レスポンスの魔術師が具体的なノウハウを語る
MarkeZine Day 2011 FUKUOKAのトップバッターとして登壇したのは、株式会社売れるネット広告社の加藤公一レオ氏。三菱商事やEuro RSCG Tokyo、ADKにてインターネットビジネスを軸としたダイレクトレスポンスマーケティングに従事し、レスポンスの魔術師とも評されている。
セッションでは、担当する広告主すべての費用対効果(ROI)を劇的に上げてきたという同氏のノウハウや、そのノウハウを凝縮して開発した同社のツール「売れるネット広告つくーる」が紹介された。「本日のセミナーでお話する『ノウハウ(仕組み)』をしっかり実践すると、確実にネット広告の費用対効果(ROI)を上げる事ができます」と宣言する加藤氏。その秘策とは?
儲かる仕組みを作るための3つのルール
加藤氏は、まずインターネット広告や通販で成功するための3つのルールを紹介した。
「無料モニター」「無料サンプル」「お試し価格」などのキャンペーンで見込客を集める。
広告で集めた見込み客に購入してもらい、既存客にする。いきなり商品を売るワンステップマーケティングではなく、あえて見込客からの引き上げを狙うことで、LTVを最大化させるのが目的だ。
既存客に何度もリピート購入してもらい、固定客として掴む。1回目の購入の購入で利益が出なくても、固定客になった後に利益が積み重なっていく仕組みが理想的。
この3つのルールに沿って、それぞれの段階で高い成果を出していけば、確実に儲かる仕組みができあがるというわけだ。講演内では、このルールを前提に、レスポンス向上の具体的なヒントが紹介された。その内容を、順次、見ていこう。成功の法則は頭でわかっていても、実践できていないポイントがきっと見つかるはずだ。
広告は専用ランディングページに飛ばすべし
まず、「高いレスポンス」を実現するための方法として、広告からの誘導を既存サイトの「トップページ」や「商品ページ」ではなく、“瞬発力と勢いで申し込ませる”構成の「ランディングページ(LP)」にする、という手法が紹介された。必要最低限のコアな情報を提供し、「お申込みへの誘導」のみを意識したページを制作すると、コンバージョン率は劇的に上がるという。
さらに、ランディングページをフォーム一体型にして遷移を短くすることで、劇的にコンバージョン率が上がるという。通常、「ランディングページ→商品詳細→カゴ(商品確認)→ログイン→お届け先→お支払い方法→入力内容確認→注文完了」という遷移を辿る。しかし、これでは途中で離脱する可能性が高く、効率的でない。
加えて、ユーザーがフォーム記入後に表示される確認ページでアップセルさせたり、申込完了ページを活用してクチコミを広げるような施策も驚くほど効果的だという。
クリエイティブは要素ごとにテストを繰り返して組み合わせるべし
次に加藤氏は「売るためのクリエイティブを作るときには、とても慎重にならなければならない。なるべくレスポンスが低下するリスクを省き、確実・堅実にレスポンスを上げていくクリエイティブ作りをしていく必要がある」と、広告クリエイティブを高いクオリティで維持し続けるために何をすべきかについて言及した。
今までの広告業界では、「1つのクリエイティブプランを、完結された1つの“作品”」として見る風潮にあり、あるクリエイティブプランを実施してレスポンスが悪いと、その作品自体が悪いという事で、まったく新たなクリエイティブプランを作ってきた、と加藤氏は指摘する。もっと『シンプル』に『統計学的』に考え、各要素を単純に組合せれば良いとし、『Direct Creative Optimization(DCO:クリエイティブ最適化)』という手法を紹介した。
DCOでは、1つのクリエイティブプランの要素を「キャッチコピー」「写真」「構成(デザイン)」などに分解。要素ごとでクリエイティブのスプリットランテスト(A/Bテスト)を行い、「アドエビス」などの効果測定ツールで反応を測定し、最終的に各要素のスプリットランテストで一位になったものを単純に組合せる。
インターネット広告のクリエイティブにおいては、アイデアの良さといった芸術的発想ではなく、要素の組合せという統計学的発想で取り組むことで、確実/堅実にレスポンス率は上がると解説する。
メディアプランにも最適化の概念を
3つ目に紹介されたのが、メディアプランのレスポンス効率を上げ続ける方法だ。
