“手軽”にWeb更新ができるツールを求めていた時代
―― まず、CMSが普及した背景を教えていただけますか。
T氏 そうですね。2000年初頭くらいまでの日本の企業サイトは、まだ更新運用の改善が重要視される段階ではありませんでした。当時のWebサイトの多くはは「更新」とか「保守・運用」といった点よりも、「キレイで分かりやすいWebサイトを作ること」に力をいれていたと思います。
これは、当時のWebサイトはそんなに更新自体が多くなかったこともありますが、一方で日本のWeb制作業界はデザイン業界や印刷業界の経験を持った人たちが中心となっていたためか、システム面が弱かった。
サイトをシステムで管理して、更新運用を簡単にするという考え自体が、そもそも当時の業界全体にはなかったように思います。そのため、Webサイトの更新運用はHTMLが更新できる人がチカラ技でやるもというのが、業界の常識となっていたと感じます。
一方で、Webサイトの存在が重要視されるようになるにつれ、Web制作会社にキレイなWebページを作ってもらったのはいいものの、その後の保守・運用が企業のWeb担当の負担になりはじめました。
競合製品はdreamweaver!?
―― なるほど。では、当時の現場の状況を詳しく教えていただけますか。
T氏 Web担当者は、コンテンツの公開のために深夜や休日に対応するハメになったり、更新運用を外部委託していたために、緊急時でも土・日だと対応がしてもらえないなどの課題が山積みとなっていました。
また、一部のECサイトや金融・証券系のサイトを除き、当時のWeb制作会社が構築するシステムといえば、CGI、perlなどで作った簡単なレベルのシステムが中心だったため、CMSのようなデータベースと連携するシステムをWeb制作会社のディレクターなどに説明をしても意味が通じないという状況もありました。
Web制作会社の方にCMSの説明をしても、よくdreamweaverなどと比較されたり…。同製品は一本数万円、CMSは何百万円ですからね。比較対象ではないはずなんですが、なかなか理解してもらえず苦労した思い出があります(笑)。
―― まさに黎明期ですね。CMSというキーワード自体が知られていなかった。
T氏 そのとおりです。そのような黎明期を経て、徐々にCMSが一般のメディアで取り上げられはじめました。私の記憶が正ければ、大きく取り上げられたのは2003年に発売されたインターネットマガジンがはじめてだと思います(注1)。
当時は業界内でもCMSという言葉に対してもなじみがなかったので、、メディアがとりあげたということは当時大きなトピックでした。 これ以降、CMSはというキーワードは認知を高めていきました。そしてマーケットの成長とともに、CMSベンダー、Web製作会社を取り巻く環境も徐々に変化していきます。