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コロナ禍前後でアプリ市場はどう変わった?DeNAとタイミーのマーケターが事業の成長を振り返る

 コロナ禍は多くの業界や企業に影響を及ぼしたが、逆境を乗り越えようと試みを重ねた結果、大きな躍進を遂げたサービスも数多く存在している。ライブコミュニケーションアプリ「Pococha(ポコチャ)」と、スキマバイトのマッチングサービス「タイミー」はその好例だ。2022年9月1日(木)、AdjustとLiftoffが共同主催した船上イベント「BEER ON A BOAT」に両サービスのマーケターが登壇。「コロナ前後で変わったユーザーの動向と業界の変化」をテーマにパネルディスカッションを繰り広げた。本記事では当日の様子について紹介する。

異なるバックグラウンドを持つモバイルマーケターが集合

天野(Liftoff):本セッションのモデレーターを務める天野です。LiftoffはDSPとして、インストール広告やリエンゲージメント広告をアプリ広告主様に向けて提供しています。

Liftoff Mobile Senior Country Manager Japan & Korea 天野耕太氏
Liftoff Mobile Senior Country Manager Japan & Korea 天野耕太氏

天野(Liftoff):Liftoffは2021年、Vungleという会社と合併しました。Vungleは元々ビデオが強かったり、アプリパブリッシャー様のマネタイズを支援していたりと、Liftoffにはない強みを持っています。そのため、今後は広告主様、パブリッシャー様、ゲームデベロッパー様とより広いお付き合いができるチームとして活動していく所存です。

川口(DeNA):私は新卒でDeNAに入社し、2012年からマーケティングに従事しています。「モバゲー」というブラウザゲームのプラットフォームや様々なアプリのデジタルマーケティングに携わった後、2016年からはゲーム事業のデジタルマーケティングの責任者を務めていました。直近では、ゲーム以外も含めた全社のマーケティングを担う組織に所属し、様々な事業のマーケティングに関わっています。

DeNA マーケティング統括部 マーケティングサービス部 副部長 川口 隆史氏
DeNA マーケティング統括部 マーケティングサービス部 副部長 川口 隆史氏

中川(タイミー):私は広告代理店のプランナーとして約7年間働いた後、事業会社に移りました。現在は代理店と事業会社のキャリアが半分ずつぐらいです。

タイミー 執行役員 CMO 中川祥一氏
タイミー 執行役員 CMO 中川祥一氏

中川(タイミー):最初に勤めた事業会社は、JapanTaxiというタクシー配車アプリの会社。DeNAの「MOV」というアプリは当時、バチバチの競合でした(笑)。ちなみに今は二つのサービスが合体し、仲良く「GO」というアプリになっています。その後はメルカリを経て2020年3月にタイミーへ入社。スキマバイトのマッチングサービス「タイミー」のマーケティングを統括しています。

佐々(Adjust):私は2000年、三井物産のオンラインショッピングモールプロジェクトからデジタル業界に入りました。後に会社がヤフーに買収され転籍しましたが、外資のスタートアップも複数経験し、サーチやリターゲティングやDMPなどに関わりました。

Adjust ゼネラルマネージャー 佐々直紀氏
Adjust ゼネラルマネージャー 佐々直紀氏

佐々(Adjust):その後、モバイル計測ツールを提供するTUNEを経て、2016年11月からAdjustに入社しました。モバイル計測分野での経験は今年で7年になります。

テレビCM経由のアプリインストールが測定可能に

佐々(Adjust):私からまず、モバイル業界の最新トレンドをいくつか紹介させてください。昨今、QRコードの活用が急速に広がっています。活用方法は様々ですが、たとえば店頭におけるアプリへの誘導施策はかなり浸透してきた印象です。最近ではテレビ番組内でも頻繁に活用されています。

 次に紹介するトレンドは、コネクテッドテレビ(以下、CTV)の活用です。最近は「ABEMA」や「TVer」などのサービスで広告を配信する際、CTVからモバイルのアプリ、つまり手元のスマホへのインストールの効果測定ができるようになっています

