現実には課題が多いDo Not Track
こうして動き出したDo Not Track。2011年11月現在、Firefox 4、IE 9、Safari 5.1以降のWブラウザに実装されている。しかし、Firefox以外は設定方法が分かりにくいなどの問題もある(※)。
10月31日には、オプトアウトの設定変更には課題が多いとするユーザビリティ調査結果がカーネギーメロン大学から発表された。
また、Do Not Trackの普及にあたり、まだ定義すべき点が残っている。

行動ターゲティング以外にどこまでを対象とするのか?
収集と活用:
ベンダーは、オプトアウトしたユーザーのデータ活用を停止するのみで、収集は続ける。しかし、FTCはデータ収集もNGと主張する。収集と活用をどう考えるべきか?
ファーストパーティとサードパーティ:
サイト運営者ではないサードパーティによる追跡が規制対象となるのは分かりやすいが、ファーストパーティ(サイト運営者)によるマーケティング活動も対象とすべきか?
表示頻度の調整:
同じ広告を何度も表示しないようにするのもNGか?
アクセス解析:
個人を特定しない形で集計するアクセス解析やリサーチはOKか?
Do Not Trackを、どのように広めていくのか?
現状は、法律による規制が無い。Do Not TrackはHTTPヘッダでオプトアウトの意思を表明するだけの仕組みなため、各ベンダーがそれを読み取って対応しないと意味が無い。自主規制のみで、どこまで強制力を持たせられるのか? 法的な規制や罰則は必要か?
EUにおける法規制の動きとどう歩調を合わせるべきか?
という疑問を投げかけ、質疑応答でも明確な結論は出ないまま、セッションは終了した。難しい問題であり、議論と調整を続けていく必要があるのだろう。
アクセス解析関係者が日本でできること
というわけで、Chrome以外の主要ブラウザへの実装は終わったものの、実質的にはまだ機能していないDo Not Track。Googleはまだ、あいまいなDo Not Trackに対して静観を続けている。マイクロソフトはIE 9での対応を終えたものの、Do Not Trackのみでは不十分とし、独自のプライバシー保護機能も提供している。AppleはOS X Lionに付属のSafari 5.1に実装したものの、「開発」メニューを表示しないと設定を変更できないため、実験的な実装をしたのみだ。さらに重要なのは、Do Not Trackに準拠する広告系のベンダーがまだ少ないことだろう。
一方、EUでは厳しすぎる法規制と国により異なる解釈・対応のため、サービス提供側にとっての負担が増え、カオス状態が続いている。最近は当のFTCも、“時期尚早であり、時間をかけて議論していく必要がある”というスタンスをとっているようだ(参考記事:FTC official: Do not count on Do Not Track just yet:Cnet)。
いずれにせよ、プライバシー保護は時代の流れであり、ブラウザなどの仕様が変われば日本も直接的な影響を受けるため、議論や対策を進めておく必要がある。そこで、筆者が考える「アクセス解析関係者が日本ですべきこと」を紹介し、本稿を締めくくりたい。
- 計測データの内容と必要性を見直す
- プライバシーポリシーに取得データの内容と目的、オプトアウトの方法を明記する
- 利用しているCookieの棚卸をする
- サードパーティCookieを利用している場合は、ファーストパーティCookieへの移行を進める
- WAA(Web Analytics Association)の「Webアナリスト倫理規定」(Code of Ethics)を読んで理解し、賛同する場合は署名する