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『MarkeZine』(雑誌)

第106号(2024年10月号)
特集「令和時代のシニアマーケティング」

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Cookieレス時代のネット広告を考える~利用者保護とマーケティング成果を両立するために(AD)

AI活用の時代、人間の介在価値は?サントリーウエルネスとアイレップが共有するMeta×AIの先進事例

 MarkeZineでも、今非常にホットな「AI活用」の話題。たとえばサントリーウエルネスは、パートナーであるアイレップと共に、Meta社のAIを活用した最新プロダクトを活用。日本でいち早くその有用性を検証し、既に様々な学びや仮説が得られていると言う。本稿では、サントリーウエルネス×アイレップ×Meta日本法人 Facebook Japanの3社が対談。事例を紹介しながら、前提にある「マーケティングにおけるAI活用」に対する考え方にも触れていく。

サントリーウエルネスが徹底する「広告」への考え方

MarkeZine編集部(以下、MZ):今日は、サントリーウエルネスがMeta社の提供する最新のソリューションを用いて行われている取り組みを通して、AI×マーケティングの可能性を探っていきます。まずは大前提となる部分として、サントリーウエルネスのマーケティング活動に対する考え方をお聞かせください。

飯沼:サントリーウエルネスでは、商品の価値をお客様に正しく伝えることを大切にしています。「ひとりひとりの『生きる』を輝かせる~体と肌と心のつながりを通じて~」をミッションとしており、ブランドとしてお客様の人生をどうすれば輝かせることができるか、ブランドが有する価値をいかにより良く伝えられるかを意識して、広告を制作・展開しています。

サントリーウエルネス株式会社 メディア制作部 飯沼〇〇氏サントリーウエルネスのメディア制作部にて、健康・美容商品の新規顧客獲得を目指し、オンライン・オフライン広告の企画から運用までを担当している
サントリーウエルネス株式会社 メディア制作部 飯沼肇氏
サントリーウエルネスのメディア制作部にて、健康食品・美容商品に関するオンライン・オフライン広告の企画から運用までを担当している

MZ:健康・美容のカテゴリー、特にWeb広告においては消費者の不安を煽るような表現が使われているケースをよく目にします。

飯沼:おっしゃる通り、バナー広告などクリエイティブの面積が小さいWeb広告ではとりわけ、ブランドの伝えたいことと、お客様の目を引くための要素がぶつかることがあると感じています。

 我々が常に意識しているのは、「効率や結果を優先するあまり、お客様が不安や不快に思われるようなコミュニケーションになっていないか」「自分の家族や友人がお客様だったとして、胸を張ってその広告を見せられるか」ということです。ブランドごとにビジョンやマーケティング戦略は異なりますが、「ブランドの価値を正しく伝えること。そこから外れた訴求は極力控えること」は、いずれのブランドにおいても大切にしていることです。

MZ:飯沼さんがお話しされたような方針を貫くにはパートナー先の協力もあってこそだと思います。アイレップは、サントリーウエルネスの指針にどのように寄り添っていますか?

六浦:サントリーウエルネス様が大切にされている“顧客視点”が最も表れるのは、やはりクリエイティブだと考えています。サントリーウエルネス様のマニュアルを作成・活用しているのはもちろんのこと、広告を見た方が不快に感じる内容になっていないかを毎回チェックしPDCAを回しています。

株式会社アイレップ 第1マーケットデザインUnit 第3マーケットデザインDivision Division manager 六浦恵氏
株式会社アイレップ 第4アカウントUnit 第4アカウントDivision Division manager 六浦恵氏
アイレップでクライアント企業のデジタルマーケティング支援に従事。現場でのコンサルティングのほか、組織運営も担当。サントリーウエルネスとの取り組みでは品質管理や全体責任者を担う。

 一方で、メディアやターゲティングに関しては、リーチを広げたりエンゲージメントを深める配信方法を検討したりと、新たな施策の提案も行っており、定例会では必ず複数の新規提案を入れるようにしています。サントリーウエルネス様の理解と判断の速さも相まって、先進的な施策事例を数多く作ってきました。今日お話しするMeta社の最新プロダクトを活用した事例もその一つです。

Meta最新プロダクトによる最新事例を紹介

MZ:サントリーウエルネスは、アイレップの支援のもと、Meta社の新プロダクト「Advantage+ショッピングキャンペーン(以下、ASC)」と「Bid Multiplier(一部β版)」を活用。「ASC」と「Bid Multiplier」を掛け合わせる方法は先進的な取り組みだということで、この取り組みについて詳しく伺っていきたいと思います。まずは「ASC」と「Bid Multiplier」がそれぞれどのような機能を有するものなのか、ソリューションの概要を紹介下さい。