 Adjustではビデオリサーチさんと提携を行い、地上波テレビCMのインストール効果計測機能もリリースしました。地上波でCMが放送された直後に放送地域でインストールが発生した場合「テレビCMがインストールに貢献した」と見なすわけです。テレビCMがインストールを促したであろうユーザー群を抜き出すことで、他のデジタルマーケティング経由のユーザーなどと継続率やLTVを比較できます。

 この仕組みを用いてテレビCMとオーガニックの計測率を比較した結果、テレビCMのほうが高い計測率を示した事例もあります。当社としては、今後もあらゆる広告を一つのプラットフォームで比較分析できるよう、マーケターを支援して参ります。

コロナ禍でユーザー数が激増したPococha

天野(Liftoff):ここからは、川口さんにお話を伺っていきます。コロナ禍はネガティブ/ポジティブを問わず、ビジネスに様々な影響を与えました。コロナ禍前後で御社のビジネスにどのような変化が生じたのでしょうか。

川口(DeNA):受けた影響はサービスによって異なります。プロ野球など、オフラインと密接に関わる事業はやはり厳しい面もありました。ゲーム事業はそこまで大きな変化はなく、変化が最も大きかったのはライブコミュニケーションアプリのPocochaです。緊急事態宣言のタイミングで、ユーザーが劇的に増えました

川口(DeNA):Pocochaは、ライバーが簡単にライブを配信でき、それを見たリスナーはコメントやアイテムを使用し、ライバーの配信を盛り上げることができるサービスです。一般的なライブ配信サービスとの違いは、ライバーとリスナーのコミュニケーションだけでなく、リスナー同士のコミュニケーションも重視する設計思想にあります。

 たとえば「一人のリスナーがたくさん応援する状態」よりも「多くのリスナーが皆で応援する状態」を良しとする設計になっていたり、リスナー同士がコミュニケーションできるチャットツールのようなものが用意されていたりと、ライバーを軸にリスナーの居場所となるコミュニティを作る仕組みとなっています。この仕組みが交流機会の少ないコロナ禍にフィットしたのではないでしょうか。最近発表したカルチャーデックを見ていただくと、Pocochaの設計思想や大事にしていることがより詳細に伝わると思います。

サービスの特徴に合わせたマーケティングを

天野(Liftoff):緊急事態宣言の時期には、海外のライブ配信会社のOOHをたくさん見かけた記憶があります。競合他社の動きは意識されていましたか。

川口(DeNA):もちろん意識していました。しかしながら先ほど申し上げた通り、Pocochaの設計思想は他のライブ配信サービスと少し異なります。多くのライブ配信サービスでは、芸能人のような目立つ人がいて、その人の元に多くのリスナーが集まる構造を呈しています。一方Pocochaの場合はスターを作るというより、一般の人を応援するファンを集め、小さなコミュニティをたくさん作る構造を目指しているんです。

 提供している本質的な価値が違うこともあり、競合の動きは参考にしつつも「自分たちのサービスにマッチするか」を判断軸にしていました。ゲーム事業に関わっている時ほど強く意識している感じではなかったですね。

天野(Liftoff):感染者数拡大の波が落ち着き、コロナ禍の終焉も意識される世の中になりつつあります。現在のPocochaはどのようなフェーズにあるとお考えですか。

川口(DeNA):コロナ禍が始まった頃に見られた、急激なユーザー増のような状況は落ち着いてきました。ただ、DAUやMAUについては引き続き伸びを維持できています。この伸びはコロナ需要がもたらした恩恵ではなく、集客を強化している成果と、プロダクトの価値がユーザーに受け入れられている結果だと認識しています。

天野(Liftoff):川口さんはゲームマーケティング時代の経験や知識を、ライブ配信サービスや非ゲーム事業でどのように活かされていますか。両者の違いや共通点があれば教えてください。

川口(DeNA):デジタル広告・プロモーションの経験やノウハウは活きていると感じています。マーケティングの基本的な考え方や、効果を上げるための細かい留意点は共通する部分も多いです。一方で、事業によってはプレイが基本無料のゲームアプリとは違った視点で考えなければいけないことも多いと感じています。

