競争が激化するプロテイン市場、業界トップ「ザバス」の課題感
MarkeZine:プロテイン市場の中でも非常に高いブランド認知度を誇る「ザバス」ですが、マーケティング活動、特に購買直前のラストワンマイルにおけるコミュニケーションでは、どのような課題感を持っていますか?
平松:プロテイン市場は、直近5~6年で大きく成長しています。「ザバス」は、現在おかげさまでプロテイン市場No.1という位置にいるものの、競合も続々と参入しており、市場のコモディティ化は避けられません。
プロテイン自体が一般的なものになりつつある中、「どれを選んでいいかわからない」という状態のお客様が多いのも事実です。店頭でもECでも、最後の購買の決め手となるラストワンマイルで、商品の特長をよりわかりやすく、端的に伝える必要性が高まっています。

MarkeZine:なるほど。店頭でのコミュニケーションにはどのような難しさがありますか?
平松:プロテインは嗜好品ではないので、購買してもらうには“明確なメリット”を感じていただくことが必要です。そのため、ドラッグストアなどに営業が出向き、商品特長を詳細にお伝えした上で、推売いただいていました。しかしコロナ禍を経て、人材や時間の効率化を重視する店舗が増え、今まで通りお時間をいただくことが難しくなってきています。店舗とのコミュニケーションは続けつつ、直接お客様へ価値を伝えていく取り組みも推進していかなければならないと考えていました。
加えて、各種広告施策と店頭での購買について、直接的な因果関係を紐づけることは困難であり、効果検証の難しさを長年感じていました。高単価な粉末プロテインでは、特に喫緊の課題です。
各社で足並み異なるリテールメディア、効率的&実践的な運用は?
MarkeZine:そういった課題感をお持ちの中、どのようにしてリテールメディア横断型の広告配信プラットフォーム「ARUTANA」の活用へとつながったのでしょうか。
平松:きっかけは、2025年3月発売の新商品「ザバス マッスルエリート」です。商品名の「エリート」からわかる通り、本格的にトレーニングに打ち込む上級者をターゲットにした商品で、価格帯も高めの設定になっています。

上級者向けかつ高価格帯ということもあり、いきなり店頭に並ぶだけでは、なかなか手に取ってもらえません。拡販のためにはまず、お客様に新商品を認知してもらうこと、加えてこれまでの「ザバス」とどう違うかも理解していただくことが必要でした。お客様に直接情報を伝えるために、リテールメディアという打ち手を検討していたタイミングで「ARUTANA」を知ったという流れです。
MarkeZine:昨今、リテールメディア領域では様々なソリューションが展開されていますが、その中で「ARUTANA」のどのような点に有用性を感じたのでしょうか?
平松:リテールメディアに各社が力を入れていることは認識しています。ただ、どのようにリテールメディアを活用すればよいかは、メーカーである我々側もまだまだ探り探りの状況です。そのような中でリテーラー1社1社との交渉を進めていくのは、あまり現実的ではありません。足並みやインフラ整備が整っていない状況だからこそ、「ARUTANA」のように複数のリテールメディアを横断可能な“傘”となるプラットフォームを導入するのが、効率的で実践的な方法ではないかと感じています。

また、ターゲティング配信が容易である点や、営業担当の交渉負荷が軽減される点、前述の売上に対する効果検証の課題解決にも期待して導入を決めました。
販促施策にも認知施策にも最適なリテールメディア
複数のリテール公式アプリに一斉に広告配信ができ、購買タイミングに届く × 購買データで効果検証が可能です。出稿効果がID-POS連携でレポーティングもできます(購買数・ROAS)。本記事で興味を持たれた方は、ぜひARUTANA公式サイトよりご相談ください。
直接的な購買効果に加え、販促の「起爆剤」にも
MarkeZine:DearOneは、広告主視点での「ARUTANA」の価値はどういった点にあると考えますか?
川村:やはり特筆すべきは、ラストワンマイルで認識される広告の効果の高さです。たとえば、「ザバス」のテレビCMを見たからといって、その日にすぐ購買につながるわけではありませんよね。リテールメディアを通して、買い物の直前に商品を再度認識してもらうことで、購買への直接的な効果が高まります。

南口:購買への貢献という広告効果に加え、副次的な効果として、販促や売り場作りを推進していくための「起爆剤」になるという一面もあります。
「ARUTANA」の広告配信によってお客様が商品に興味を持ち、店頭まで足を運んでくれたとしても、もし売り場に商品がなければ機会損失につながってしまいます。リテールメディアへの出稿は、マーケティング部門から営業部門へ「販促を強化してほしい」と伝える際のプッシュ材料となりますし、営業担当から小売各社のバイヤーへ提案するフックにもなり得るのです。関係者全体を巻き込んで、販促強化に向けた意識を高めていける点もメリットだと思います。

川村:さらに、複数のリテール企業に一括で配信でき、クリエイティブの入稿形式や配信単価がある程度統一されている点も、プラットフォームならではの特長です。なお、配信結果はメディア毎に提示できますので、具体的なフィードバックを活かし、広告施策や販促活動のPDCAを回していただくことが可能です。
割引訴求は意外と効かない?クリエイティブ構成のポイント
MarkeZine:では、「ザバス マッスルエリート」での「ARUTANA」活用について具体的に教えてください。リテールメディアではしばしば、「予算をどこから捻出するのか」が論点となりますが、今回はどうされましたか?
平松:マーケティング部門が管轄する販促費から予算を確保しました。このような事業全体に影響を与える施策はマーケティング部門、個別の販促は営業部門の管轄となっています。既存の広告媒体の位置づけに当てはめるのは難しいものの、会社全体としてリテールメディアを強化していかなければならないという意識はあり、「ザバス マッスルエリート」発売開始に合わせた2ヵ月間のトライアルに踏み切った形です。
MarkeZine:広告にはクーポンなども付けたのでしょうか。
平松:いえ、「ARUTANA」配信ではクーポンはつけておらず、あくまで新商品の立ち上げ期における商品認知・理解促進を主目的としました。
今回は従来のWeb広告とは別に、リテールメディア専用のクリエイティブを新規作成しました。リテールメディア用のクリエイティブを作る上で意識したのは大きく3点です。