野本:はじめに「ASC」について説明します。広告パフォーマンスをより改善していきたいという広告主様の強いニーズに応えるべく、私たちはAIを活用した広告製品やツールへの投資および開発を続けています。その実例が、AIを活用して自動化を実現した広告製品群である「Meta Advantage」です。「ASC」はこのうちの一つであり、Webサイト上での購入やサービス申し込みをマーケティングのゴールとする広告主様向けの製品として提供しています。

Facebook Japan 野本〇〇氏主に美容・健康食品を取り扱うクライアントを担当し、ブランディングからダイレクトパフォーマンスまで幅広くMeta広告を使った課題解決を提案している
Meta日本法人 Facebook Japan 野本翼氏
主に美容・健康食品を取り扱うクライアントを担当し、ブランディングからダイレクトパフォーマンスまで幅広くMeta広告を使った課題解決を提案している

 従来の広告運用では、ターゲットとなるユーザーや広告の配信先などを個別に設定する必要がありました。「ASC」は、そのプロセスのほとんどをAIで自動化しながら、多くの広告主様のパフォーマンスを改善しています。

 *出典:Meta社内調査北米、APAC、EMEA、LATAMの31の広告主によるAdvantage+ ショッピングキャンペーンを対象に実施(2022年7~9月)
*出典:Meta社内調査北米、APAC、EMEA、LATAMの31の広告主によるAdvantage+ ショッピングキャンペーンを対象に実施(2022年7~9月)

 続いて「Bid Multiplier」は、ディベロッパー向けに提供しているMetaのマーケティングAPIです。Bid Multiplierは日本語に直訳すると「入札乗数」となります。Metaの広告は広告主によるオークション方式で配信が行われていますが、「Bid Multiplier」を利用することで、年齢層や配信エリア、配信面などを細かい単位で入札戦略をコントロールする(入札に乗数をかける)ことできます。「Bid Multiplier」自体は先述のとおりAPIとして既に開放されていますが、「ASC」と掛け合わせて活用いただく方法はβ版でご提供しています(2024年2月時点)。

MZ:「ASC」と「Bid Multiplier」を掛け合わせて活用すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?

辻:高い精度の機械学習により広告の自動最適化、パフォーマンスの向上が実現するというのが「ASC」の特長なのですが、一方で「特定の年齢層に厚く配信したい」など細かな設定はできません。「Bid Multiplier」を掛け合わせることで、「ASC」の自動最適化ではカバーできない部分を補いながら、より広告主様の目的に沿う形で広告効果を改善していくことができます。

株式会社アイレップ 第1パフォーマンスコンサルティングUnit 第7コンサルティングDivision 第5グループ 辻拓巳氏
株式会社アイレップ 第1パフォーマンスコンサルティングUnit
第7コンサルティングDivision 第5グループ 辻拓巳氏

Metaをはじめとしたデジタルメディアの広告運用やプランニングを担当。サントリーウエルネスの広告運用のディレクションに従事している

野本:アイレップ様は数ある代理店様の中でもいち早く「ASC」と「Bid Multiplier」を導入されており、この2つを掛け合わせて活用した事例は日本ではまだ多くありません。2023年の『Meta Agency First Awards』においても、Best solution Award Advantage+ Shopping Campaignsで賞を受賞されています。

実際の広告成果は? 「AIだけ」では真の目的達成は難しい可能性も

MZ:実際に、サントリーウエルネスでは「ASC」と「Bid Multiplier」を用いることで、どのような結果が出ていますか?

辻:まず「ASC」に関しては、通常配信と並行して「ASC」を活用した配信を行い、配信結果を検証しました。すると、「ASC」を用いた配信のほうが広告コストが15%安価に着地するなど、獲得効率が良くなることが判明しました。また、Facebook/Instagram広告の成果を「ASC」導入前後で比較しても、やはり「ASC」導入後のほうが全体的に高い成果が得られており、同期間で他のプラットフォームと比較しても優れた数値となっていました。

