「カスタマーリングス」でソーシャルCRMを実践
とはいえ、前述したように生活者と対話するのは簡単ではない。具体的に同社では、どのように企業のソーシャルCRMをサポートしているのだろうか。
「ソーシャルCRMを実現するには、3つのステップがある。まずソーシャルリスニングを実施し、次に情報発信と関係構築を行う必要がある」と鈴村氏。この2ステップを経てソーシャルCRMが可能になる。
前段階の関係構築のステップでは、プラスアルファ・コンサルティングが提供するソーシャルCRMツール「カスタマーリングス」の伝播ネットワーク分析が役立つ。これはある話題について、Twitter上で誰が拡散しているのか、インフルエンサーやハブになっているユーザーを可視化したものだ。自社の発信した話題をよくRTしてくれ、それが広く伝播しているようなユーザーは、自社にとって積極的に関係を構築したい人だと言える。
では次に、どうすればいいのか。そうした人を中心に、「○○社の△△、買ってよかった」という投稿にはお礼やお得な情報を、「△△って□□機能あるのかな」といった疑問には適切に応答することで、顧客のロイヤルティを向上していくのだ。このようなTwitterを使った能動的な顧客サポートをアクティブサポートと呼ぶ。
「ただし、闇雲に話しかけては逆効果になってしまう場合もある。カスタマーリングス上では該当ユーザーの発言数やフォロワー数、前後の発言などを簡単に見られるようになっているので、例えば友達との会話に割り込んだりするのは避けるなど、個別の対応を効率的に行うことができる」(鈴村氏)
これからは“情報活用力”がマーケティング成果を左右する
先に述べたアクティブサポートを、先駆けて取り組んでいるニッセンやアスクル、ファンケルなどで「カスタマーリングス」は採用されている。TwitterだけでなくFacebookも同様に詳しく分析し、コンタクトを取ることができる。さらにメールマーケティング機能も充実しているので、自社の顧客や潜在顧客との一貫したコミュニケーションをスムーズに、かつ効果的に行うことが可能になる。
鈴村氏は、「ソーシャルメディアの登場でCRM戦略は変わった」と指摘する。従来は、まずターゲットを絞らない幅広いアプローチを経てメールアドレスや住所を取得し、会員リストを作成。そこから優良顧客化を図るのが定石だったが、ソーシャルCRMでは前述したように自社や商品に興味を持つ人、さらに商品カテゴリに興味を持つ人まで検出して接触することができる。つまり、ピンポイントでファンになってほしい人を見つけ出し、関係を築いていけるのが、ソーシャルCRMの大きな特徴なのだ。
また、ソーシャルCRMの段階でもソーシャルリスニングと同様に、オープンなプラットフォームで競争しているからこそ競合分析も容易だ。例えば競合企業と顧客とのやり取りを分析することで、自社の戦略を調整していくこともできる。
「これまでは情報収集力が成否に影響したが、今や情報は検索すれば誰でも手に入る。今後は情報を活用する力がマーケティング成果を左右する。情報活用力をつけるには、つぶやきという言語情報の適切な解析と、その膨大な量、つまりビッグデータへの対応が欠かせない。そのためにテキストマイニングは大きな武器になる」と鈴村氏は語り、今後のソーシャルメディアマーケティングに大きな示唆を与える講演を締めくくった。