マーケターの方も、O2Oの技術的な側面について知っておきましょう
これまで、本連載では主にビジネス的な側面からO2Oを取り上げてまいりました。マーケターの皆様に、すこしでもO2Oサービスに興味を持っていただけたのではないかと願っております。
さて、最終回となる今回は、O2Oに欠かせない技術的な側面を踏まえて今後のO2Oを展望したいと思います。
少しマニアックな話になってしまうかもしれませんが、そもそもインターネットサービスは、ある技術がコンシューマー向けに開発され、それに伴うキラーアプリケーションが登場することで発展してきました。技術をしっかりととらえることは、マーケターとして抜き出るためにはとても重要なことだと、私は考えています。
とはいえ、私は技術者ではないので、当社CTOの高橋にインタビューしたいと思います。高橋は、最近では「GPS/GNSSシンポジウム 2012」に登壇するなど、本分野の最新の研究成果も目にしてきたようです。
屋内では位置情報が正しく取得できない
柴田:O2Oと位置情報技術は切っても切れない関係ですよね。特に、それらを店内=屋内で使いたいという要望も多いとおもいます。しかしながら屋内では位置情報が正しく取得できないこともよく知られています。
高橋:まず、屋内での位置測位に触れる前に、準天頂衛星システムについて触れておかなければなりません。準天頂衛星システムは、Quasi-Zenith Satellite Systemの頭文字をとって「QZSS」と呼ばれています。既存のGPS衛星は、赤道上空に打ち上げられています。日本から見ると斜めにGPSから電波が送信されることになります。そうすると、建物などによって遮蔽されてしまうことがあり、屋外でも位置測位が難しくなってしまうのです。
そこで日本の上空に衛星を置き、限りなく真上からの電波を受け取れるこのシステムを既存のGPSの補助として使うことで、高層ビル群の中でもより正確な位置情報を取れるようになります。
柴田:確かに都心のビル街はGPSが使えないことが多いですね。これが解決しますか?
高橋:一般ユーザーでも2メートル精度での性能保証が得られる予定です。問題は、"準"天頂衛星であるため、軌道の都合上1つの衛星は1日のうち8時間程度しか日本上空に存在しないことです。つまり24時間利用できるようにするために最低でも3機の衛星が必要となります。現在のところ2010年に打ち上げられた、準天頂衛星の初号機である「みちびき」の1機のみが運用されている状態です。
柴田:なるほど、ここに図がありますが、かなり不思議な8の字軌道を飛んでいますね。しかし1日8時間だけでも精度が良くなるのはいいことではないですか?
高橋:現在普及しているスマートフォンでは準天頂衛星を利用することができません。最近、一部カーナビゲーションシステムなど(※)、対応している製品も出回ってきていますが、まだ実証試験段階の域を出ず、本格的な実用までにはまだしばらく時間がかかりそうです。(※一部のオービスのレーダー等)
「みちびき」は一時期、キモである原子時計に異常が発生し測位ができない状態になりました。冗長系への切り替えが行われて現在は復旧していますが、1機しかない上に早々に片肺状態になっているため、今後が若干心配です。
柴田:今後、3機の衛星の投入が予定されているようですが、早急に打ち上げられることを願いたいですね。