メールマガジンの負のスパイラルに陥っていないか
BtoB企業のマーケティングにおいても、メールマガジンはひとつの手法として定着してきた。実際に、Webサイトだけでなく、メールマガジンの発行や蓄積した顧客情報をいかに活用するかをご相談されることも多い。しかしながら、思い通りの成果をメールマガジンから上げている企業は決して多くはないのが現状だ。
ITコンサルティングを行なうJ社でも、5年以上に渡りメールマガジンを発行していた。だが、メールマガジンを発行してもクリック率は3%と伸び悩み、顧客からの反応は少ない。
メルマガのリストは8,000件くらいあるものの、クリック率が3%であることを考えると240クリック程度しか獲得できていない。かつてはセミナー集客のメールを打てば勝手に予約が埋まったものだが、今やメルマガだけでは期待している集客の半分もままならない。
そこで、まず私はメールマガジンの内容そのものよりも、メールマガジンの会員として登録されているユーザーが、アクティブなのか否かの調査を行なった。1本あたりでは3%かもしれないが、いろいろなユーザーが入れ替わりながらクリックしている。その構造がどのようになっているのかを調べた。
すると、1年間通算で発行された50本のメルマガを横串で見たとき、クリック経験者はわずか15%にしかすぎなかった。セミナーなどの案内が各ページにあるため、実際にセミナーに参加や成約をしなくとも、すくなくとも検討したことのある人であればメールマガジン内のクリックを促す仕掛けになっている。それでも累積のクリック率が15%ということは、85%の人は1年間の期間があったにも関わらず一度もクリックすらしていない。おそらく大半は開封すらしていないのが現状だろう。
このような顧客のアクションが少ない状態のメルマガを生き返らせるには、相当の困難を要する。メルマガのコンテンツをいじったりタイトルを少々いじったりするだけでは抜本的な改革にはならない。J社もまた典型的な「メールマガジンの負のスパイラル」に陥った結果であることが分かった。
メールマガジンの負のスパイラルとは、メールマガジンが少しうまくいかなくなると気づけば効果がほとんどなくなってしまい、最終的に手の施しようがなくなる現象だ。戦略や戦術を煮詰めずに「とりあえず他社もやっているから」「とりあえずデータがたまっているから」と、メールマガジンをはじめてしまったケースで起こりやすい。
メールマガジンの反応が少し落ちてきたなと感じたら、負のスパイラルがはじまっている兆候だ。メールマガジンの反応が悪くなると、予算も人員も割かれなくなる。すると、メールマガジン独自のコンテンツをおこす工夫や労力も失われてくる。
メルマガの中身は、ほとんど無意味な編集長の挨拶と編集後記、何の味気もない売り込みの要素になりやすい。そうなれば、メルマガの反応はさらに落ちる。結果、社内での重要度がなおさら下がる。
メルマガの建て直しが必要だという議論になり、一時しのぎで編集長を入れ替えたり、新たなコーナーを入れてみたり、社長が奮起してコラムを書いてみたりはするが、顧客が冷め切った状態では時すでに遅し。
メルマガスタート直後に、真剣に改善プロセスに取り組んでいれば効果につながったかもしれないコンテンツも、効かなくなる。ここまでくると、メールマガジンを再起させることが難しくなる。メールマガジンという手法そのものを疑わなければならないレベルとなってしまうのだ。
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