日本初のインタラクティブエージェンシー(デジタル領域の総合広告代理店)として誕生し、企業のデジタルコミュニケーションを総合的に支援しているスパイスボックス。本連載では、スパイスボックス プロデューサーの物延秀と、スパイスボックスと共にインタラクティブコミュニケーションを生み出す、様々な分野のプロフェッショナルが、5回に渡り対談を実施。
第1回となる今回は、ソーシャルメディアを使った様々な企業プロモーションを企画してきたnuuoのお二人(林智彦氏、千房けん輔氏)と、ユーザーにウケるソーシャルメディア企画」をテーマに議論しました。福岡から参加の千房氏は、自ら開発したスカイプ人形"nubot"(人形にiPhoneを組み込んで遠隔での会話、操作ができる)での参加。なんともインタラクティブな会議となりました。
ソーシャルメディアをユーザーの生活環境の一部と捉えた企画IS parade」
物延:ソーシャルメディアが企業マーケティングに活用されることは珍しくなくなりましたが、成功事例と言えるものはまだまだ少ない現状があると思います。その要因に、ユーザーに受け入れられるソーシャルメディア企画のポイントを捉えていないということが挙げられると思います。なので、今日は“ユーザーにウケるソーシャルメディア企画とは? ”をテーマに話を進めたいと思います。まず、spiceboxがご一緒させていただいたIS Paradeの話からはじめましょうか。
林:IS Paradeは、TwitterIDを入れて遊ぶようなジェネレータやソーシャルグラフを使って盛り上げるコンテンツは少なかったということと、ソーシャルグラフでつながっている人も一緒に嬉しくなるような方向性にすれば、拡散に繋がっていくだろうという思いからスタートしています。
物延:Paradeというアイデアも良い切り口でしたね。
千房:当時、自分自身がTwitterに自分が嵌っていたこともあって、ソーシャルネットワーク自体が生活の一部でした。そのため、ソーシャルメディアで何が面白いのか、どこが重要なのか、という微妙な温度感を自然に感じ取れていたと思っています。その感覚がParedeのアイデアの根幹にあります。
仕組みから考えるというよりは、普段自分が使っている中での楽しさを最大化することにフォーカスするというような考え方です。普段使っていて、Twitterのフォローされたりフォローしたりする行為は、ある意味で祝福のようなものだと感じていたので、そのビジュアライズを試みたのがParadeっていうアイデアでした
物延:ソーシャルメディアはツールじゃなくて、ユーザーの生活環境の一部という視点が重要なポイントですね。
千房:普段過ごしている日常が、ハレとケでいうケの状態だった時だったとしましょう。その中に、祭というハレの部分を演出したということです。それが、ソーシャルメディアという日常生活の中ではっちゃけたいというTwitterユーザーの欲求にマッチしたのかなって思います。
物延:ソーシャルメディアをマーケティングで活用する際に、情報拡散ツールとして考えてしまうことがあります。ユーザーの生活に溶け込まないから受け入れられず、結果、拡散もしない。IS Paradeはユーザーの生活環境としてソーシャルメディアを捉えた企画だったことが上手くいったと言えると思います。
千房:そうですね。IS Paradeは、ソーシャルメディアというユーザーの生活環境に無闇に商品情報が入らないよう気を使って設計できたことが良かったのかなって思います。
物延:ID入力して延々パレードが続くだけっていう構造が、ユーザーにとって新鮮だったということもあると思います。ソーシャルメディアの企画って、濃く深くコミュニケーションして煩わしく感じさせてしまうものが多い。その中で、いかに潔く骨太な企画にするのかっていうのは重要ですね。
林:IS Paradeは右上から流れてくるだけだけど、最初はParadeにズームすると人が3Dになっていて、色んな角度から見れる機能をつけようという話がありましたが、それは余計な要素なんじゃないかってことでやめた経緯があります。
何かリッチなアクションがあったほうが良いように感じますが、シンプルなことを突き詰める方が大切だなと。3Dはやめるけどパレードの歩き方は扇形のほうがいいのではないかとか、そういうパレードの要素はこだわりました。
物延:ソーシャルメディアという生活環境に漂う感覚をつかんで、シンプルにコンテンツを突き詰めたことがユーザーの間での自然な拡散につながったと言えるかもしれないですね。