伸び続けるオンライン動画のトラフィック
須賀氏の「今、自社のWebサイトで1本以上の動画を使っている方は?」との問いに対して、会場の3分の1以上の人が手を挙げた。「昨年のMarkeZine Dayでは、挙手された方は会場の4分の1ほどに過ぎなかった。やはり、この結果からも、動画マーケティングが浸透してきていることを感じる」。
ブライトコーブ社は、動画配信サービスをクラウドで提供しているテクノロジーカンパニーだ。ワールドワイドで2,700社以上の導入実績を持ち、月間ユニークビジター数は、1億3,500万人を誇る。「2006年に、YouTubeがGoogleに買収された辺りから、動画のトラフィックは伸び続けているが、2010年には、インターネットトラフィック全体の50%以上を占めるようになった」。(須賀氏)
動画といえばYouTubeのイメージが強いかもしれないが、実際は、全体の45%が一般企業によるWebサイトやECサイトのマーケティング利用で占められている。このグラフは最近よく耳にする「企業サイトのメディア化」という言葉を裏付けている、と須賀氏は語る。
米国のフォレスター リサーチ社による調査では、「動画がある場合、検索結果の最初のページに登場する確率が53倍高くなる」という結果が出ているそうだ。つまり、サイト内に動画を入れると、SEO効果があり、トラフィックの上昇も期待できるということ。その理由について、「動画は非常に情報量が多い。“ユーザーが求めている情報を提供する”という検索エンジンの使命にマッチするからではないか」と、須賀氏は分析する。
ユーザーの共感を得られた動画は、ユーザー自らの手によって、拡散されることも多く、サイトへの非リンク数が上がることも、要因のひとつとして、挙げられるのかもしれない。
動画の消費が拡大する2つの理由とは
ソーシャルメディアの普及
須賀氏のよると動画へのリファラーとして非常に伸びてきているのがソーシャルメディアだという。動画はバイラルしやすいメディアとしてクチコミが広がりやすく、ソーシャルメディアとの親和性が高い。実際、動画へのリファラー元として、FacebookはGoogleに次ぐ第2位へと成長してきているという。
動画の近くにはたいていTwitterやFacebookでシェアするためのボタンが設置してあり、バイラルが起こりやすい。「動画を見て終わりではなく、自社サイトに帰ってくるのがポイントだ」。(須賀氏)
スマートフォン市場の拡大
Quantcast社のリサーチデータによると、2013年には現在の66倍の動画がスマートフォンで視聴される、という。「スマートフォンが従来型の携帯電話と最も異なる点のひとつとして、“動画を見やすいこと”が挙げられる」と、須賀氏は語る。
言うまでもなく、国内市場でもスマートフォンのシェアはどんどん拡大の一途を辿っている。昨年には約600万台だったスマートフォンの販売数が、今年は1500万台を超えると推定されており、さらに、来年には、従来型の携帯電話(非スマートフォンデバイス)のシェアと、ほぼ同数になることが予測されている。一般ユーザーに普及するまで、もう時間は残されていないようだ。
「ソーシャルメディアを介した、動画の拡散」と「スマートフォンの普及による動画接触機会の増加」という、動画マーケティングを取り巻く2つの時代背景が相互作用して、その重要性が高まっているのである。
企業サイトで動画配信を行う際の3つの課題
こういった時代に動画配信を行おうとした際に、企業が抱える課題は次の3つだと須賀氏は指摘する。
- デバイス、インターネット接続環境、OS、ブラウザなど多様化する環境
- 動画再生だけに終わらないユーザー体験の提供(広告配信、動画視聴解析、セキュリティ、クチコミ機能など)
- ブランディングされたユーザー体験と高いエンゲージメントの提供
“iPhoneだとFlashが使えない”“モバイル端末では画面が小さい”など、デバイスが多様化することで生まれる、技術的な問題に悩まされる企業担当者は多いのではないか。モバイルやタブレット端末は、PCブラウザよりも、進化のスピードがとても速い。去年の今頃、iPadはまだ発売前でこんなに普及するとは誰が予想できただろうか? それなのに、今では、もう次のiPad2が発売されようとしている。
