1974年から広告に対する苦情を受付・審査している日本広告審査機構(JARO)は、2024年度上半期(4月~9月)の統計結果を発表した。同時期の総受付件数は5,311件、うち苦情は4,095件だった。
苦情を広告主別に見ると、2020年度に比べ広告主数が大きく減少。一因として、近年の行政における規制強化や相次ぐ執行があると、JAROは見解を述べている。
媒体別に見ると、上位はインターネット、テレビ、ラジオの順で前年同期と同様だった。インターネットは微増、他の媒体は減少した。
業種別の特徴
苦情4,095件を業種別に見ると、上位は医薬部外品、健康食品(保健機能食品以外)、オンラインゲームとなった。前年同期と同様に医薬部外品が最も多く寄せられた。
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医薬部外品
「1回限り、解約不要、追加料金一切なし」と記載しているが、購入画面で定期購入契約であることをわかりづらく表示し、解約に追加料金がかかるといった事例。そのほか、シミを表現した加工画像への不快感も多かった。 -
美容・健康系商品
精力増強をうたう広告への苦情が急増した。多くが性的なビジュアルを使用しており、卑わいである、広告を非表示にできない、一般的なサイトを閲覧していて表示されるなどの苦情が多数寄せられた。 -
オンラインゲーム
卑わいまたは残虐な表現に対するもの、広告とゲーム内容が異なるものに対して寄せられた。 -
通信販売
特定のECサイトの広告に68件。無料プレゼントや〇〇%OFFなどとお得感をうたっているが条件がある、著名企業と紛らわしい表示をしているといった苦情が寄せられた。そのほか、広告を非表示にしても表示が続く、1ページに同じ広告が複数表示されるなどの声があった。 -
医院・病院
特定の医院に31件。男性器を表現したものに対して、不快である、子どもも見る媒体に掲載すべきではないとの声が寄せられた。JAROは、GLP-1ダイエットを訴求した医療機関紹介サイトの事例では、医療機関とサイト運営事業者に対し「厳重警告」を発信した。 -
買い取り・売買
近年増加傾向にあったが、景品表示法の景品告示が改正され、同法の規制対象となることが明確化され、苦情が減少した。
問題のある広告パターンの特徴
主な問題のある広告パターンとして、以下の特徴が見られた。
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誇大、逸脱した効能効果
「若返りすぎて炎上」「医療級 塗るボトックス」など極端な効果を標榜する表現が目立った。特に動画広告や生理的不快感を与える画像を使用したディスプレイ広告が入口となるケースが多い。 -
欺瞞的なお得感、あおり
「このページから離れると特別価格での購入ができない」「残り3個」など、虚偽の希少性や緊急性をあおる表現が見られた。また、「定期縛りなし」と表示しながら実際は定期購入が条件となっているケースも確認された。 -
メディア露出を装う手法
「○○(テレビ番組)炎上後、爆売れ」など、実際には取り上げられていない番組名を表示、広告出稿を「メディア掲載実績」と偽って表示するケースがあった。JAROの事務局が照会すると、製品が取り上げられたのではなく含有成分が紹介されたもの、雑誌に記事で取り上げられたのではなく広告出稿したものがあった。 -
権威を利用した表現
「厚生労働省が認めた医療級のシワ改善成分」「現役医師が語る解決策」など、行政や専門家から認められたかのような表示が散見された。
医薬部外品、化粧品では、行政や医療関係者が推奨しているかのように表示してはならない(医薬品等適正広告基準第4-10 医薬関係者等の推薦)。健康食品は同基準の対象ではないが、事実でなければ景品表示法の不当表示に当たるおそれがある。
ほかにも、不適切なNo.1表示や高評価%表示、違法な表示が多数見られる中間ランディングページ、ステルスマーケティングが挙げられている。
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