今回は従来の印刷業スタイルに満足できず、ネットショップ「印刷屋サッコ」を開いた佐古建夫さんにお話をうかがいます。壁にぶつかりながらも、3つのショップ店長として活躍するまでにせまります。後編はこちら。
店長紹介
佐古 建夫(さこ・たてお)1960年横浜生まれ。上智大学外国語学部卒業。印刷会社勤務を経て、1997年、
有限会社サッコグラフィクス設立。「印刷物作成請負業」からの脱却を目指し、自社オリジナル商品の開発を進めるとともに、ネットショップを立ち上げ、現在に至る。
楽天市場店の出店は2001年5月、
本店は2005年8月オープン。
Yahoo!ショッピング店も含めると3店舗をネットで展開中。
「英語が話せる会計士」を目指していた大学時代
佐古さんは、印刷会社を経営するかたわら、ネットでも印刷ショップを運営していますが、印刷業界に入ったのは、もともとご実家が印刷業を営んでいたからなんでしょうか?
いえ、父親はNHKに勤めるサラリーマンで、印刷とは関係のない仕事をしてました。
私は唯一のとりえが「英語が好き」という人間で、上智大学外国語学部に在学しているときは、経済学部の会計学関連の授業も取っていて、「英語が話せる公認会計士」になりたいと思っていました。1983年に交換留学で米国ウィスコンシン州立大学へ行ったときも、会計関連の授業ばかり受講していました(笑)。
まったく印刷業とは関係のない環境にいたんですね。それがどうしてまた印刷業へ?
帰国後、公認会計士の受験勉強をしましたが合格にはいたらず、当時付き合っていた女性、現在の家内の父親から、「もう受験はやめて、うちの会社に来ないか?」と誘われたのが25歳のとき。それが印刷会社だったんです。
そこでイチから印刷について学び、独立して現在の会社をつくられたわけですね。
はい。印刷の“い”の字もわからなかったんですが、その会社には12年在籍し、最後には営業部門の責任者をやっていました。退社して、自分自身で印刷会社を起業したのが1998年の3月です。独立してしばらくは、営業マンとして印刷物を受注し、印刷・製本等の作成作業はすべて外注して差益を稼ぐブローカースタイルで仕事をしていました。しかし、これでは多くの利益は望めません。
ブローカースタイルではいつか行き詰ってしまうと。でも、これは印刷業界では一般的な仕事のやり方なんですよね?
ええ。印刷業は建設業と同じ「受注産業」で、「商材」というものがないんですよ。「受注産業」といえば聞えはいいですが、私は「請負業」と呼んでいます。しかし、こういうビジネススタイルでは、社会全体が不景気になると、自然と価格競争に巻き込まれざるを得ません。
そこで、自社製品を持たない印刷業にあって、なんとかして商材を自分自身の手で作り上げたい!と起業当初から考えていました。それを実現するために、2001年5月に楽天市場へ出店することを決意したのです。