クライアントのWebサイトの目的に応じて、
企画提案からデザイン・設計・実装までをトータルで手がける
日進月歩でのWeb技術の進化とともに、様々な表現手法が試みられ、様々な種類の魅力的なWebサイトが次々と製作されている。しかし、特に企業がクライアントとなって製作するWebサイトには、単にクリエイティブとしての魅力だけでなく、コミュニケーションツールとしての役割を果たす必要がある。
「どうしても、視覚的なものや面白さに目がいきがちですが、それだけが“デザイン”なのではありません。ビジネスアーキテクツでは、サイトの目的やコンセプトからきちんと設計され、導線やインタフェイス、システムに至るまで、すべてのプロセスを“デザイン”と解釈しています」
そう語るのは、ビジネス・アーキテクツのシニア・アートディレクターとして、現場で采配を振る青木誠さん。Webサイトが企業のコミュニケーションツールとして認識されはじめた頃から、ビジネス・アーキテクツが十周年を迎える今日まで数多くの企業サイトを手がけ、「Webby Awards」「東京インタラクティブ・アド・アワード」など、国内外の賞を次々と獲得してきた敏腕クリエイターである。
「企業が何をどう伝えたいのか、その意図や目的を汲み取り、必要なものを設計し、提供する。それを『コミュニケーションデザイン』と位置づけ、クリエイティブを通じて正しい姿を伝えられるようサポートすることが私たちの仕事です。
その中で、アートディレクターは、全体の設計を行ない、実装の指揮をとる重要な役割を担います。どうしてもアートというと、美術さんというか、表層的なデザインを考えるものと勘違いされがちですが、むしろ設計者と現場監督とを合わせた役割と考えてもらえればわかりやすいでしょう」
サイトのボリュームも増加し、目的も多様化する昨今、プロジェクトチームには様々なメンバーが関わることになる。たとえば、クライアントに対する折衝を行なう営業担当者、予算管理等も含めた全責任を担うプロジェクトリーダー、進行を担当するプロジェクトマネージャー、そしてアートディレクターが実装の責任者となる。
「アートディレクターは、企画を立て、企画に基づいた判断をするプランナーやディレクターの役割と、その判断に基づいて実装するデザイナーの役割とを担います。プロジェクトの規模や状況によっては、プランナーやディレクターが別に立ったり、アートディレクターの指示のもと、デザイナーやマークアップエンジニアなどが実作業を受け持つこともあります」
多くの人々が関わるプロジェクトだけに、あらゆる情報を企業側や実装メンバーと共有していくことが重要なカギとなる。そのためアートディレクターのアウトプットはインタフェイスデザインに加え、企画書やマニュアル、遷移図や構成案というように多岐に渡る。さらに、企画内容や判断などの「結果」以上に、青木さんが重視しているのが「プロセス」の共有である。
「企画の起点はクライアント企業ですから、営業担当者とミーティングやヒアリングから立ち合うようにしています。そして、クライアントとだけでなく実装メンバーとも共有できるよう常に意識していますね。その際には、決まったことだけでなく、それがどのようなプロセスを経たのかを共有する事が大事。スムーズにベストなものをつくるためには、全員の納得感を共有することが大切ですから」
その目的のもと,チーム内で徹底して行なわれているのが、プロジェクトメールの活用である。
「社内で20~30ものプロジェクトが動き、一人が抱えるプロジェクトも3〜10とまちまち。チーム改編や異動も頻繁にあります。そのため、なかなかリアルタイムで意識して同期をとるのは難しいのですが、少なくともメールを遡って見ることで、『なぜこうなったのか』という判断やアウトプットの理由を知ることができるでしょう」
この双方向のプロジェクトメールによって企画への理解や情報共有を進めるだけでなく、メンバーからのアラームや疑問等を共有することによって、ジャッジのための精度を上げることも可能だ。また、それぞれのメンバーの状況や負荷も知ることができ、リソースの最適分配も可能となる。
「プロジェクトは“生もの”ですから、変わっていくこともあり、メンバーも流動的です。そうした変化に柔軟に対応しながら、プロジェクトのクオリティを保ってゴールまで導いていくのが難しくも、楽しいですね」
そんな青木さんが考える、アート・ディレクターに必要なスキルや資質とは何か。(次ページへ続く)