POS市場において世界最大シェアを誇るIBMが事業売却
8月1日、IBMと東芝テックは、IBMのリテール・ストア・ソリューション(RSS)事業を東芝テックへ売却する手続きが完了したことを発表した。この買収により東芝テックは、POS(Point Of Sales system)端末の世界トップシェアのIBMを取り込むことで、世界シェア30%に到達する。
東芝テックの狙いは国内トップシェアではあったものの、国内市場は停滞期にあり海外進出への足掛かりとしてIBMのシェアが魅力的であったこと、今後のビッグデータ・アナリティクスの時代にPOSから発生するデータが潜在的に重要になるとの判断と、O2Oなどのインターネットクーポンとの連携強化が狙いだという。東芝テックはこの買収によってIBM製のPOSを使用していたウォルマートやコスト、トイザラスといった大手小売り業者への販路を手に入れることになる。
IBMは2000年以降、ハードウェア製造からサービス、ソフトウェアを主体とするビジネスモデルに移行しており、ハードウェア製造事業の売却を進めている。今回もその一環と見られる。 POS事業の拡大を狙う東芝テックと、サービス業へのシフトを推進するIBMの両社の思惑が一致したと言える。
ハードからサービスへと体質をシフトするIBM
しかしながら、IBMが事業譲渡した事業領域はその後業界全体として市場が縮小する傾向にある。2003年の日立製作所へのハードディスク事業売却は、その後ストレージ単価の下落によりコスト競争が激しさを増し、2011年に日立製作所はWestern Digital社に事業を売却した。2005年のパソコン事業のLenovo社への売却もLenovo社はその後も好調を維持しているが、パソコン市場全体がスマートデバイスの登場と共にポストPCの時代と呼ばれるようになった。
ハード事業売却を進める一方で、SSDのような成長が見込める分野の買収も実は行っている。将来の市場縮小や拡大領域を予見したかのようにここ最近のIBMの事業譲渡は上手くいっている。
創業から100年を超え、常に時代の流れと共に変化してきたIBMが、なぜいまPOS事業を売却したのかを考察してみよう。