Webサイトを「何から」つくったか
Webサイトからの営業成果が出ていない企業には必ず聞く質問がある。それは、「Webサイトを『何から』つくったか?」ということだ。Webサイトを作るには、必ず元となる原稿や図や写真がある。大元となった資料は一体何だろうか?
私に相談にいらした、ハードウェア等の販売を行うH社にも同じ質問を聞いてみた。すると、『ハードウェアH』のWebサイトは「製品カタログ」をもとに作成しているとのことだった。確かに、紙の製品カタログやパンフレットをベースにWebサイトが作られるケースは他社でも多い。
だが、ヒアリングを続けていくと奇妙なことがわかってくる。『ハードウェアH』に問い合わせがあってからの営業フローはこうだ。
『ハードウェアH』のWebサイトには「お問合せ」と「資料請求」の窓口がある。「お問合せ」に投稿があった場合、営業担当のメーリングリストに投稿され、新規営業担当のいずれかのメンバーに1営業日以内に担当付けが行われ、後2営業日以内には返信を行っている。
一方、「資料請求」があった場合は、こちらも営業担当のメーリングリストに投稿されるが、その後、営業事務スタッフから3営業日以内に、資料が送付されるとのことだった。送られる資料は会社概要と「製品カタログ」だ。
営業フローとしてはよくある流れだ。しかし、顧客の視点で見つめ直して欲しい。よく考えれば「製品カタログ」からできたWebサイトを見て関心を持ち、資料請求をしたのに、郵送されてくるのは「製品カタログ」という事実に気づく。
営業プロセスのステップをひとつ越えたのに、提供される情報がWebとほとんど変わらない。顧客はもっと突っ込んだ資料や情報が欲しかった可能性が高いのではないだろうか。
さらに、H社が提供する別の『クラウドソリューションH』についても聞いてみる。ソリューション型の新商品だったため、まだ製品カタログがない。そのため、『クラウドソリューションH』では、よく使う定型の「営業提案書」をもとにWebサイトが作られていた。 『クラウドソリューションH』に問合せがあった場合の営業フローは次の通りだ。
- 新商品のため、積極的にアプローチを取りたい
- 問合せや資料請求を含め、すべてのリードに対して電話でアポイントを取っている
- アポイントが取れたら、まずは基本的な説明をするために、よく使う「営業提案書」で営業活動を行なう
- 食いつきがよければ、個別の提案書を作成し、さらに深い商談にもっていく
営業の流れとしてはよくあるケースだ。しかし、顧客の視点になって冷静に考えてみて欲しい。定型の「営業提案書」からできたWebサイトで関心を持ち問い合わせをしたのに、同じ情報源の「営業提案書」で初回訪問が行なわれるのだ。
口頭でヒアリングをしながら説明が行なえる分だけ、製品カタログのケースよりはましかもしれない。だが、同じような内容でプレゼンを繰り返していては、「アピール内容に乏しいから同じ内容しか出て来ないのではないか?」「コンサルティング力が弱い会社なのではないか?」と疑われてしまいかねない。特に高額な製品・サービスやコンサルティング要素が強い製品・サービスを販売する場合は、コンサルティング力が弱いと思われること自体が大きなデメリットとなってしまう。