「インターネット広告では、“採算がとれる媒体メニュー”と“採算がとれない媒体メニュー”で、驚くほどの差が出る」と語る加藤氏。どんなに美しいターゲット論やロジックで作成されているメディアプランでも、どの媒体のどのメニューが低CPAで獲得できるかは、実際にやってみないと分からない。想定CPCが低くてもCPAが高くなってしまう媒体もあるし、想定CPCが高くてもCPAが低くなる媒体もあるという。
「女性向けの商品なのに、女性向け媒体よりも普通のポータル媒体の方が、CPAが良い場合もある。さらに、媒体と商品やクリエイティブとの相性なども複雑に関係し合っており、最初から媒体メニューの成功を予測できるものではない」(加藤氏)
インターネットの媒体は数百社、媒体メニュー数は1万種類以上あると言われている。広告枠の中から、どのようにしてメディアプランを策定すれば良いのだろうか。これも前述のクリエイティブと同様に、より『シンプル』に『統計学的』に考えるべきだと加藤氏は指摘する。
「不思議な事に、インターネット広告では一度効率良くとれた(成果が出た)媒体メニューは、何度実施してもかなり高い確率で効率良くとり続ける事ができる。逆に、一度ダメだった媒体メニューは、何度行ってもダメ。良い媒体メニューを残し、悪い媒体メニューを外す。これを繰り返すだけで最強のメディアプランになる」(加藤氏)
これは、「Direct Media Optimization(DMO:メディア最適化)」という手法で、広く、浅く、できるだけ多くの媒体メニューに分散してメディアプランニングを行い、効果を測定し、効率の良い媒体メニューだけを「メディアポートフォリオ」に、効率の悪い媒体メニューは「ブラックリスト」へ移すようにする手法だ。
インターネット広告のメディアプランはターゲティング論やロジックだけでは、確実にレスポンス率を上げることは難しい。インターネット広告のメディアプランは、継続的なメディアポートフォリオ作成で、確実・堅実にレスポンス率は上がる、と説いた。
引上率・リピート率を向上させるには段階的なページとフォローメールを
セッション内では、さらにレスポンスだけでなく、引上率とリピート率を向上させる方法も紹介された。
「世の中のほとんどのインターネット広告や通販は、レスポンス・引上・リピートともにショッピングサイトに誘導しているだけだ」と語る加藤氏。見込客・既存客・固定客と、それぞれのステージに合わせた専用ランディングページを用意して誘導することで、引上率・リピート率は大幅にUPするという。
さらに、そのサイトへの誘導に関しても、単純にメルマガを配信するのではなく、ユーザーそれぞれのステージ(ステータス)に特化し、消費サイクルに合わせて専用フォローメールを配信することで、劇的に引上・リピート率が上がると語る。
「インターネットユーザーは、ライフスタイルに合わせて毎日同一時間帯にインターネットにアクセスする。ユーザーの初回購入時間をベースに、その後のメールの配信時間を設定してフォローメールを配信することで、引上率・リピート率は格段に上がる」(加藤氏)。
さらに、「なぜ、全てのインターネット通販は、2回目の申込み以降も毎回フォーム入力をしなければならないのか?」と疑問を投げかける加藤氏。会員向けの「ID・パスワード方式」もユーザーが忘れてしまう可能性もあり、都度ログインするのが面倒だという面もある。
「フォローメールにユニークなURLを表記しておき、それをクリックするとすでに個人情報がフォームに入っているようにする。つまり、注文ボタンをワンクリックするだけで購入までスムーズに進める状態のページが現れる仕組みを作っておけば、引上率・リピート率は劇的に向上する。『DMなどの印字つき返信ハガキ』と同じ概念だ」(加藤氏)
ノウハウを凝縮した「売れるネット広告つくーる」
加藤氏は、こうした自身のノウハウを詰め込んだツールとして、中小企業向けのASPサービス「売れるネット広告つくーる」を紹介。ランディングページの制作から、フォローメールの配信といった、インターネット通販に必要な機能をワンストップで提供するツールだ。テンプレートが用意されており、ブログのように簡単にランディングページ作成し、フォローメールを実施できるのが特徴。さらに、制作中に入力する全ての項目に、加藤氏からのワンポイントアドバイスが入っており、指針とすることができる。
また、同ツールでは7月から広告効果測定システム『アドエビス』との連携を開始。8月末まで利用料無料のキャンペーンを実施しているという。
最後に、加藤氏は「本日のセミナーで話した『ノウハウ(仕組み)』をしっかり実践すれば、100%確実にインターネット広告の費用対効果(ROI)を上げる事ができる」と再度宣言し、講演を締めくくった。