ツールとマーケターの知見から最適解を導き出す
従来の「マスマーケティング」と、顧客のタイムリーな動きをキャッチしてアプローチする「データベースマーケティング」を結びつける必要性から生まれた、ライトタイムマーケティング。当然、インターネット上のログデータ活用も進んでいる。
「ネット上でクリックした履歴は、消費者の行動として記録し、解析することができます。その行動と購買結果がどう結びついているかを行動解析して活用すれば、効果的なマーケティングが実現できます」と説くのはDaarfのシニアアナリスト、白井氏だ。
日頃から分析を元にマーケティング戦略を考えている白井氏は「どのデータから分析を行うかが重要」だという。通常の購買データによる分析は、“買ったか、買わなかったか”のみ。しかし、Webにはサイトを閲覧した履歴も残り、この行動解析が見込み客を特定するルール出しに非常に有効なのだ。
マーケターの経験から出していた最適なタイミングや最適なチャネルを、より詳細な分析で出す。さらに、データマイニングも併用して、より最適な答えを出す。従来、顧客の属性を加えて行っていたデータマイニングも、タイミングの時系列データやチャネルの組み方など、アプローチの要素を含めてマイニングすることで、より最適な答えを導き出せるようになる。
ただし、データマイニングは精度が高いものの、分析に時間がかかってしまい、人手で行うには限界がある。そのため、ライトタイムマーケティングが現実的に行えるのか、という疑問もある。
「現在は、ツールを使うことで、データの紐付けや集計が速くなり、様々な分析が容易にできるようになりました。より高い効果が見込めるライトライムマーケティングも、このようなツールの発達によって現実的な手法になってきているのです」(Daarf/白井氏)。
ライトタイムマーケティングは、分析を元に消費者にアプローチし、どのような反応があったのかをフィードバックするというPDCAサイクルで、より高い効果を上げることが可能になるが、そのための条件の変更もツールがあれば容易に行え、PDCAサイクルをうまく回すことができるのである。
「ライトタイムマーケティングは、ツールの助けを借りないとできない部分があります。しかし、ツールだけでは当然ダメで、マーケターの知見をいかに生かしていくかが成功のポイント」(ISID/草野氏)。
「現在は、インターネットの行動解析ツールもあり、様々なベンダーさんがライトタイムマーケティングに対する試みをしている段階です。しかし、まだほとんどの企業が実践できていません」(Daarf/白井氏)。
そこで、優れたツールを持つISIDと、マーケットの高い分析力を持つDaarfが協力し、コンサルティングなども行いながら、ライトタイムマーケティングの実現を強力にサポートする体勢を構築している。
すべての業界で応用可能
近年、Webサイトの行動解析やデータマイニングなどの分析自体のニーズが上がっており、次世代のマーケティング手法としても業界を問わず注目を集めつつあるライトタイムマーケティング。
「プロモーションとしてDMを送ったり、レコメンドを付けて効果が上がるような業界ならば、どこでも効果を上げることができると思います」と草野氏は語る。その有効範囲は広く、効果の期待値も高いということだろう。実際、製薬会社のMRが次の提案に生かすということは、すでに行われているという。
「家電や車といった単価が高い業界でも、ライトタイムマーケティングのような手法を使うことでより、効果的な顧客アプローチが可能です。また将来的にはマーケティングという視点だけではなく、商品開発にも生かせるような仕組みにしていければと思っています」(ISID/草野氏)。
このように、ライトタイムマーケティングは、どの業界でもニーズが大きく、得られる効果も高いという。飽和した市場で、企業の競争力アップを強力にサポートしてくれる期待が高い「ライトタイムマーケティング」。次回以降は、その具体的な実現方法を掘り下げていく。