選択肢が多すぎると選べない、という顧客心理
ある有名な実験によると、店頭で来店客に6種類のジャムを紹介して選んでもらった場合と、24種類の中から選んでもらった場合とでは、前者のほうが約6倍の確率で購買行動に至ったそうだ。
「選択肢が多いと“Choice Overload”といって、決断に伴う心理的負担が大きくなり、意思決定の力や購買意欲が削がれてしまう状況に陥る。ネット上は制限がない分たくさんの商品を展開できるが、あれもこれも提示しては逆効果になる。適切に接点をつくらなければ顧客を捉えることができない」と、ブレインパッドの杉原洋輔氏は指摘する。
社員の約4割にアナリストを擁する同社は、これまで金融や小売・EC、広告代理業などさまざまな業種にデータ分析やCRMソフトウェアの販売、ASP提供などのサービスを展開してきた。その中で最近は特に、自社の顧客情報をもっと有効に活用していくためのデータ分析のニーズが高くなっているという。
「生活者が接している情報の量も膨大だが、企業が取得しうる生活者の情報もまた膨大になっている。そうした環境では、システムの力を駆使して顧客情報を把握・分析し、一人ひとりに合った情報を適切に提供していくという一貫した流れが必要になる」(杉原氏)
今、求められている“情報コンシェルジュ”
ここで杉原氏は、ネットユーザーには顧客を理解する存在として「情報コンシェルジュが求められている」と語る。ホテルやブティックのコンシェルジュと同様に、情報コンシェルジュとは顧客のニーズに応じて、適切な情報を適切なタイミングで提供してくれる役割を指す。
「情報コンシェルジュに必要な要件は2つある。ひとつは『顧客理解』、つまり一人ひとりの嗜好性をインプットすること。もうひとつは『関係深化』、インプットした情報に基づいたアウトプットとして一貫したコミュニケーションを図ることだ」と杉原氏。こうした役割を備えられた企業が、この膨大な情報量の中で顧客をしっかりと捉え、理想的なCRMを展開することができるのだ。
「顧客理解」の段階では、2つの項目の掛け算で考えていくことが肝要だという。その項目とは、購買履歴や年齢など既存の顧客属性データと、いつどんな行動を取ったかという行動履歴データだ。例えばECサイトでは、商品詳細ページを見て検討したが止めたり、買い物カゴに入れたものの結局購入しなかったりした場合も、「その人がこの商品に興味がある」ことを示す重要な情報になる。それをつぶさに拾い、属性データと掛け合わせることで、よりリアルなユーザーの姿を把握することができるわけだ。
そして「関係深化」の段階では、前段で分析した顧客情報に基づいて、Webサイトとメール、あるいはオンラインとリアル店舗やコールセンターなどのオフラインを横断的に、一貫性のあるコミュニケーションを継続的に展開していく。
行動履歴をスコア化し適切に分析する「Rtoaster」
とはいえ、前述したようにこうした実施内容を手動で行うのはもはや無理がある。そこで役立つのが、ブレインパッドが提供するWebプラットフォーム/スコアリングエンジン「Rtoaster」である。端的にいうと、前述の「顧客理解」フェーズで挙げた行動履歴をスコア化するものだ。
「行動履歴を追うといっても、例えば流入経路はバナー広告か検索か、検索ならどんなワードを経由したのか、それからサイト上でどう遷移しているのかなど、とても人的作業では使える形でデータを蓄積できない。そこでRtoasterでは、これらの行動をスコアとして顧客1人1人の単位で蓄積することで閲覧性を高め、そこでこちらからどういうアクションを取るのが望ましいかを自動で分析する」
同社の調査では、現在Web上の行動履歴と属性情報の両方をカスタマイズすることなく、容易に扱えるツールはRtoasterのほかにないという。
ネット上でのOne to Oneマーケティングを実現
また、Rtoasterは、イギリスを本拠地とし全世界で事業を展開するEmailvision社のマーケティング支援システム「Campaign Commander」と連携することで、リアルな顧客の姿を反映させたメールマーケティングやキャンペーンの実現もサポートする。
「Campaign Commander」は、名だたるグローバル企業を中心に4500社以上の企業に導入されている。某有名自動車メーカーでは、
「これからますます、まるで常連顧客を迎える店頭と同じような、きめ細やかな“接客”がネット上でも求められるようになる。高度な分析技術をいち早く取り入れて、機会損失を防ぎ、より豊かな関係を顧客と長期で築くことが大事だ」と杉原氏は強調する。
本ページ下部からダウンロードできる講演資料には、ここで紹介しきれなかった企業事例やツールの機械学習能力、広告の費用対効果を高める策などが掲載されている。データを活用したCRMへの理解を深める参考にしてはいかがだろうか。