 併せて「Bid Multiplier」を活用することで、サントリーウエルネス様が本当に広告を届けたい年齢層への配信量を増加させる検証も行いました。その広告は“初回限定商品の購入”を訴求するものだったのですが、KPIはその先の“定期購入”に置いていました。そこで「Bid Multiplier」を用いて、定期購入に進む率の高い年齢層に広告配信を寄せるよう入札調整を実施しました。その結果、「ASC」のみを用いて広告を配信した時よりも獲得効率が高くなる傾向が見られました。

MZ:今回の検証から、今後の広告運用に活かせそうな収穫はありましたか? 現時点で得られている仮説がありましたら教えてください。

辻:ブランドのメインターゲットによるコンバージョンなのか、そうでないのかによって、同じ1件のコンバージョンも価値が変わってきます。すべてをAIの自動最適化に任せるのではなく、「Bid Multiplier」を活用し、よりメインターゲットに近い年齢層に多く配信することで、KPI/KGIの達成により近づきやすくなるだろうと考えています。

AI活用の裏で行っている「自動最適化」とは真逆の取り組み

MZ:これからAIによる自動最適化はますます進んでいくと思われますが、今後デジタルマーケティング領域で意識したいことはありますか?

六浦:私たちは、AIにすべてを任せるのではなく、AIは自分たちと併走していくものと捉えていきたいと考えています。たとえば、サントリーウエルネス様では、自動最適化だと発掘されにくいニッチな層のニーズを捉える戦略を行ってきました。これをスモールマス戦略と呼んでいます。

 スモールマス戦略では、まずユーザーアンケートなどを分析し、実際のお客様の商品の利用シーンをカテゴライズします。そして、各カテゴリーの文脈に合わせてクリエイティブを制作、広告を配信していくということを行っています。これは、AIによる自動最適化とは真逆の取り組みと言えるでしょう。実際に成果も出ており、顧客ニーズ×クリエイティブの最適化による効果を見い出せています。

MZ:AIによる効率化が進んでいるからこそ、そうした施策にもリソースをかけられるようになるわけですね。

野本:Metaでは、AIを活用することのメリットとして「パフォーマンスの向上」「作業効率の向上」「ターゲットとなる顧客層の拡大」の3つを挙げています

 Metaの新しい機械学習モデルにより、商品やサービスを届けたい利用者に効率よく情報を伝えられるようになることで広告パフォーマンスが向上することはもちろん、今までアプローチできていなかった潜在的な購入意向を持つ利用者にもメッセージを届けられるようになります。また、多くのプロセスが自動化されることで、サントリーウエルネス様とアイレップ様が取り組まれているスモールマス戦略など、その他のマーケティング活動に多くの時間を充てられるようになるでしょう。

 そして、これからの時代AI活用がますます進んでいくからこそ、サントリーウエルネス様が冒頭でお話しされていたような広告・マーケティングに対する考え方がより大切になってくると思います。この点でも、サントリーウエルネス様のお取り組みは非常に参考になります。

最新のテクノロジーを取り入れつつ、人間の介在価値を高めていく

MZ:最後に今後の展望をお聞かせください。

飯沼:目まぐるしいスピードで技術が進化しています。引き続き、アイレップ様やFacebook Japan様と密に連携しながら、最新技術をフルに活用し、お客様に対してその時々で最適なコミュニケーションを行い、商品価値を伝えられるよう取り組んでいきたいと思います。

六浦:AIによる自動最適化に関しては、「なぜAIはそのターゲティングやクリエイティブを選んだのか」などを私たち人間が考えていく必要があると考えています。良いと判断された理由を外部データも含めて分析し、そこから仮説を得ることで、広告運用に人間が介在する価値を高めていきたいです。

辻:AIに限らず新しいテクノロジーやプロダクトを積極的に導入しつつ、人間が介在する部分とのバランスを見極めていくことが重要になってくると思います。広告主様のビジネスを拡大させるというミッションを果たすために、最適な手段をとれるよう日々探求していきます。

野本:Metaでは引き続きAIを活用したプロダクトの改善を続けていきます。今後もサントリーウエルネス様の課題解決につながる新しいプロダクトをアイレップ様と連携し、積極的に提案していきたいと考えています。

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この記事の著者

和泉 ゆかり(イズミ ユカリ)

 IT企業にてWebマーケティング・人事業務に従事した後、独立。現在はビジネスパーソン向けの媒体で、ライティング・編集を手がける。得意領域は、テクノロジーや広告、働き方など。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

提供:Facebook Japan K.K.

【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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MarkeZine(マーケジン)
2024/02/01 12:00 https://markezine.jp/article/detail/44439