オワコン時代に現れた「となりのカインズさん」
━━「となりのカインズさん」とはどのようなメディアでしょうか?
ちょうどコロナ禍だった2020年の6月に創刊したオウンドメディアです。コンセプトは「ホームセンターを遊び倒すメディア」。創刊から半年で月間100万PVを記録し、1年以内で月間400万PVに到達しました。
実績として、小売業界の集客/販促支援プロモーションを表彰する「第6回リテールプロモーションアワード」や、「コンテンツマーケティング グランプリ2021」を受賞しています。
株式会社カインズ
マーケティング本部 メディア戦略部
与那覇 一史氏1990年1月生まれ。沖縄県出身。美術専門出版社の営業職を経て、株式会社キュービックでメディア運用に従事。その後、体験ギフトのソウ・エクスペリエンス株式会社でECサイトのグロースを経験。現在はメダカ、ミジンコ、SEO、縄文時代、家庭菜園、読書、筋トレを相棒に「おもしろいコンテンツ」を模索している。人生のテーマは観察と分析と実行。
━━いまや「企業オウンドメディアの成功事例」として代表的な存在ですが、実は後発ですよね?
そうです。創刊した2020年は、ちょうどオウンドメディアが「オワコン」といわれていた、ど真ん中の頃ですね。
━━どのような特徴があるのか、教えていただけませんか?
「となりのカインズさん」の特徴は、キャッチコピーにもなっている「メシの横にムシ」。苦手な方がいらしたら、ごめんなさい。トップページの右上にはお菓子、その隣にミミズ、さらに下にはアリやカナヘビがいます。
━━まさしくホームセンターですね。「となりのカインズさん」運営する上で、大切にしていることはなんでしょうか?
一般的なメディア、記事を同じジャンルでまとめて掲載すると思うのですが、私たちはこのホームセンターらしい“手触り感”を大切にしているんです。
運営で大切にしていることは7つあるんですが、中でも「手触り感」に直結しているのは、「凄まじいB面にフォーカスする」という考え方です。
「B面」への着目が社内マインドの変化と反響につながる
一つ例を挙げますね。カインズの中に、スリランカが何よりも好きなメンバーがいます。彼はスリランカカレー用のスパイスを育てるために、自宅に温室を設け、電気・ガスを一切使わずにスリランカカレーを作っている「狂気の人」です。
店舗生産性改革部に所属しているメンバーなのですが、普段はそうした一面が見えません。そういった、メンバーの普段は見えない「B面の顔」を紹介しています。
そもそもオウンドメディアは採用や広報、マーケティングなど様々な目的で運営されるもの。私たちがオウンドメディアを始めた目的は「社内のマインドの変化」と「ファン創出・売上拡大」の二つです。当社は「社内マインドを醸成するコンテンツが、ユーザーに届くようにする」「届けるための仕組みを整える」ことを最も重視しています。その結果が、ファン創出・売上拡大につながっていくのではないでしょうか。
くらしの役に立つことはもちろん、役に立たないことも遊び倒せるメディアでいたいですね。
━━社内マインドを変えた、手応えを感じた企画について教えてください。
ミニトマトのバイヤー歴15年、「社内の生きる伝説」といわれるメンバーの企画を紹介しましょう。先ほども触れた、凄まじいB面にフォーカスしています。
この記事では、趣味と仕事が完全に同化し、ミニトマトに愛情を注いでいる姿を紹介しました。このメンバーは、ミニトマトに取り憑かれてしまい、ミニトマト栽培のために庭にあった金木犀を伐採して78株も育てているんです。
こういった記事は非常に反響も大きく、編集部としても「しっかりとメンバーを紹介していこう」と意識して作成しています。