美的ユーザビリティ効果にみるデザイナーの役割
法則ではないのですが「美的ユーザビリティ効果」も紹介します。これは、見た目が魅力的であるとユーザーは直感的に操作しやすく、エラーなどネガティブな要素に対しても寛容になる傾向があるというもの。美しいデザインが特徴のサービスに対し、ユーザーは操作しやすいと感じ、使い続ける可能性が高くなるのです。一方、平凡で使いにくいデザインでは、あまり自分の役に立たなそうと感じられ、すぐに使うのをやめてしまうことがあります。これは表層的なデザインのみが、ユーザーエクスペリエンスに大きな影響を与えていることを示しています。
生成AI時代におけるデザインのこれから
ここまで紹介してきた心理法則をUIUXデザインに活用することで、デザインの方向性や意思決定での選択肢を明確にし、サポートすることができるでしょう。またAppleの「Human Interface Guidelines」やGoogleの「Material Design」など、UIの参考となるものが簡単に活用できるなど、設計していく上での方程式がある程度オープンになっている今、デザイナーの役割は変わってきています。言ってしまえば、ツールさえ扱うことができれば、デザイナーでなくてもある程度のものが作成できる状況になっているのです。
昨年からの生成AIムーブメントでは、UIをプロンプトで作成するサービスも多数リリースされています(参考記事)。それらをふまえると、心理的法則やガイドライン、ニーズやデバイスの情報をAIに学習させてUIを今より精度の高いもので瞬時に生成する未来はそう遠くないのではないでしょうか。
ただ、「人間」を対象としたとき、本質的な意味における「サービスにおけるUIデザインのベストは何か」「プロダクトのイメージやユースケースをどう伝えられるのか」といったユーザー体験の正解は簡単に体系化できるものではありません。美的ユーザビリティ効果はあっても、人々の価値観やトレンド、そしてデバイスやテクノロジーの進化を考慮すると、最適なデザインや体験を見つけるためにはUIデザインやUXリサーチなどが必要です。これは生成AIが進化したとしても変わらないデザイナーの役割です。
2024年以降、さまざまなプロダクトやサービスに、さらに本格的にAIが実装され始めるでしょう。そのため、AIを活用したユーザー体験の設計や、インサイトにつなげるためのテクノロジーの活用などをリサーチできるUIUXデザイナーのニーズが高まるはず。これまでグラフィックデザイナーやウェブデザイナーがUIUXデザイナーにシフトしてきたように、新たな段階に入っているのだと感じています。
まとめ
今回の記事で紹介した、法則やルールの多くは偉大な心理学者や研究者たちが調査や実験を通じて提唱したものです。これらのUXデザインの法則やルールを理解することで「UXデザインの基本的な考えかた」を体系的に学び活用することができます。
デザインと心理学は深くリンクしているため、どのようにプロダクトとつながっているのか、意思決定にはどのような影響を与えるのかなどを理解することは、UXデザイナーの必要なスキルのひとつでしょう。
ただし、これらの法則に従ったとしても、ユーザーが混乱する可能性は十分あります。そこには時代のトレンドやテクノロジーも深く関わってくるでしょうし、法則もあらゆるケースにマッチするわけではない。完璧ではないのです。
しかし、デザインがどのような背景でつくられ、ユーザーに対してどのような誤解を生む可能性があるか。それらをユーザーの立場に立って見つけることはとても重要です。紹介した法則以外にも「ドハシティのしきい値」「ホーソン効果」「バンドワゴン効果」など、UIUXデザインに役立つ心理的法則はたくさんありますし、より具体的な影響を与える効果も数多くあるので、ぜひ調べてみてもらえたら嬉しいです。
この記事がUIUXデザインを考えるひとつのヒントとなれば幸いです。それではまた次回の記事でお会いしましょう。
以上、新谷でした。ありがとうございました!!