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マーケターが向き合うべき「人間の欲求」を丸裸に!セガ エックスディー伊藤氏と面白法人カヤック後藤氏が語る、ゲーミフィケーション最前線

「AI時代を生き抜くマーケターの条件」とは?ビービット藤井氏とセガ エックスディー伊藤氏が語る

体験設計のよくある落とし穴「事例の模倣」

MZ:理想的な体験設計の事例をうかがった次は、よくある失敗とその要因についてもうかがえますか。

藤井:対談前編でも、誤った顧客理解の例については話してきましたね。特に、「キメラペルソナ」や「UX劇場」の話は、ゲーミフィケーションの誤った活用にも通じるものがあると思います。

 「ゲーミフィケーション1.0」、つまりゲーミフィケーションが広がる初期段階の失敗は、成功した他社事例を抽象化せずにそのまま模倣したことから生まれたのではないでしょうか。ビジネスシーンでは他社の成功事例を参考にすることがよくありますが、これは具体から具体を真似る危険な行為でもあります。

伊藤:本来は一度抽象化しなければなりませんよね。「なぜその事例が成功したのか」という本質的な部分を紐解き抽象化して理解し、それを自社の状況に合わせて再度具体化する必要があります。

藤井:仰る通りです。たとえば、他社の成功要因の一つが「ランキング機能」だったとします。それをそのまま自社サービスに導入するのではなく、なぜランキングが他社サービスのユーザーに響いたのかを考えなければなりません。

伊藤:「なぜそれがユーザーを動かしたのか?」という理由を、抽象化した上で把握できていない状態ですね。これが、ただの真似がヒットにつながらない理由の一つです。

 また、ユーザーが自社の商品やサービスを理解できないからと、説明を増やしていく誤った手法もよく見られますね。

藤井:それを「課題の裏返し」と私たちは呼んでいます。わからないから情報を増やすという発想は、実は根本的な解決にはなりません。チュートリアルの内容が増えたり、注意書きが増えたり、Q&Aが増えたりするのも、この思考の延長です。

 このような場合は、抽象的に考える必要があります。情報を増やしてもユーザーは理解しないので、そもそも「なぜそのような誤解が起きるのか?」や「ユーザーが気にせず進むためにはどうすればいいか?」といった点を深く考えるべきです。ビジネスの現場では、目の前の課題をすぐに解決したくなりますが、一度立ち止まって抽象化することが非常に重要です。

両氏が考える、AIが体験設計にもたらす変化

MZ:続いては、昨今マーケティングのあらゆる領域で無視することのできないAIをテーマにお話を聞いていきます。AI技術の進化にともない、ユーザー体験やマーケティング手法も劇的に進化していますが、お二人が特に注目している変化や影響はありますか?

藤井:私は2つの点に注目しています。1つ目は、AIによって誰もが安易にユーザー理解を行えるようになることです。AIにペルソナ作成やシミュレーションを実行させたり、インタビューを行わせたりするサービスも増えています。これは初期仮説を立てたり、知らないユーザー像を把握したりする上で非常に便利です。しかし注意すべきは、AIはあくまで過去の情報をベースにしているため、対談前編でお話した「憑依」レベルの深いユーザー理解にはつながりません。

 AIは「ユーザーはこうするらしい」という結果を出してくれますが、なぜそうするのかという本質的な部分までは理解できないのです。ゲームのキャラクターが作り手の中からいつの間にか自律的に動き出すように、ユーザーに深く憑依しなければ、「この人はこういう行動はしないだろう」といった内面的な理解は得られません。AIの普及によって、このような浅い部分にとどまる人間理解ばかり進んでしまうことを懸念しています。

 2つ目は、AIがWebサイトの役割を代替してしまうことです。すでにGoogleで検索するとAIが要約を表示してくれるため、わざわざWebサイトにアクセスする必要がない場合も増えていますよね。将来的には、Webサイトに訪れるのは人間ではなく、AIがメインになるかもしれません。そうなると、サイトはAIに情報を伝えるための存在となり、マーケティングにおける獲得の領域はAIがすべて担うようになるでしょう。

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AI時代にマーケターが磨くべき能力

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この記事の著者

吉永 翠(編集部)(ヨシナガ ミドリ)

大学院卒業後、新卒で翔泳社に入社しMarkeZine編集部に所属。学生時代はスポーツマーケティングの研究をしていました。

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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MarkeZine(マーケジン)
2025/09/30 09:00 https://markezine.jp/article/detail/49457

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