アドビ システムズ=クリエーター
冒頭、ナラヤン氏は、オムニチュア買収後のアドビ システムズについて次のように語った。
「買収直後は、オムニチュアとどのように協力していくのか手探りでした。しかし、分析・解析分野のリーダーオムニチュアとさまざまなものを創造し、新しいものを作り出してきました。たとえばアプリをどうするのか、ソーシャルでのエンゲージメントはどうするのか。こうしたアイデアと見方を共有し、デジタル世界におけるデジタルのコンテンツ広告などを創造してきたのです」
そして、スマートフォン、携帯電話、タブレットPCなど、モバイルの存在感がデジタルの世界で急速に高まっていることを強調した。従来型とは異なりモバイルに特化したモバイルアプリが次々と出現しており、2011年には117億のモバイルアプリが市場投入されるとの予測値が示された。さらに、タブレット端末は2012年までに4000万台まで伸長することが見込まれており、書籍も電子版での購買が進むと見られている。
こうしたイノベーションの中で、ナラヤン氏は自社を「創造者、クリエーター」と位置付ける。
「アドビ システムズはさまざまな遺伝的要素、歴史的要素を持っています。ビデオ、ウェブサイト、ビジネスの手法、アプリケーション、ゲームなどデジタル体験が変化する中、アドビ システムズはその創造者、クリエーターとして存在しています。また、オムニチュアとの融合により、コンテンツのクリエイションから配送、これをモニターし最適化していく部分まで一貫網羅できます。先は無限に広がっており、常にこうした変革に対応していく必要があります」
そして、アドビ システムズの3本柱でもあり、かつデジタル世界の中で顧客が体験していく主要素でもある、次の3つが挙げられた。
- コンテンツクリエーション
- デジタルパブリッシング
- デジタルマーケティング
コンテンツクリエーションでは、オンラインでの銀行取引の事例や、ナイキの活用事例、など具体案件が紹介された。また、パソコンのみならず、さまざまなモバイルデバイスに配信される状況にも触れ、「私たちはその中枢にいる」と述べた。
また、デジタルパブリッシングでは、すでに提供中の「Adobe Digital Publishing Suite」が出版界に新たなイノベーションを巻き起こしている事例を紹介した。中でも、マサチューアートリビングという雑誌の事例は印象的だった。
Adobe Digital Publishing Suiteを採用することによって、従来の出版界では不可能だった「動く広告」を実現。購読者は出版界とデジタル世界が融合した新たなデジタル体験を体感することができるようになったわけだ。
広告主はAdobe Online Marketing Suiteを用いて効果測定を行うことができ、従来に比べ3~4倍の広告効果が得られることがわかった。この事例は、デジタルパブリッシングとデジタルマーケティングが効果的に結びついた好例であり、アドビ システムズとオムニチュアの統合がもたらした革新だと言える。
また、オンラインマーケティングを語る際、信憑性のあるデータが不在という点が課題になっていた。この状況に解を与えるべく、「Audience Certification Program」というMRC承認プログラムも紹介された。2011年1月に実施されたDemdex社の買収も奏功して、同プログラムが実現したという。
ユーザーのエンゲージメントを測る際、ページビュー数、訪問数、日別、サイト滞在時間など4つの指標があるが、これらの数値が第三者機関から承認された数値となることを意味する。広告主も、同プログラムにより瞬時判断可能な信憑性あるデータが得られることになる。これまでのように経験・勘に頼るのではなく、データに基づいた判断が可能になる、つまりデジタルマーケティングがファイナンス領域に近い分野になったことは画期的だ。