昔の“おままごと”のように、純粋に美容を楽しんでほしい
磯山:DINETTEさんは、美容メディア「DINETTE」とD2Cのオリジナルコスメブランド「PHOEBE BEAUTY UP」を展開していらっしゃいます。異なる2つの事業を通して、ブランドや世界観をどう作り上げてきたのかをお聞きできればと思っています。
まず、ミッションに掲げている『Be “ME” 「私らしく生きる」を叶える。』に込められた思いやこだわりを聞かせてください。
尾﨑:私が起業した2017年頃は、美容メディアといえばプロのヘアメイクさんがモデルさんにメイクをするようなコンテンツがメインでした。一般の女の子が気軽に真似できるコンテンツがあまりなかったんですね。
そこで、メイクのやり方や悩みの解決方法をわかりやすく動画にしたのが、メディア「DINETTE」の始まりです。「動画を真似するだけでなりたい自分になれる」という意味合いがテーマに込められています。
磯山:「DINETTE」という名称はどんな意味なんですか?
尾﨑:DINETTEはフランス語で「おままごと」という意味なんです。小さい頃にお母さんがメイクしているのを真似した経験のある人は多いと思います。大人になってもあの頃のようにわくわくしながら美容を楽しんで、自分のことを好きになってほしいという思いで名付けました。
磯山:メディアから始まり、コスメブランド事業という異なる領域に進出するのは結構大きい決断だったのではないですか。
尾﨑:起業した当時から、オリジナルのコスメを作りたいと思っていました。でも、大学生が起業していきなり化粧品を作っても、売れないのは目に見えています。まずは、自分が得意なSNS運用のスキルを活かして、メディアをファンコミュニティとして機能させることから始めました。そして、そこに集まってくれたお客様の声をもとにプロダクトを作っていきました。
泥臭さと華やかさの両軸で生まれたブランド
磯山:これまでの事業展開で大変だったことはありますか?
尾﨑:1年目はメディアの売上や規模が順調に伸びたんですが、2年目にマネタイズが伸び悩んで、新規営業のために数多くのメッセージや電話をしていました。
磯山:メディアのマネタイズって非常に難しいですよね。泥臭く営業をするしかない。
尾﨑:メンバー数人と必死に営業活動をしましたが、それでも取れる件数には限りがあります。「オリジナルブランドを作りたいなら、このままメディアだけをやっていてはダメだ」と思い始めたのもこの頃です。
それでブランド立ち上げを決めたのですが、メディアのマネタイズの成長性からVCには断られ、銀行からの融資を元手にやっと2019年にPHOEBE BEAUTY UPをリリースできました。そこからは順調ですが、2018年は本当にキツかったです。
磯山:順風満帆に見えるブランド立ち上げの背景には、とても苦しい時期があったんですね。
尾﨑:実はPHOEBE BEAUTY UPを立ち上げる前に、M&Aの話もいただいていたんです。正直、心が揺れました(笑)。でも、やりたかったオリジナルブランドにもまだ挑戦できていないし、やはり自分たちでチャレンジしたいという思いが強くて、結局お断りをしてPHOEBE BEAUTY UPの立ち上げに挑戦しました。
磯山:そのとき挑戦することを選んだからこそ、今の成長につながっているということですね。愚直で泥臭い土台作りとユーザーが憧れる華やかな世界観、両軸で作られているブランドなんだと感じて、とてもわくわくしました。