今後、国内でもどんどんスマートフォンやタブレット端末が増えていくにつれ、ますますキャッチアップしていくことは大変になるだろう。さらに、Google TVなどの非PCデバイスにも対応させようとすると、動画コンテンツの管理をするだけでも、一苦労だ。
はじめは1本の動画配信から始まっていたとしても、いざ、マーケティング活動の一環として動画配信を始めると、動画を見た後に、商品をその場で買ってもらいたい・メルマガに登録させたい、といった欲求が高まってくる。
しかし、動画コンテンツごと、デバイスごとに、導線の設計や効果測定までを、後から個別に追加していくというのも、その後の運用まで考えると、気が遠くなるほどの作業量だ。
こうした悩みを一挙に解決してくれるのが、ブライトコーブ社のオンラインビデオプラットフォームである。
エンコーディングやトランスコーディングと呼ばれるデバイスごとの画格に合わせた最適化から、配信・効果測定までサポートしてくれるため、毎日更新する企業のマーケティング活動の効率を図ることができる。
先端企業の動画活用事例
nissenTV
ニッセンでは売上1,300億円のうち、半分以上はインターネットを経由したものとなっている。インターネット経由での売上は対前年同期比で107.4%の成長を遂げており、その一端を担っているのがブライトコーブ社の動画配信プラットフォームだ。
ニッセンでは、nissen TVという動画配信サイトをPC/iPhone/iPad/Android向けに展開しており、モデルの香里奈が登場するCMなどを配信。動画を見ている間に、モデルが着ている服の商品詳細ページへ飛ぶリンクが右側に表示される仕組みになっている。
Flashが使えないiPhoneやiPadでは、HTML5を使った。「いつも肌身離さず持っているモバイル端末でもPCと同じクリエイティブを実現している。PC以外のタッチポイントを逃さないことが重要だ」。(須賀氏)
がん@魅せ技
がん@魅せ技は、フェーズワン社が運営する、医師向けの動画配信サイトだ。
サイトでネットワークした医師に対し、新商品をプロモーションするのが目的となっている。医師が実際に手術するシーンを動画で撮影。その手術シーンや医師のインタビューの動画をサイトで配信しているのだ。
ここでもPC/iPad/iPhoneに加え、ネイティブアプリも展開。医療機器メーカーの営業マンが、営業ツールとしてiPadを持ち歩き、忙しい医師に対して、動画をその場で見せてイメージを植え付ける、という活用の仕方もされている。
2種類のモバイルデバイス最適化
スマートフォンに対応するには、「モバイルウェブ」と「モバイルアプリ」という、2つの選択肢が考えられる。
モバイルアプリは、iPhone向け、Android向け、その他OS向け、と個別のアプリ開発が必要。ユーザーにもiTunesやAndroidマーケットから、アプリをダウンロードしてもらわないといけないため、いろいろな意味でハードルは高い。
しかしその分、ロイヤリティの向上やファンコミュニティの形成が期待でき、長期的な顧客との信頼関係を気付くには有効だ。一方、モバイルウェブとは、PCと同様に、スマートフォン端末からブラウザを使って、Webサイトを表示させる方法だ。PCサイトで配信している動画を流用することもでき、手軽にアクセスできるため、タッチポイントを逃がさない、という特徴がある。
それぞれの特性を理解した上で、より自社のマーケティング戦略とマッチした方を選ぶと良いだろう。
“スマートプレーヤ for Flash & HTML5”と“モバイルアプリ SDK”
ブライトコーブ社では、モバイルウェブとモバイルアプリの両方に向けて、サービスを用意している。
まず、モバイルウェブ向けのサービスが、この“スマートプレーヤ for Flash & HTML5”だ。これを使えば、アップロードしてある動画が自動的にデバイスに合わせて最適化されるため、特別なことは何もする必要がない、という優れモノだ。
そして、モバイルアプリ向けには、開発者向けに“モバイルアプリ SDK”を提供。アプリケーションそのものをオープンソースで利用することもできるので、これを雛型として、アプリケーションを構築することが可能となっている。開発時間&コストを削減することができるので、手軽にアプリを配信したい際に、最適だ。
「PCだけでなくスマートフォンやタブレット端末を活用したマーケティングを行う中で、見込み客の開拓や、既存客との長期的な関係構築に『動画』を役立ててもらえたら」と語り、須賀氏は本講演を締めくくった。