プロジェクト:モンスターが主役!?
の新サービスをディレクターとして牽引する
モバイルSNS「GREE」など、インターネットメディア事業を展開するグリー株式会社。大躍進の収益源の1つが、釣りゲーム『釣りスタ』、キャラクター育成ゲーム『踊り子クリノッペ』などの無料ソーシャルゲームである。そしてこの6月、満を持して新しいゲームがリリースされた。輿水さんは、その開発プロジェクトにディレクターとして参加した、いわば仕掛人の一人だ。
「これが『グリーのソーシャルゲームだ!』という納得のいくモノを出そうという熱い思いが込められています。既存ゲームのいいところをすべて持ち合わせた上で、新しい技術や仕掛けを盛り込みました。現在の集大成といえるでしょう」と輿水さんも自信をのぞかせる。
グリーのゲームコンテンツの成功は、ゲームを「インターネットのコミュニケーションを楽しむためのツール」と位置づけ、これまでゲームをやらなかった人々も含め、老若男女に広くアプローチしたことにある。そして、短時間でも長時間でも、初心者でも熟練者でも、一人でも複数ならさらに、楽しめることが強みだという。どんなシーンにでも溶け込み、同じように既に生活の一部になっている携帯電話をメディアにしたことやTVCMの効果も大きかった。2010年5月現在、利用者は2000万人に届きつつあり、数年以内には3000万人突破を目標としている。それだけに、新サービスには内外の期待も大きい。その期待をしょって立つプレッシャーはなかったのだろうか。
「いや、アイディアも技術も、これまでできなかったことを盛り込むチャンスだと思いましたからうれしかったですね。誰もがそう思ったと思います。はじめにあったものは『モンスターがモチーフ』ということだけ(笑)。なので、『そもそもモンスターって何だっけ』という議論からはじめて、思いっきり自分たちのアイディアや意見を出し合うことができました。
アプリケーション開発チームは、プロジェクトの責任者であるプロデューサーと新人1名、エンジニア3名、ディレクター3名のわずか7名体制。それでもグリーの中では比較的大きいチームだという。
「このコンパクトさがグリーの機動力の1つかもしれません。いろんな得意分野を持ったメンバーがいますし、開発職と企画職が一体になって仕事をするので、アイディアがすぐ形になっていくんです。あと、とにかくみんなよく働くんです、それも楽しそうに(笑)。ただ、今回はものすごい数のキャラクターが登場するので、外部のデザイン会社さんに応援をお願いしました」
そうしたパートナーとの連携もディレクターの大きな仕事の1つだ。豊富な実績を持つ複数の制作会社と連携し、新人ディレクターがキャラクターの名付けから世界観づくりを行ない、それに基づいてディレクションを行なっていったという。そうしたフラットさ、柔軟さもグリーの推進力になっているのだろう。
「そうした作業を黙々とすることもありますが(笑)、エンジニアが開発に集中できるよう環境を整えるために、さまざまな人と会って調整することがメイン業務の1つとなります。パートナー企業の他にも、社内ではインフラ担当部門やプロモーション部門など、新サービスに関わる部署との調整を行ないました」
しかし、輿水さんは2009年8月に入社したばかり。誰に何を聞けばいいのか、模索しながらの調整はトラブルの連続だった。
「本当に試行錯誤の連続という感じでしたね。自分ばかりでなくて、グリーでの新サービス立ち上げは1年ぶりだったこともあり、みんなが試行錯誤(笑)。そもそも新しくサービスを立ち上げるための社内フロー自体もきちんと決まっていませんでしたし、仕様書があるわけでもない。でも、とにかくみんな徹底的に考え抜いて行動するし、責任感も強い。技術者として優秀というだけでなく、人間力も強い。その中で仕事ができるのは楽しいですね」
事実、チーム内ばかりでなくインフラ担当部門もプロモーション部門も、世の中の変化や開発チームからの情報に基づき自ら構想を練って打ち合わせの席に着く。それぞれの部署が自発的に動き、目標に向かって1つになっていく。その躍動感を存分に味わうことができたという。
「リリース直前のゴールデンウィークは、みんな自発的に出社していましたね。確かにきついものはあるけれど、新サービスの立ち上げはそれ以上に喜びがある。それを入社すぐに体験できたのはラッキーだったと思います」
それでは、さらにディレクターとしての仕事の喜びや苦労についてうかがう。(次ページへ続く)