右肩下がりの音楽業界で生き残るには
「ライトなメッセージをライトタイムにライトチャネルで送る」ことでより高い効果を狙うライトタイムマーケティング。その実践環境をいち早く整えている企業が、日本にもある。HMVジャパンだ。
HMVジャパンは、全国の主要都市22ヶ所に全67店舗を構える音楽・映像ソフトの販売大手であり、E-コマースサイトによるオンライン販売でも音楽・映像・書籍で280万タイトルを展開している。
「音楽業界は、10年前の約6000億円という数値をピークに、徐々に売り上げが落ちています。今年に関しては、特に洋楽の落ち込みが激しく、前年比15%位の比率でマイナスに転じています」(清水氏:右写真)。
HMVの店頭に来店するのは20代女性が一番多い。これに関しては10年前と変わっていないが、このメイン顧客である20代女性は、1年に1~2回お気に入りのアーティストの新譜を買い、また来年まで来店しないという購買行動をとる傾向が多い。
そこでHMVジャパンが数年前から力を入れているのが、「他のアーティストも聴いてもらう為のマーケティング」だ。2年前にCRM推進部を発足し、清水氏が中心となってOne to Oneマーケティングの推進を行っている。
CRM推進のためには、システム活用が絶対条件
「以前から顧客を分析するという考え方はありましたが、マーケティング部門が迅速かつ詳細に分析するインフラがありませんでした。以前は、ひとつの資料を作るにも1~2週間かかり、施策に反映するのに3ヶ月ほどかかってしまう。これでは商材のスピードが速い音楽業界でCRMを実践していくことは難しい」(清水氏)。
IT部門にデータを取って欲しいという依頼は年間数百本ほどもあった。そこで、市川氏が中心となって1年半前にデータウェアハウスを構築に着手。店舗系システムとeコーマス系システム、2つの独立するシステムのデータをひとつのテーブルの中に収めて活用できる体制を構築した。
アナリティカルCRMとオペレーショナルCRMを一気通貫でできるシステムが必要だと考えた清水氏。CRM戦略をスピーディに推進していくにはITが必須だったため、分析担当者、プランナー、デザイナーが集まった最小単位を組み、ひとつの部署でマスからone to oneマーケティングを推進できる体制を築いたという。
「企画・検証の度に社内の開発部隊を動かすのは大変なこと。自分たちでできる仕組みが欲しい」と考えた清水氏。「個別にリクエストが来ても、もちろん、私達開発部隊は対応します。しかし、それではプログラムが使い捨てになってしまう」(市川氏:左写真)。清水氏の思いに応え、市川氏がシステムを構築していった。
以前から注目していたシステムを使ってマーケティングを自動化していくEnterprise Marketing Management (EMM)のコンセプトに共感し、EMM実現のための手段として、Affinium(アフィニアム)の導入を検討し始めたのが2008年3月頃。まずは社内開発で新規顧客に「サンクスメール」を送る際に購買履歴を元にレコメンドアイテムを付けて送るということを試み、従来のマスやセグメントメールよりコンバージョンレートが高いことを証明してAffiniumの予算を確保。Affiniumを導入し、9月中旬にシステムをリリースして、ライトタイムマーケティングなどのone to oneマーケティングをスピーディに推進できる環境を構築している。
【参考情報】
EMMとは、Enterprise Marketing Management (EMM) の略で、マーケティング活動を可視化、測定可能にし、マーケティングROIを向上させるエンタープライズソフトウェアの総称にあたります。HMVジャパンが導入したAffinium(アフィニアム)の詳細はこちらの記事で確認できます。