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MarkeZine Day 2023 Autumn(AD)

たとえインターネットがなくなっても、戦略は変わらない。変化に負けないマーケティングの進め方とは

 デジタルマーケティングの世界では、テクノロジーや環境の変化と無縁ではいられない。変化に対応するために、予期せぬ出費や社内リソースのひっ迫といった課題に迫られるマーケターも多いのではないだろうか。MarkeZine Day 2023 Autumnに登壇したルシダスの池上ジョナサン氏は、そういった現場の課題に対して、戦略策定の段階から有効な手だてを伝授。デジタル環境の激変にも耐える戦略構築について論じた。

テクノロジーがもたらす「前向きな変化」と「後ろ向きな変化」

 サードパーティCookieの規制強化やGoogleの検索アルゴリズムの変更など、近年のデジタル環境やテクノロジーの変化は枚挙にいとまがない。このような変化について、マーケティング戦略コンサルティング会社・ルシダスの創業者である池上氏は、「前向きな変化」と「後ろ向きの変化」の2つがあると語る。

 まず前向きな変化とは、デバイスのバージョンアップなどで従来と比べて対応の必要がなくなるといった、“発展的な更新”を指す。

 「新しいものに対応することで古いものが不要になる。たとえば、現在はHTMLメールが表示できないデバイスはないため、テキストメールの装飾などに費やしていたリソースが要らなくなります。こういった変化は前向きなものです」(池上氏)

株式会社ルシダス 代表取締役 マーケティングロックスター 池上ジョナサン氏
株式会社ルシダス 代表取締役 マーケティングロックスター 池上ジョナサン氏

 一方で後ろ向きの変化とは、テクノロジーの変化自体ではなく、その影響によるものを指す。例として、自社の根幹事業がサードパーティCookieを使ってリターゲティング広告を打つことによって売り上げが成立するものだったとしよう。Cookie規制・廃止への風潮が加速する中、リターゲティング広告以外のまったく新しい売り方を模索する必要が生じるために、大きくリソースを割く必要に迫られるだろう。

 「その機能が自社の施策に重要で、かつその施策が事業の根幹を成すような大きな役割を担っているにもかかわらず、機能の恩恵が減少したり使えなくなったりしてしまう。そういったビジネスへの負の影響が非常に大きいものは後ろ向きの変化です」(池上氏)

テクノロジーの変化でダメージを受ける要因とは

 変化に対応する形で更新・調整すれば使える機能であればまだしも、使えない方向へと進んでいるテクノロジーに依存したままでは、軌道修正のためにリソースが大きく奪われてしまう。このような状態では、テクノロジーの変化によってダメージを負ってしまうのだ。

 テクノロジーの変化による具体的なダメージとしては、「SEOのアルゴリズムが変わり、急にオーガニックビジターの流入数とPV数が激減」「サードパーティCookieの規制でリターゲティング広告が使えなくなる」「ファーストパーティCookieの有効期間が短くなり、マーケティングオートメーションの個人追跡が台無しになる」などが挙げられる。

 これらの変化であまり打撃を受けていない企業がある一方で、非常に大きなダメージを負ってしまう企業も存在する。テクノロジーの変化によってダメージを負ってしまう根本的な原因は、「全体戦略がないまま、個別施策に傾倒しているため」だと池上氏は指摘する。一貫性のある戦略があれば、テクノロジーの代替案も比較的見つけやすくなるという。

 テクノロジーの変化に影響を受けないため、企業はどのようにマーケティング戦略を組み立てていけば良いのだろうか。

“マーケティング戦略があるつもり”になっていないか

 マーケティング戦略を考えていく上で最も重要なポイントは、戦略と施策を混同しないことだと池上氏は強調する。

 「データをいくらそろえても、方向性がそろっていなければ目指すべき姿は見えてきません。自ら『戦略はありません』という会社は少ないでしょうが、『戦略があるつもり』になっている会社は多いといえます」(池上氏)

 戦略と施策の違いについて、戦略は「アクションをともなわず顧客化までのステップを示したもの」だという。たとえばメール配信・広告出稿・コンテンツ制作、これらはすべてアクションをともなうため、戦略ではなく施策にあたる。「当社の戦略は広告から顧客を取ってくることです」と掲げている場合も、それは戦略ではなく施策なのだ。

 また、全体戦略と個別ステップの違いについても池上氏は言及。たとえば全体戦略の中に「ブランド認知を高めること」があったとしよう。マーケティング部門がそのための活動に取り組もうとしても、営業側から「ブランドが認知されたからといってすぐに商品が売れるわけではない。先にやるべきことが他にあるのでは」と主張されてしまう。

 これは、ブランド認知が施策全体にどのような影響を与え、認知が広がることでその後のステップがどのように変わるのかというシナリオ、つまり戦略の個別のステップ部分が明確化されていないのだ。だからこそ、共通見解が見いだせなくなってしまうと池上氏は説明する。

売り上げに直結しない施策に取り組むべき理由

 続いて池上氏は、マーケティングの全体像を図示した。左端が時系列の入り口にあたり、顧客と最初に接点を持ったタイミングだ。右端が時系列の出口にあたり、顧客が購入あるいは契約したタイミングになる。

