーによく行く人や、外食にあまり行かない人、外食の中でもよくファミレスに行くけれど回る寿司にはあまり行かない人といった嗜好性が約150項目で見られる点が特長です。

株式会社unerry Beacon Bank事業部 星 雄大氏
株式会社unerry Beacon Bank事業部 星 雄大氏

 世の中には様々なデータがありますが、行動データは実際に足を運んでいるデータなので、無意識の行動や、インサイトがにじみ出る要素が強いと考えています。嗜好や予兆を分析できるので、視聴者像の解像度を上げる観点でも有用なデータです。

小島:ABEMAに関しては、ジャンルごとのユーザーの違いが見たかったので、視聴ジャンルごとにデータをまとめたものを用意しました。チャンネルが約20種類ある中でジャンルは大きく括ると7~8つ程ありますが、今回はその中からいくつか絞って、unerryさんと連携させていただきました。

視聴者がアクティブな傾向の高いジャンルとは

MZ:実際にデータを掛け合わせた結果はいかがでしたか?

小島:コンテンツターゲティングの役割の可能性を改めて見直す機会になったと強く感じています。従来、アニメチャンネルはアニメやゲーム周辺のブランドの広告だけが最適、スポーツチャンネルはスポーツ周辺のブランドの広告だけが最適と思われがちでした。でも、コンテンツごとに偏るデモグラや趣味嗜好など視聴者の特性をうまく捉えるという考え方においては、他にも相性の良い業種やブランドが、実は存在します。定期的にアンケート調査を行う中で、コンテンツによって視聴者の特性に違いが見られてはいましたが、今回の行動データ上でも、その違いを裏付けるデータがいくつか見られたことは有意義でした。

 一例ですが、下の図はモテ消費やご褒美消費について分析したもので、左側がABEMAのアンケートによる意識調査ベースの結果、右側が今回unerryさんに取っていただいた行動ログの偏差値です。

クリックすると拡大します。
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 意識調査では、アニメや恋愛番組を見ている女性は、「キレイ・可愛いと思われたい」「自分にご褒美をあげたい」という行動や購買動機が比較的強い傾向が見られていました。今回行動ログを取ってみたところ、両2つのチャンネルの視聴者はアクセサリーショップやハンドバッグ店へ行く偏差値が高いとわかりました。少なくとも、身なりに気を使っている人が多い傾向にあると考えられます。

 このように行動データを掛け合わせることで、元々感じていた視聴者特性の違いや、「このチャンネル視聴者にはこの業種が強いのではないか」という仮説に説得力を持てました

MZ:アウトドア派/インドア派の結果を見ると、アニメチャンネルの視聴者はアクティブな印象を持ちました。

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小島:そうですね。今回の行動データ上では、アニメジャンルを見ている人が、スポーツ施設や鑑賞施設、観光スポットや宿泊施設などに足を向けている=アクティブな傾向が見られました。以前は特定の人たちに楽しまれているものというイメージも強かったアニメですが、今では幅広い人たちに親しまれるカルチャーで、外出頻度が高く様々なことに興味を持ってアクティブに動いている人たちも多く楽しんでいる、という示唆が得られました。今後の調査や分析に向けて、改めて参考になったと感じます。

星:アニメは聖地巡礼や企業コラボといった要素もあるので、そこが行動に出たとも考えられます。行動データは視聴者像をくっきりと描く際に価値を発揮できると感じましたね。

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MarkeZine編集部(マーケジンヘンシュウブ)

デジタルを中心とした広告/マーケティングの最新動向を発信する専門メディアの編集部です。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2022/07/29 08:00 https://markezine.jp/article/detail/39426

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