“知名度”がなくても、SNSではモノが売れる?
生活者が購買に至るプロセスを表す「購買ファネル(パーチェスファネル)」においては、一般的に「認知→興味→比較検討→購買」といったように、まずは「認知」を獲得するところからスタートすると考えられています。そのため企業のマーケティング活動においては「認知率=知名度」が重要な指標となっています。
しかし前述の「SNSが購買に直結する」という事象においては、認知率が高くないブランドや商品でもヒットが生まれています。つまりSNSにおいては従来の購買ファネルとは異なる購買行動が起きているのです。
その要因はSNSの「レコメンド機能」の精度が向上していることにあります。たとえばTikTokでは、ユーザーのコンテンツに対するリアクションや完全視聴などの情報をもとに、おすすめの投稿が選定されています。
またInstagramでは、ユーザーがリアクションをとったコンテンツと関連性の高いコンテンツや、投稿者とユーザーのやり取りの履歴からユーザーが興味を持ちそうな投稿がレコメンドされます。
そしてYouTubeでは、動画のクリック数やユーザーの動画の総再生時間から、ホーム画面に表示されるコンテンツが決められています。
これらの機能により、SNSではユーザーが一定のスクリーニングがされた「興味がある」情報にしか接触しないようになっています。そのため、SNSにおける購買ファネルは「認知」ではなく「興味」からスタートするのです。
SNSでの購買へのトリガーは「疑似体験」
「認知」で始まる購買ファネルにおいては、最重要課題は「認知」から「興味」に移行させるための「自分ゴト化」であり、生活者から「好感」や「共感」を得られるようなコミュニケーションやコンテンツが必要とされます。
一方で、「興味」から始まるSNS購買ファネルにおいては、その次の「比較検討」をいかにデジタル上でリアルタイムに完結させられるか、という商品の「疑似体験」が重要となります。その疑似体験にリアリティがあればあるほど、ダイレクトに購入にまでつながりやすいのです。
そしてこのSNSにおける「疑似体験」に最も有効な手法が、近年注目を集めている「ショート動画」なのです。ショート動画と聞くとTikTokのイメージが強いかもしれませんが、最近では、「Instagramリール」や「YouTubeショート」など、TikTok以外のプラットフォームでも利用者が急増しています。