 我々の組織では、ゲームやライブ以外にも様々な事業のマーケティングに関わっています。サービスが違えば効果的なプロモーションも当然異なる。たとえば、エリアが限定されていて広告接触と利用者のニーズが発生するタイミングがずれるカーシェアサービスやタクシー配車サービスの場合、ポスティングが効果的だったりと、サービスの特性に合わせて考え方を柔軟に変えていかなければならないと感じています。様々なタイプのサービスと関わることができる点は、マーケターにとって非常にチャレンジングで面白いです。

案件激減のピンチから相性抜群の新規市場を開拓

天野(Liftoff):続いて中川さんにお話を伺います。コロナ禍前後でビジネスに変化はありましたか。

中川(タイミー):大きく変わったのはタイミーのユーザー構成です。2019年当初はユーザーの30%を学生が占めるサービスだったのですが、現在では副業を望む会社員やパート・アルバイトの層がメインとなりつつあります。

スキマバイトのマッチングサービス、タイミーのサービスサイトTOP
スキマバイトのマッチングサービス、タイミーのサービスサイトTOP

中川(タイミー):ユーザー構成だけでなく、職種も大きく変わっています。コロナ禍以前は掲載案件の9割が飲食のホールスタッフでした。ところが、2020年4月の緊急事態宣言以降、飲食店におけるアルバイトの求人案件が激減したのです。

 そこで新たにアプローチしたのは、梱包・ピッキング・軽作業などを行う物流系の企業様です。取り組みを進める中で、タイミーが物流業界にもプロダクトマーケットフィットしていることがわかりました。飲食店が必要とするアルバイトの人数は週末に1~2人/店舗。一方、物流倉庫のスタッフは1日に100人が必要なケースもあります。オンラインで買い物をする人が増えたことで物流業界の求人が爆増し、タイミーを活用いただく機会も増えていきました。

 現在は掲載案件の6割が軽作業の求人です。最近は規制緩和によって外食の需要も戻り、当社としては嬉しい状況が続いています。コロナ禍で短期的にはネガティブな影響を受けたものの、結果的には案件のパイが増えてポジティブに転じました。現在登録ワーカー数は300万人を突破し、募集人数はコロナ禍以前の4倍程度まで伸びています。

多様化する価値観を捉え、ユーザーの離脱も恐れない

天野(Liftoff):コロナ禍でも堅調にビジネスを成長させていて素晴らしいです。そんな御社のマーケティング手法について、詳しく伺えますか。

中川(タイミー):あまり奇をてらった手法は選んでいないですね。基本的にはデジタルマーケティングを中心に、テレビCMなどを需要期といわれる春・夏・年末にピンポイントで打ち込む感じです。

天野(Liftoff):タイミーのようなマッチングサービスにおいては、仕事が見つかったユーザーの離脱を避けては通れません。ユーザーの離脱についてはどのように捉えていらっしゃいますか。

中川(タイミー):あるワーカーが同じ飲食店で働きたい場合、一般的な単発バイトサービスですと求人案件から都度その飲食店とマッチする必要があります。しかしながら、タイミーではお店側からワーカーに対して直接お声がけいただく、いわゆる“引き抜き”を最初からOKとしているんです。ご自身に合った就業環境を見つけて固定バイトにする方もいらっしゃいますし、複数の就業場所を好んでタイミーを使い続けてくださる方もいらっしゃいます。

 働き方に対する価値観が多様化する昨今。ワーカーの好みや傾向にコミットすれば、より精度の高いマッチングが実現できると考えています。今後もプロダクトのメンバーと一緒にサービスを磨き上げていくつもりです。

天野(Liftoff):川口さん、中川さん、貴重なお話をありがとうございました。

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この記事の著者

坂本 陽平(サカモト ヨウヘイ)

理系ライター、インタビュアー。分析機器メーカー、国際物流、商社勤務を経てフリーランスに。ビジネス領域での実務経験を活かし、サイエンス、ODA、人事、転職、海外文化などのジャンルを中心に執筆活動中。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2022/11/07 10:30 https://markezine.jp/article/detail/40030