5.インスタ映えの定義にも変化。大事なのは「日常の“映え”」
飯野:さて、次は「日常の“映え”」を大切にするインサイト。2024年は、日常の中のちょっとしたモノ・コト・瞬間を切り取るようなSNSコンテンツが流行りました。これはInstagramで非常に色濃く見られたトレンドです。
たとえば、最近、Instagramの投稿で“引き”の構図が増えたと感じませんか? これまでは自分の顔まわりが映えている“寄り”の写真投稿が多かったですが、最近は「こんな素敵な空間にいる自分(いいでしょ?)」「これが私の日常(素敵でしょ?)」という具合に、日常の映えている瞬間を切り取った投稿が増えているのです。
――都会のキラキラした映えから、シフトしているわけですね。
飯野:はい。フォローするインフルエンサーに関しても、その人自身のルックスが云々というより、センスや世界観に共感して支持するパターンが増えている印象です。ただ、日常の映えを“狙いに行っている”のが、またおもしろいところなんですよね。朝食にアサイーやヨーグルト+フルーツを食べる、ワインはナチュールで……など、日常の中に映えを仕込むものが流行でした。
【具体例:知らないワードがあったら要チェック!】
アサイー、ヨーグルト、ナチュラルワイン(ナチュール)、新東京スポット、酒場のレジャー化、デスティネーションレストラン、アートブーム、自然界隈
6.様々な本音が表に「本音を知りたい/話したい」
辰野:6つ目は「本音を知りたい/話したい」というインサイトです。「言いたくても言えなかったけど、本当は気になっていた」という本音が、今年はたくさん表に出てきました。5つ目の「日常の“映え”」にも通じますが、「キラキラ&ビジュアル重視」という風潮が落ち着いて、「本音を見せてもいいよね」という価値観に変わってきたのだと思います。
テレビ番組では『夫が寝たあとに』『上田と女が吠える夜』がSNSでよく話題になりますし、社会的には「生理痛」「不妊治療」「卵子凍結」など、これまで吐露されてこなかった悩みや本音を見聞きする機会が増えました。ヒス構文も、本音を言いやすくする構文とも捉えられます。
川畑:アレン様もそうですが、本音を話すタレントやインフルエンサーに支持や共感が集まる傾向も強かったですね。
【具体例:知らないワードがあったら要チェック!】
卵子凍結、ヒス構文、見取り図、男性による生理痛体験、子持ち様 vs 無産様
7.かわいいを全肯定「自分かわいい」
川畑:次に紹介する「自分かわいい」というインサイトに関しては、さすがに私も当事者として共感できているわけではないのですが……(笑)。Z世代の中でも比較的年齢の若い女子たちの間で見られている傾向です。FRUITS ZIPPERやCUTIE STREETなど「かわいい」に全振りする衣装や世界観、「自分かわいい」と自己肯定する楽曲に共感し、憧れる女子たちも増えてきています。
新卒1年目のメンバーは「最近、王道の“THE・かわいい”スタイルやアイテムも認められるようになってきた」と話していました。
辰野:多様性を重視する流れで、一時期「かわいいにも色々なかわいいがあるよね」とお互いの「かわいい」を認め合う風潮がありました。その“肯定する”という価値観が残り、2024年は「(人の目を気にしてこれまで身に付けられていなかった)THEかわいい」ガーリーなアイテムやファッションが強く支持されるようになったのだろうと見ています。
必ずしも他人からの「かわいいね」という賞賛が欲しいわけではありません。どちらかというと「自分がかわいいと思うものを身に付けてもいいよね」「自分が自分をかわいいと思えたらいいよね」と自分を肯定する流れです。
――ここで言う「THEかわいい」とは、具体的にどのようなものを指していますか?
川畑:本能的に「かわいい」にカテゴライズされるようなものですね。ファッショントレンドで言えば、バレリーナのように甘めでエレガントな女性らしさを表現する「バレエコア」や「リボンモチーフ」がトレンドです。若い世代から始まった流行ですが、最近は30〜40代向けの女性誌でもバレエコアの特集が組まれるようになっているんですよ。
辰野:「この年齢でこんなかわいいアイテムは痛いかな」など他人の目を気にすることがなくなっているので、大人でも可愛いキャラクターグッズを身に付けたり、若い方はリボンがたくさん付いた衣装を楽しんで着たり。また、近い例を挙げると「ぶりっ子」という言葉も消えつつあり、個性として見られるようになってきました。
【具体例:知らないワードがあったら要チェック!】
バレエコア、デカマスコット、かわいいを全肯定する楽曲(FRUITS ZIPPER『わたしの一番かわいいところ』/CUTIE STREET『かわいいだけじゃだめですか?』)、かわいいフード(リボンパン、猫プリンなど)、Z世代が大注目の歌姫 サブリナ・カーペンター
8.情報・選択肢は多すぎても困るから「誰かの正解が知りたい」
飯野:8つ目は「誰かの正解が知りたい」というインサイトです。ネットに情報が溢れている今、「情報や選択肢がありすぎて困る」と思ったことは、性年代問わず皆さん1度はあるでしょう。
その流れで、2024年は「正解の美に近づきたい」「選ぶのが面倒だし、迷いたくない」「誰かの正解が知りたい」というニーズが出てきました。たとえば、2024年Z世代で流行った言葉に「seju顔」があります。これは芸能プロダクション「seju」に所属する人気タレントの顔の系統を指す言葉で、つまりはseju顔=今の時代のかわいい=正解の美を表しているわけです。
このトレンドにともなって、「正解の美に近づくためのメイクレシピ」も注目されました。Instagramでは、「この顔を完成させるために使ったアイテム(=メイクレシピ)」を紹介するコンテンツが人気です。AIではなく「信頼できる誰か」からの正解、保証された情報を求めているのかもしれません。
【具体例:知らない言葉があったらチェック!】
メイクレシピ、seju顔、(みな実買い→)リア買い、SNSコメント消費、盛り耐性、東京都の結婚支援、MEGUMI、