 社内に営業組織や店舗があれば、この間に「営業送客をする」や「来店してもらう」というポイントがあり、マーケティングの仕事は基本的にそこまでとなる。一方で営業組織や店舗を持たず、顧客自らがサイトを訪問してほしいものを購入するECのようなケースでは、マーケティングは時系列の全体をカバーすることになる。

 この時系列の長さやステップの数は企業や業態、ニーズによって変わる。共通しているのは、図の左側になるほど売り上げに直結しにくい活動になるということだ。ブランド認知もその一つであると池上氏は語った。

 では、なぜ売り上げに直結しない活動にも取り組まなくてはならないのか。ここで池上氏は、下図のファネルを示した。上部分が初期接触、下部分が購入だ。

マーケティングの全体像。上部分が初期接触、下部分が購入。真ん中は購入につながるステップを指す。
マーケティングの全体像。上部分が初期接触、下部分が購入。中央は購入につながるステップを指す。

 このファネルの広がりは、どれくらいの見込み顧客と接触するかのポテンシャルを示す。ステップが進んでいくにつれて人数が減り、最終的に購入者層となる。裏を返せば、上部のポテンシャルのある人数を増やすほど、下部もおのずと広がるのだ。

 「『今日買ってくれる人を見つけてきなさい』というのは難しいですが、『自社製品に興味を持っているかもしれない人に向けて、何か施策をやりましょう』は比較的取り組みやすいのです」(池上氏)

最初から理想通りにいかなくとも、戦略を立てておくべきわけ

 ルシダスの提唱するマーケティング戦略は、一番上が「リード獲得」となり、そこから「Cold」「Warm」「Hot」とリードをナーチャリングしていく。その先に「MQL(Marketing Qualified Lead)」「SAL(Sales Accepted Lead)」があり、「商談」「顧客化」へとつながっていく流れだ。

 顧客と接する「リード獲得」から、営業やインサイドセールスに送客できる状態になる「MQL」までの領域が、同社におけるマーケティングの担当領域だという。

 このモデルの元、各ステップを回すためにルシダスが行っていることが、エンゲージメントマーケティングだ。コンテンツによって見込み顧客と接触しながらマーケティングを展開していく形が基本的な骨子となる。しかしマーケティング戦略のコンサルティング会社である同社自身、はじめから理想通りにできていたわけではなく、現実とのギャップがあったと池上氏は振り返る。

 「創業時からマーケティングにはMAツールを、営業にはCRMを導入してそれぞれ連携させていました。マーケティング部門でナーチャリングされたMQLが自動的に営業のCRMに入り、インサイドセールスへ連絡を入れるように伝えるのが理想です。しかし社内プロセスとして確立されていませんでした。コンテンツマーケティングをしているといえど、初期のコンテンツ量は少ない。理想の姿に最初からなれる、戦略を立てればすぐ実行できるものではありませんでした」(池上氏)

 それでも、理想の姿とそのためのステップを作らなくてはいけない理由は、モデルや戦略を持つことで自分たちは今どこを目指すべきなのかが可視化されるからだ。「売り上げなどの目的を阻害する最大のボトルネックがどこにあるのか。それを見極めることで、重要度の高い部分へ施策を打って出ることができます」と池上氏。これによりルシダスは数年間かけて、入り口から出口まで一貫したプロセスを完成させたという。

たとえインターネットがなくなっても、戦略は変わらない

 はじめに触れたテクノロジーの環境変化に振り回されないためには、戦略を確立させることが重要になる。ルシダスの戦略は、「役立つコンテンツで顧客との接触を深める中で、徐々に顧客理解を進めていき、機会創出をしていくこと」だ。全体の戦略に合わせて個別の施策を考えていくことで、前述のような外部環境の変化にもダメージはないという。

 変化の一つとして、Googleの検索アルゴリズムのアップデートがある。これは特定のキーワードをわざと盛り込んだりリンクの数を増やしたりと、小手先で検索順位を上げようとするコンテンツを排除して、有用な情報の順位が上がるようにしているのだ。

 「ルシダスでは『お客様が知りたいこと・興味を持っていること』をコンテンツ開発の基本に置いています。だからこそアルゴリズムが変わっても、検索エンジンが有用な情報をユーザーに届けるというゴールを持っている以上、コンテンツを上位に表示させることができます。一般的なSEO対策はしていませんが、見込み客となりそうな人たちには頻繁に高順位の検索結果が出ます」(池上氏)

 サードパーティCookie規制に関しても同様だ。そもそも同社ではリターゲティング広告を打っていない。それ以前の問題として、顧客が嫌がることはやらないのだ。せっかく築いた関係性やエンゲージメントが台無しになることは、一貫して行わないのだと池上氏は説明した。

 「我々が一番注力したことは、戦略に沿ってコンテンツを作り、顧客になる人の心理を理解することです。たとえ今日インターネットがなくなったとしても、デジタル施策がDMや本に置き換わるだけでしょう。つまり戦略は変わらず、施策だけが変わるのです。まずは、戦略と施策の違いを見極めることからスタートしていきましょう」と池上氏は述べ、セッションを締めくくった。

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この記事の著者

堤 美佳子(ツツミ ミカコ)

ライター・編集者・記者。1993年愛媛県生まれ。横浜国立大学卒業後、新聞社、出版社を経てフリーランスとして独立。現在はビジネス誌を中心にインタビュー記事などを担当。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:株式会社ルシダス

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2023/10/26 10:00 https://markezine.jp/article/detail/43704