1つ目は、様々なバナーが並ぶリテールアプリ内でも目立つよう、金色を使ったクリエイティブで視覚的に差別化したこと。2つ目は、あえて「ザバス」のロゴは控えめにして、「ザバス マッスルエリート」の商品名を強調したこと。3つ目は、「ザバスから新発売」という文言を入れ、既存の「ザバス」ユーザーにも関心を持っていただけるような構成にしたことです。
MarkeZine:ちなみに、リテールメディアではどのような広告クリエイティブが効果的な傾向にありますか? ドラッグストアのアプリを見ると、値引きやポイント還元の訴求が多い印象があります。
川村:実は、具体的な数字を前面に出した値引き訴求やポイント訴求は、既にお客様側で「慣れ」が生じてしまっているため、あまり効果が期待できないのです。マーケター視点で数字を目立たせたくなる気持ちもわかるのですが、数字より商品自体の名前やビジュアル、特徴をはっきりと打ち出すほうが効果的です。「ザバス マッスルエリート」は、インパクトのあるネーミングをクリエイティブではっきりと打ち出していた点も、成功要因の1つと考えています。
MarkeZine:リテールメディアならではのクリエイティブの傾向があるんですね。今回の配信ターゲットについても教えてください。
平松:今回は「ザバス」を含む「プロテイン過去購入者」というターゲットに絞って配信しました。ターゲティングはリテール側とも相談しながら、要望を汲みつつ調整しています。
販促施策にも認知施策にも最適なリテールメディア
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ROAS156%、広告接触ユーザーの売上は9.6倍に
MarkeZine:「ARUTANA」での配信で得られた具体的な成果について教えてください。
平松:あるリテールではROASが156%という結果が出ています。広告に接触したお客様の購買率は、広告非接触のお客様と比較して9.6倍にもなっており、「ARUTANA」の施策が購買に寄与したという顕著な成果が見てとれます。
南口:米国リテールメディア業界では、リテールメディアの効果を測る新指標として提唱されているのが「Incremental ROAS(iROAS)」です。これはリテールメディアをキャンペーンに組み込むことによるIncremental(純増)の売上効果を示す指標で、リテールメディアの効果の高さは米国でも注目されています。

MarkeZine:売上に対する直接的な効果を可視化できるのは、メリットとして大きいですね。その他、メリットを感じられた部分はありましたか?
平松:運用の容易さは想像以上でした。企業横断で配信されるため、各社と細かく調整する必要がありません。店舗との交渉なしに販促の武器が1つ増えたとも捉えられるので、営業部門としてもメリットを感じていたと思います。
今回は時間が限られている中、特急で施策を進行したのですが、スピーディーに対応していただいたおかげで、新商品の立ち上げ期に間に合わせることができました。リテーラー1社1社と交渉していたら、実現できなかったスピード感でしょう。
データを繋げフルファネルで対応、「ARUTANA」のロードマップ
MarkeZine:明治では「ザバス マッスルエリート」の結果を踏まえ、今後どのように「ARUTANA」を活用される予定ですか?
平松:今後も「ザバス」の多様な商品ラインナップに合わせ、それぞれの対象に向けたきめ細やかなターゲティングで、リテールメディアの広告配信を継続していきたいと考えています。また新商品の発売などがある際は、適切なタイミングで、店頭での認知を促していこうと考えています。
単に「パッケージを変えました」と店舗へアピールするよりも、「パッケージ変更に伴い、リテールメディアでの広告配信も強化します」と伝えたほうが、販促や売り場作りをする上で納得感があると感じています。営業がリテーラーに提案するためのフックとしても、引き続き活用していきたいです。
MarkeZine:最後にDearOneから「ARUTANA」の最新状況や今後のロードマップについてもお聞かせください。
川村:直近の動きとしては、ユーザーの「購買前の行動データ」と「属性データ」を突合し、より効率的なCRM型マーケティングを実現できるよう、dアカウントとの紐づけを進めています。また近い将来には、コネクテッドTVをはじめとするマスメディアとのデータ連携も今まさに進めており、実装間近になっています。
「ARUTANA」の最終ゴールは、すべてのリテールメディアに参画してもらい、プラットフォームとしてつなげること。そして、リテールメディアとテレビCM、Web広告といった各施策も一連のデータで繋げ、購買まで可視化できる仕組みを構築することです。「この人にこの訴求が刺さる」「この商品にはこの広告枠がよい」といった傾向までフィードバックできるようにして、フルファネルで広告主のみなさまのマーケティング活動を支援することを目指していきます。
販促施策にも認知施策にも最適なリテールメディア
複数のリテール公式アプリに一斉に広告配信ができ、購買タイミングに届く × 購買データで効果検証が可能です。出稿効果がID-POS連携でレポーティングもできます(購買数・ROAS)。本記事で興味を持たれた方は、ぜひARUTANA公式サイトよりご相談ください。