Z世代の間で広がる「アナログ回帰」のトレンド。世界中で支持を集める代表例が富士フイルムの「チェキ(INSTAX)」だ。Markezine Day 2024 SpringではMERYのZ世代研究所所長 兼 統括編集長の平山彩子氏と富士フイルムのイメージングソリューション事業部コンシューマーイメージンググループ統括マネージャーの高井隆一郎氏が登壇し、チェキの流行とZ世代によるアナログ回帰の理由について議論をし、Z世代の心をつかむアナログの本質を探った。
Z世代がチェキに感じる“三つの価値”
平山:最初に、一般的に語られるZ世代の特徴を簡単におさらいしていきたいと思います。Z世代は、1995年~2010年の間に生まれた世代のことを指す名称です。幅広い年齢の人が属しているのでひとくくりにはできないのですが、あえて共通する特徴を挙げると、2005年頃から急速に進化したSNSとともに育った、デジタルネイティブであること。インフルエンサーでなくても、多くの人が一つのSNSに対して複数のアカウントを保有し、学校の友人用、趣味用などで使い分けています。
平山:そんなZ世代の中で、純喫茶や昭和に流行った玩具とか、加工ができない「韓国プリクラ」に夢中になるなどといった「アナログへの回帰」が起こっています。今回はこのアナログ回帰の潮流にある共通項を、代表的な事例の一つとして捉えられる「INSTAX(以下、チェキ)」のヒットの理由から紐解いていきます。まず、改めてチェキについて教えていただけますか。
高井:チェキは、写真を撮ったその場でプリントできるインスタントカメラです。売上の9割が国外となっています。
高井:主なユーザーは、Z世代の方々で、彼らがチェキに感じている価値は大きく三つあります。一つ目が「即時性」です。チェキを使うと、撮った写真をその場でプリントでき手に入れられることを指しています。
二つ目が「コミュニケーション」です。写真を形で残せ、共有できることが会話のきっかけになっているといいます。
そして三つ目が、「質感」です。写真がじわじわと浮かびあがっていくことに、風合いと価値を感じているといいます。
これらはZ世代よりも上の世代にとってはごく当たり前なアナログの特長です。しかし、デジタルネイティブなZ世代にとってはデジタルにはない新鮮さ、リアルに起きていることが価値になっているようです。
ターゲットを世代でくくらない!特定の一人に刺さる商品展開
平山:Z世代による追い風があったにせよ、大きくヒットしている背景にはブランド側としての働きかけがあったのだと思われます。近年ではチェキをどのように売り出し、成長させてきたのでしょうか。
高井:ターゲットの細分化と製品ラインアップの見直しを経て、グローバルでのリブランディングを行いました。リブランディング以前は、各製品のターゲットや売り方が国ごとに大きく異なっていましたし、一つのカテゴリに複数種の製品が乱立していたんです。そこで、製品のラインアップを整理することから始めました。
現在、ラインアップは大きく3種類に分かれています。時代のトレンドや進化する技術に合わせ、アナログだけでなく、デジタルとのハイブリッドや撮影はスマホに任せるプリンター、撮影に特化したデジタルカメラまで拡充しており、それを整理したのが次の図です。ラインアップ見直しの要点は、製品ごとにターゲットが異なるように設計すること。若年女性層だけでなく、男性層やミドル層にもユーザーを拡大しました。
製品ごとに異なるターゲットを設定
平山:各製品のターゲットを整理されたとのことですが、どのように設定したのでしょうか。
高井:ターゲット設定の際には、必ず一人のペルソナを立てるようにしています。名前はもちろん、家族構成、年齢、趣味嗜好、朝起きてから寝るまでの生活スタイルを考えます。こうして最も製品が刺さりそうな一人を考えて、その人が飛びついて買うような製品を作るようにしています。
このペルソナ策定の時に重要視しているのが、“世代ではくくらないこと”です。チェキのメインターゲットであるZ世代も先ほど触れられたように非常に幅広い層です。したがって、Z世代の中の誰なのかまで解像度を上げてターゲットを設定しています。そして、それぞれ設定したペルソナを並べてみて、各ペルソナが被らないことが確認できたらターゲットとして設定するようにしてきました。
平山:近年、Z世代をひとくくりにして語られることも多いと思います。しかし、抱えている特徴や常識が上の世代と違うからといって世代をひとくくりにすると、それぞれが求める価値は理解できません。世代に囚われることなく、各個人が持つ特徴や個性を見つめ直す必要があるという考え方は非常に重要ですね。
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中村 祐介(ナカムラ ユウスケ)
株式会社エヌプラス代表取締役
デジタル領域のビジネス開発とコミュニケーションプランニング、コンサルテーション、メディア開発が専門。クライアントはグローバル企業から自治体まで多岐にわたる。IoTも含むデジタルトランスフォーメーション(DX)分野、スマートシティ関連に詳しい。企業の人事研修などの開発・実...
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