モバイルサイトは極めてパーソナルなメディアである
モバイルサイトが他のメディアと比べ最も特徴的なのは、“極めてパーソナルなメディア”であるということだ。
携帯電話の契約数は既に一億を超え、成人であればほぼ1人1台を所有している。しかも携帯電話はコミュニケーションツールということもあり、常に自身で持ち歩いて使用される。基本的には、他人に見せたり、共有したりすることはない。通話履歴やメールなどを見ても、その中でやりとりされる情報は極めて個人的な内容で占められているはずだ。
これは家族で共用しているテレビや、家に1台はあれど1人に1台あるとは限らないPCなどとは大きく異なる点である。それゆえ、モバイルサイトは他のメディアと比べパーソナルな情報や嗜好がダイレクトに反映され、秘匿性も高いものとなる。
モバイルコンテンツにおいても、例えば個人的嗜好が強く影響する音楽系コンテンツ(着うたフルなど)や、秘匿性が重要となる女性向けのTL(ティーンズラブ)・BL(ボーイズラブ)コミックが人気を博したことをご存じの方も多いかと思う。また、前回取り上げたように、ポータルサイトより個人的な事柄をやりとりするコミュニティサイトが人気になるということなども、モバイルサイトのパーソナル性が高いがゆえに起きている事象といえるだろう。
パーソナル=深く刺さるが広まらない
モバイルサイトがパーソナル性の強いメディアであることのメリットとして挙げられるのが、「利用者に深く刺さる」ということだ。つまり特定個人の嗜好にヒットし、夢中にすることができれば、継続的なリピートが得られる可能性が高いのである。
例えばケータイ小説。多くの人は書籍化され、ブームになったことでケータイ小説を知ったことだろうが、実はモバイルサイトが誕生して早い時期から、モバイルサイト上で小説を書くという文化は存在していた。他の人はほとんど知らない存在が、女子中高生という特定のターゲットに対して深く刺さっていたことで高い人気を博し、書籍化など、後のブームへとつながったのである。
一方、パーソナル性が強いがゆえのデメリットも存在する。それが「広まらない」ということだ。モバイルサイトはパーソナル性が強いがゆえ、個人の嗜好によって利用されるサービスも大きく異なってくる。それゆえ、モバイルサイト内だけで大規模なプロモーションを実施しても、大きな効果を得るのは難しいのだ。
例えば広告。これまでモバイルサイトのメディア価値が低いとされてきた要因の1つとして、ポータルサイトのような普遍的なコンテンツにアクセスが集中しておらず、大規模なプロモーションにあまり向かなかったことが挙げられる。最近ではSNSのように多くのPVを集めるコンテンツも増えてきたが、それでも嗜好によって利用されるサービスが異なってくることから、広まる範囲はやはり限定的だ。
こうしたことからモバイルサイトでは、ターゲットを絞ったアピールがしやすいメールマガジンやアフィリエイト広告の人気が高い。モバイルサイト専門に商売をしているコンテンツプロバイダーやECサイトの事業者であるほど、こうした広告手法を積極的に活用しているのである。