届けたいのは「仕様」ではなく「価値」なんです
MZ:西脇さんは、日本マイクロソフトのエバンジェリストとして活動しながら、プレゼンの専門家として『エバンジェリスト養成講座』といったセミナーや講演活動も行なっているわけですが、そもそもこの道に進むきっかけはなんだったのでしょうか。
西脇:じつは私、コテコテのエンジニアなんです。今でもエンジニアです。もともとソフトウェア、パソコン、ITが大好き。それを使いこなして面白いものつくるエンジニアとしてキャリアをスタートしました。でもあるとき、つくったものを紹介して「人が反応してくれる」気持ち良さに目覚めたんです。
MZ:エンジニアとしていいものを人に伝えたいという気持ちが始まりだったのですね。
西脇:私がオラクルに入ったとき、エバンジェリストという肩書はなく、最初はマーケティングディレクターとしてひとつの製品を担当していましたが、数年後には、複数の製品を組み合わせて提案することが大変多くなり、プレゼンテーション効果が高いことに気づきました。
次のステップとして、マイクロソフトに移ることになるのですが、マイクロソフトにはかなり前から「エバンジェリスト」という職業がある。現在、私はマイクロソフトの全製品に触れ、製品にこだわりなく価値を届けるという立場で活動しています。
MZ:西脇さんのようにあらゆる製品を網羅してプレゼンテーションする方はほかにもいるのでしょうか?
西脇:通常エバンジェリストには担当製品がありますが、私にはありません。日本では私だけですね。グローバルでも非常に数は少ないです。どういう仕事をしているかというと、製品じゃなくて魅力を売り込むんです。たとえば、アメリカのエグゼクティブの人にマイクロソフトの価値、マイクロソフトの近未来を売り込もうと思ったら、WindowsやOfficeの話をしてもダメなんです。マイクロソフト全体の魅力を話さないといけない。ときには、競合製品も加えて話をしなければならない。
MZ:エバンジェリストのなかでも、非常に特異な立場にいるということですね。
西脇:いま、お客様がどういうものを求めているかというと、こういうタブレットがあったときに、このタブレットという単一の製品がほしいわけじゃないんです。そこでどんなサービスが使えるのか、どんなアプリが使えるのかを含めた“価値”を知りたい。だから「これがいかにいいタブレットか」をプレゼンしても、仕様は届けられるけれども価値は届けられない。これは、プレゼンのキモでもあると同時にマーケティングのキモでもあるんです。