そのため、ネットオークション上に掲載された出品物の情報が詳細でかつその内容に偽りがなく、また出品物の取引相場がネットオークションの参加者において把握できている場合においては、出品者が他のIDを利用して取引相場の範囲内で入札して価格を吊り上げたとしても、それは落札希望価格を高めに設定しているのと同様で、ネットオークションの参加者をして出品物の価値を誤信させるとまではいえないことから、「欺罔行為」には該当しない場合もあり得ます。
したがって、価額の吊り上げ行為から直ちに詐欺罪が成立するとは断定できず、その成否はケースバイケースで判断されることになります。
ちなみに、米国では、インターネット競売のイーベイを舞台に、自己の所有する商品に偽の入札価格を付けて価額を吊り上げていたとして美術商ら3人を詐欺などの容疑で逮捕されたケースが存在します。
高額での落札を希望するのであれば、落札希望価格を高めに設定すればよく、自作自演で価額を吊り上げる行為は、少なくともネットオークションの利用規約やガイドラインに反する行為ですので慎みましょう。
このイーベイを舞台に、入札価格を吊り上げて美術商ら3人を詐欺などの容疑で逮捕されたケースもある。

本稿中、意見にわたる部分は、筆者個人の見解を示すにとどまり、筆者の所属する法律事務所の意見を表明するものではありません。また、具体的事案により本稿中とは異なる結果が生じる場合があります。